まわる相思に幸いあれ~悪人面の神官貴族と異邦者の彼女~

三加屋 炉寸

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本編

13:償いの開始①

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翌朝ぬいが部屋の扉を開けると、向かい側から同じように出てくるノルと鉢合わせた。

二人とも微妙な顔をする。もっともよく表情に出ているのは彼であり、元々表情に乏しいぬいは口元だけが尖っていた。

「なんでここにいるの?普通こんな近くに部屋を一緒にしないでしょ」

ぬいの部屋は、他の神官たちと離れている。近くに部屋はいくつかあるが、多くはない。どこにも、住んでいる人はいなかった。

「僕だって不本意だ。急なことで、ここしか空いてないと言われ、致し方なくだ。なんで、あいつが使っていた部屋を使わなければならない……」

あいつとはぬいと同郷の彼のことだろう。

「もしかして、その服も勇者さんのとかだったりする?」

「そんなわけあるか!気持ち悪い、これは自前のだ」

ノルは神官服を軽くはたくと胸を張る。

「でも部屋の家具とかシーツとか枕とか、洗ってあるとは思うけど。もろもろはそうだよね?」

追加で言うと、ノルは本当に気持ち悪くなったのか胸をおさえる。

「これが……いわれのない罰か」

「いわれはあると思うんだけど。まあ、いいや。わたしは用事あるから。修業がんばって」

ぬいが適当な言葉をかけ、その場を立ち去ろうとすると腕を捕まれた。

「待て!」

「そんなことしなくても、別にわたしは逃げる必要ないからね」

諭すように言うと、その大人な対応が不満だったのか顔をしかめる。

「逃げるのは……というか逃げたのはそっちの方だから」

恨みがましい目で見つめると、ノルはすんなり手を離した。さりげなく手を払っているのが見えるが、ぬいは見なかったことにした。無駄に腹を立ててもお腹がすくだけだからだ。

「今日から浄化をはじめる。僕の務めが終わるまで、ここで待機しろ」

「んー、話聞いてた?用があるって言ったんだけど」

「用とはなんだ」

「この後お店に行って、朝ごはんの手伝いをして食べるでしょ。で、水晶に力を供給して、お腹が減るから昼食を食べる。もちろんそのあと、近くでおやつを買う。で、店番をしたあと……」

長々とごはんについて語っていると、ノルはこの先待っている粗食のせいか、腹が立ってきたらしい。それでもかまわずぬいは話し続ける。

「もういい、その話はやめろ。要は水晶に力さえ満たせればいいんだろう」

「うん、そうだよ」

「だったら、僕がやる。その様子だと店番は一日くらいいなくても、問題はなさそうだ」

鐘の音が鳴る。朝の礼拝の時間の合図である。ぬいも一度興味本位で参加してみたことがあるが、食事抜きで作業をするのが耐えられず、すぐに出なくなった。

「堕神はここから動くな、わかったか?」

ノルは指を突きつけると、返事も聞かずに走り去った。走ったら怒られるのではないかと、ぬいは首を傾げたがここには人がほとんどいない。ため息を吐くと、大人しく部屋へと戻った。



ドアが叩かれる音が聞こる。ぬいの部屋の音を叩く人物はミレナくらいしかいない、この叩き方は明らかに彼女ではない。

ゆえにわざとゆっくり立ち上がると、扉まで向かう。

てっきり勝手に開けるくらいの暴挙にでると予想していたが、意外に節度を保っている。

「遅い!」

開けた瞬間、怒鳴られる。そのことを予測していたため、ぬいは扉を開けるとともに後ろに身を隠していた。

「待たせたの、泥棒くんの方だからね。わたしはおとなしーく、ここできちんと待っていたんだけど」

声が聞こえた方向から察したのか、ノルは入室する。ぬいはあきらめて、姿を現した。

「その呼び方はそろそろやめろ。周りにおかしな目で見られるだろう」

「事実は事実でしょ?それにそっちだって人のことを言えないよ?」

「堕神は堕神だ」

「もう堕神ではない。異邦者だって言ってたよね?」

ぬいはヴァーツラフのような無表情さで詰め寄る。実際はむくれているが、その表情は口元にしか出ていない。

その様子に恐れをなしたのか、ノルは一歩後ずさる。

「……やはり君は堕神だ。異邦者など、そんな生易しい言葉で片付けられる者ではない」

「そう、なら勝手にしていいよ。さすがに街中ではかわいそうだから、やめてあげる」

そう言うと、ぬいは店へ向かうため外へと歩き出す。後ろから物言わずついてくるノルの気配を感じながら。
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