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「じゃあまたね」
といい少年は友達に手を振り帰路についた。
空を見上げると夕方と夜の色を混ぜたような鮮やかな紫色が広がっている。
こんなにも空がきれいな事を初めて知った。
如何に少年は周りを見ていないのかということにこのとき初めて気づいたのだ。
公園の横を通ったとき、ふと視線を公園内に向ける。
もう夜も近かったので人はほぼいなかった。
ただ、目に止まった人が一人居た。
この公園に住むホームレスだ。
ボロボロの服装に履き潰したサンダル。
髪はボサボサでさっきの空とは真逆だなと少年は思った。
なんて情けない生活を送っているのだろう。
両親が言っていたようにきっとだらしなくてくだらない人間なのだろう。
そんなことを思いながら家にたどり着いた。
「あれ?・・・ない!」
さっき友達からもらったお土産のストラップが無くなっていた事に気づいた少年は記憶を遡らせて落とした場所の心当たりを考え始めた。
確か貰ってすぐにカバンにくくりつけたのは間違いない。
つまり、帰り道のどこかで落としたのだろう。
少年はすぐに家を出て探しながらさっき歩いた道を歩き回る。
中々見つからず、気がついたときには公園の前に居た。
「なにか探し物かい?」
そう声をかけられて少年は公園の前まで戻っていた事に気がついた。
「そうなんです、大切な・・・」
少年は声の主を見るなり言葉を止めて、背を向けてまた探し始める。
背後からは人とは思えない異臭を感じ、早くどっかに行ってくれないかとイライラする。
声の主はさっき公園にいたホームレスだ。
少年は情けないクズな人であるホームレスとは口を聞きたくもなかった。
「大切な物を無くしたのかい?」
とホームレスは声をかけてくる。
あぁ、ちくしょう。ストラップはなくなるし、ホームレスには絡まれるしで最悪な日だと少年は思う。
そんなことを思われているとは知らず、ホームレスは少年に声をかける。
「おじさんも探すの手伝うよ」
少年はその言葉に動きを止める。
手伝ってくれるのはとてもありがたい。
けれど、自分にとって最も関わりたくない人の助けは借りたくなかった。
少年は葛藤した。
「君はおじさんのことが嫌いかい?確かにおじさんは汚らしい人間だから関わりたくないの気持ちはわかる、でも困っているんだろう?
力を貸すよ」
少年はホームレスの優しい言葉がとても心に刺さり痛かった。
ホームレスのことを少年は情けないクズだと思っていた。
けれど、目の前にいる人は少なくともクズではない事は間違いなかった。
少年の中にあった"情けないクズ"という概念にピキピキとヒビが入るのを少年は感じていた。
僕が間違っていたのだろうか?と少年は考える。
両親に散々ホームレスみたいな人間にはなるなと言われ、いつの間にか自分の中でホームレスは普通の人達よりも劣っていると思っていた。
ホームレスと関わったことがないのに決めつけていた誤ちに気づいた少年は、自分の目で見極めようと思った。
ちゃんとおじさんと向き合ってみようと。
「・・・手伝ってくれるの?」
するとおじさんはニコッと微笑んだ。
「あぁ、一緒に探そうか」
それから一時間あたりを探したがストラップは結局見つけることが出来なかった。
少年はもう諦めかけていた。
「おじさん、もう諦めるよ」
するとおじさんは言う。
「そうかい、わかった。ごめんよ力になれなくて」
「いえ、僕の方こそ助けてくれてありがとう。」
少年はもうおじさんのことを情けない人間だとは思っていなかった。
おじさんの優しさに触れて、ホームレスを情けない人間と一括に決めつけるのは間違っていると気づいた。
寧ろ勝手にホームレスを情けない人間と決めつけていた僕のほうが情けない人間なんだと思った。
「おじさん、さっきは無視してごめんなさい。おじさんのことを勘違いしていたよ」
するとおじさんは言った。
「気にしなくていい、君が成長できたなら良かったよ」
そう言っておじさんは公園の方へ帰っていった。
後日、公園の前を通りかかると入り口に探していたストラップが置かれていた。
公園におじさんはもういなかった。
といい少年は友達に手を振り帰路についた。
空を見上げると夕方と夜の色を混ぜたような鮮やかな紫色が広がっている。
こんなにも空がきれいな事を初めて知った。
如何に少年は周りを見ていないのかということにこのとき初めて気づいたのだ。
公園の横を通ったとき、ふと視線を公園内に向ける。
もう夜も近かったので人はほぼいなかった。
ただ、目に止まった人が一人居た。
この公園に住むホームレスだ。
ボロボロの服装に履き潰したサンダル。
髪はボサボサでさっきの空とは真逆だなと少年は思った。
なんて情けない生活を送っているのだろう。
両親が言っていたようにきっとだらしなくてくだらない人間なのだろう。
そんなことを思いながら家にたどり着いた。
「あれ?・・・ない!」
さっき友達からもらったお土産のストラップが無くなっていた事に気づいた少年は記憶を遡らせて落とした場所の心当たりを考え始めた。
確か貰ってすぐにカバンにくくりつけたのは間違いない。
つまり、帰り道のどこかで落としたのだろう。
少年はすぐに家を出て探しながらさっき歩いた道を歩き回る。
中々見つからず、気がついたときには公園の前に居た。
「なにか探し物かい?」
そう声をかけられて少年は公園の前まで戻っていた事に気がついた。
「そうなんです、大切な・・・」
少年は声の主を見るなり言葉を止めて、背を向けてまた探し始める。
背後からは人とは思えない異臭を感じ、早くどっかに行ってくれないかとイライラする。
声の主はさっき公園にいたホームレスだ。
少年は情けないクズな人であるホームレスとは口を聞きたくもなかった。
「大切な物を無くしたのかい?」
とホームレスは声をかけてくる。
あぁ、ちくしょう。ストラップはなくなるし、ホームレスには絡まれるしで最悪な日だと少年は思う。
そんなことを思われているとは知らず、ホームレスは少年に声をかける。
「おじさんも探すの手伝うよ」
少年はその言葉に動きを止める。
手伝ってくれるのはとてもありがたい。
けれど、自分にとって最も関わりたくない人の助けは借りたくなかった。
少年は葛藤した。
「君はおじさんのことが嫌いかい?確かにおじさんは汚らしい人間だから関わりたくないの気持ちはわかる、でも困っているんだろう?
力を貸すよ」
少年はホームレスの優しい言葉がとても心に刺さり痛かった。
ホームレスのことを少年は情けないクズだと思っていた。
けれど、目の前にいる人は少なくともクズではない事は間違いなかった。
少年の中にあった"情けないクズ"という概念にピキピキとヒビが入るのを少年は感じていた。
僕が間違っていたのだろうか?と少年は考える。
両親に散々ホームレスみたいな人間にはなるなと言われ、いつの間にか自分の中でホームレスは普通の人達よりも劣っていると思っていた。
ホームレスと関わったことがないのに決めつけていた誤ちに気づいた少年は、自分の目で見極めようと思った。
ちゃんとおじさんと向き合ってみようと。
「・・・手伝ってくれるの?」
するとおじさんはニコッと微笑んだ。
「あぁ、一緒に探そうか」
それから一時間あたりを探したがストラップは結局見つけることが出来なかった。
少年はもう諦めかけていた。
「おじさん、もう諦めるよ」
するとおじさんは言う。
「そうかい、わかった。ごめんよ力になれなくて」
「いえ、僕の方こそ助けてくれてありがとう。」
少年はもうおじさんのことを情けない人間だとは思っていなかった。
おじさんの優しさに触れて、ホームレスを情けない人間と一括に決めつけるのは間違っていると気づいた。
寧ろ勝手にホームレスを情けない人間と決めつけていた僕のほうが情けない人間なんだと思った。
「おじさん、さっきは無視してごめんなさい。おじさんのことを勘違いしていたよ」
するとおじさんは言った。
「気にしなくていい、君が成長できたなら良かったよ」
そう言っておじさんは公園の方へ帰っていった。
後日、公園の前を通りかかると入り口に探していたストラップが置かれていた。
公園におじさんはもういなかった。
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