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いじわるな彼
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もう6月。天気の良い日には、半そでじゃないと暑くなってきている。
「おい、お前。手が止まってるぞ、はやくあおいでくれ」
うちわを持ち、レティセラは、レンヴラントに風を送っていた。
「すみません」
にっこりと笑いレティセラが、また、手を動かした。
ここでの仕事は悪くはなかった。けれど、レンヴラントは、わたしについて少し興味を持ったのか、家のことについて聞いてくる様になった。
「おまえ、家おいだされたのか?」
「気にしてくださるなんて、お優しいですね」
嫌味だ。
こんないじわるな質問にも、掴みかかってはいけない。にっこりと笑顔をつくり、レティセラは口に手をあてて、笑い声を零した。
「気持ち悪いやつだな」
「それなら、他のメイドと、変わりましょう!」
チャンスだと思いアネモネを呼びに行こうとするとレンヴラントがあざ笑った。
「職務怠慢でクビだな」
(コイツ……)
そう言った彼は、満足げに、テラスの長椅子に、足を伸ばした。
「ん? それなんだ?」
レンヴラントが言っているのはわたしの首にかかるネックレスらしい。
「これ、ですか?」
ネックレスを見せると、レンヴラントが手を出して来た。
見せろ、と言うことらしい。
「あの、これ大事なものなので」
「いいから見せろ」
にっこり、と笑って断ろうとしたら、お見通しなのか、嫌とは言わせてもらえず、仕方なく首からネックレスを外し、彼の掌にのせると、彼の取った行動に、レティセラは思わず大声をあげた。
「やめてください!」
「お? 大丈夫か? 仮面がはがれてるぞ」
くさりを指にかけて、ネックレスをくるくるとまわし、レンヴラントが嬉しそうに笑っていた。
(やめて……返して)
そう、叫びたいのに、体はいうことを聞かなかった。
笑顔が、張りつく。
「ほぉ、大したもんだな」
「……返していただけますか?」
その時だった。
「あっ」
くさりが指から外れ、テラスの外に向かって飛んでいった。
「はは、よく飛んでったな」
悲鳴をあげそうなる口を、慌てて押さえ、レティセラは、途切れ、途切れに、言った。
「探して……きても……よろしいですか?」
レティセラはやっぱりにっこり笑っていた。
「あ、あぁ……」
でも、素直に、そう、言ってしまうほど、その顔は真っ青だった。
(少しやりすぎたか?)
まぁいいか。
レンヴラントは、そこまで気にすることもなかった。
夕方にそんな事があり、夕食後には、雨が降り出していた。
ザーザー、とつよく降る雨の音をききながら、レンヴラントは、部屋で持ち帰った仕事をしていた。
少したった頃、お茶が飲みたくなって、アルバートを呼ぶと、いつも来るはずの彼は来なかった。
(珍しいな)
仕方なしにろうかに出て、使用人をさがしていると、1階にあわただしい空気が漂っていた。
レンヴラントはその中の1人を呼びとめる。
「何かあったのか?」
「レンヴラント様! いえ、お話しするような事では……」
彼女はおろおろと涙ぐんでいた。
「お前は、確か、アネモネと言ったな」
「レンヴラント様、すみません席を外していて」
理由を聞こうとしていると、アルバートが濡れネズミ姿で声をかけてきた。
「何かあったのか?」
「……アネモネは、もう行きなさい」
「はい……」
沈んだ足音をたててアネモネが行ってしまうと、アルバートがレンヴラントに向きなおった。
「レティセラが、帰ってきません」
「どこかに使わせたのか?」
「いえ、夕方、探し物があると仲の良いメイドに伝えてそれから見てないようです」
「…………」
嘘だろ……
今はもう、日が変わろうとしている。あれから、8時間はたっていた。
「レンヴラント様!」
レンヴラントは走って、テラスの下に広がる木が茂る場所まで来ると、魔法を使って辺りを照らした。
「おい! いるのか?!」
「レンヴラント様! あそこです」
アルバートが指をさした方向。
いた……
夕方と同じ服装のまま。
まるで、目が見えなくなった、かのように、地面を這いつくばり何かを探しているレティセラの姿が、何時間も雨にうたれ、雨に溶けそうだと思った。
「おい、お前!!」
声をかけても彼女は顔をあげなかった。
「……見つからないんです」
「帰りましょう。アネモネ達が心配しています」
アルバートの言葉にレティセラは首をふった。
「代わりの物を買ってやるから」
でも、彼女はやっぱり首を横にふるだけだった。
2人が顔を見合わせうなずくとレンヴラントは眠らせる魔法を使う。
崩れていくレティセラの体を、アルバートが支えると、そのまま抱えて屋敷に戻る事にした。
次の日、レンヴラントはレティセラが熱を出した事を聞き、なんとなく、気持ちがのらないまま仕事をしていた。
だいぶ熱は高いらしく、しばらくは休ませる、との事だった。
一息吐こうとテラスに出る。手すりに頬杖をついて、外を眺めていると、信じられないものを見て、レンヴラントはテラスから飛び降りた。
「おい、お前。手が止まってるぞ、はやくあおいでくれ」
うちわを持ち、レティセラは、レンヴラントに風を送っていた。
「すみません」
にっこりと笑いレティセラが、また、手を動かした。
ここでの仕事は悪くはなかった。けれど、レンヴラントは、わたしについて少し興味を持ったのか、家のことについて聞いてくる様になった。
「おまえ、家おいだされたのか?」
「気にしてくださるなんて、お優しいですね」
嫌味だ。
こんないじわるな質問にも、掴みかかってはいけない。にっこりと笑顔をつくり、レティセラは口に手をあてて、笑い声を零した。
「気持ち悪いやつだな」
「それなら、他のメイドと、変わりましょう!」
チャンスだと思いアネモネを呼びに行こうとするとレンヴラントがあざ笑った。
「職務怠慢でクビだな」
(コイツ……)
そう言った彼は、満足げに、テラスの長椅子に、足を伸ばした。
「ん? それなんだ?」
レンヴラントが言っているのはわたしの首にかかるネックレスらしい。
「これ、ですか?」
ネックレスを見せると、レンヴラントが手を出して来た。
見せろ、と言うことらしい。
「あの、これ大事なものなので」
「いいから見せろ」
にっこり、と笑って断ろうとしたら、お見通しなのか、嫌とは言わせてもらえず、仕方なく首からネックレスを外し、彼の掌にのせると、彼の取った行動に、レティセラは思わず大声をあげた。
「やめてください!」
「お? 大丈夫か? 仮面がはがれてるぞ」
くさりを指にかけて、ネックレスをくるくるとまわし、レンヴラントが嬉しそうに笑っていた。
(やめて……返して)
そう、叫びたいのに、体はいうことを聞かなかった。
笑顔が、張りつく。
「ほぉ、大したもんだな」
「……返していただけますか?」
その時だった。
「あっ」
くさりが指から外れ、テラスの外に向かって飛んでいった。
「はは、よく飛んでったな」
悲鳴をあげそうなる口を、慌てて押さえ、レティセラは、途切れ、途切れに、言った。
「探して……きても……よろしいですか?」
レティセラはやっぱりにっこり笑っていた。
「あ、あぁ……」
でも、素直に、そう、言ってしまうほど、その顔は真っ青だった。
(少しやりすぎたか?)
まぁいいか。
レンヴラントは、そこまで気にすることもなかった。
夕方にそんな事があり、夕食後には、雨が降り出していた。
ザーザー、とつよく降る雨の音をききながら、レンヴラントは、部屋で持ち帰った仕事をしていた。
少したった頃、お茶が飲みたくなって、アルバートを呼ぶと、いつも来るはずの彼は来なかった。
(珍しいな)
仕方なしにろうかに出て、使用人をさがしていると、1階にあわただしい空気が漂っていた。
レンヴラントはその中の1人を呼びとめる。
「何かあったのか?」
「レンヴラント様! いえ、お話しするような事では……」
彼女はおろおろと涙ぐんでいた。
「お前は、確か、アネモネと言ったな」
「レンヴラント様、すみません席を外していて」
理由を聞こうとしていると、アルバートが濡れネズミ姿で声をかけてきた。
「何かあったのか?」
「……アネモネは、もう行きなさい」
「はい……」
沈んだ足音をたててアネモネが行ってしまうと、アルバートがレンヴラントに向きなおった。
「レティセラが、帰ってきません」
「どこかに使わせたのか?」
「いえ、夕方、探し物があると仲の良いメイドに伝えてそれから見てないようです」
「…………」
嘘だろ……
今はもう、日が変わろうとしている。あれから、8時間はたっていた。
「レンヴラント様!」
レンヴラントは走って、テラスの下に広がる木が茂る場所まで来ると、魔法を使って辺りを照らした。
「おい! いるのか?!」
「レンヴラント様! あそこです」
アルバートが指をさした方向。
いた……
夕方と同じ服装のまま。
まるで、目が見えなくなった、かのように、地面を這いつくばり何かを探しているレティセラの姿が、何時間も雨にうたれ、雨に溶けそうだと思った。
「おい、お前!!」
声をかけても彼女は顔をあげなかった。
「……見つからないんです」
「帰りましょう。アネモネ達が心配しています」
アルバートの言葉にレティセラは首をふった。
「代わりの物を買ってやるから」
でも、彼女はやっぱり首を横にふるだけだった。
2人が顔を見合わせうなずくとレンヴラントは眠らせる魔法を使う。
崩れていくレティセラの体を、アルバートが支えると、そのまま抱えて屋敷に戻る事にした。
次の日、レンヴラントはレティセラが熱を出した事を聞き、なんとなく、気持ちがのらないまま仕事をしていた。
だいぶ熱は高いらしく、しばらくは休ませる、との事だった。
一息吐こうとテラスに出る。手すりに頬杖をついて、外を眺めていると、信じられないものを見て、レンヴラントはテラスから飛び降りた。
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