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本編
38:照れ隠し
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「お~ノルはもっと久しぶりだ。こないだのお披露目の時は、一度も会えなかったし」
どんな態度を取られようとも、トゥーは全く動じていない。だが、それが気に障ったらしくノルは顔をしかめると、舌打ちした。
「いいから、離れろ。一人ならともかく異邦者二人が集まれば、さすがに周りが異様さに気づいて騒ぎになる。これ以上、無意味に人を集めるな」
まるで何かの見世物のように、人々が群れを成している。トゥーの取り巻きがどこまでなのかわからないほどである。
「へ~知らなかった」
「うわっ、本当だ。そんなのあるんだね」
同時に二人が返事をすると、ノルは苦虫を嚙み潰したような顔をする。その視線は未だ掴まれている手に向けられていた。
「いつまで掴んでいるんだ」
そう言うとノルは、奪うようにぬいの手を取った。そのまま離さずトゥーに視線を向けると、鼻で笑った。
「君が会わなかったのも当然だ。ずっと僕と居たからな」
どこか挑発するように言うが、トゥーは不思議そうにするばかりであった。
「二人ともいつの間にか仲良くなったんだね。良かったよ、それならノルも一緒に行こう。みんな~今日はここまで。またね!」
トゥーはノルとぬいに手を当てる。それを振り払う余裕もなく転移を唱えられ、その場から三人の姿は消え去った。
◇
到着した場所は広い空間に複数の座席が存在していた。端の方には不自然に一人の席があり、一目でトゥーの場所ということが分かった。顔が見られないようにするためか、薄いカーテンのようなものがかけられている。
「さ、食べようか。俺ちょっと注文してくる」
彼の席のすぐ近くにある扉を開けると、出て行った。
ぬいはトゥーの背が見えるソファーに腰を下ろすと、なぜかその隣にノルも座った。まるで以前の続きのようである。
「ノルくん、他にも席はたくさんあるよ?」
彼の足が長いせいか、座席のせいか。ある程度の距離が存在するとはいえ、妙な圧迫感があった。ノルが退かなければ出れない状況にあるのも、要因の一つだろう。
「知っている。万が一、あいつが素顔を見せた時、それを見せないよう、止めるためだ」
トゥーが去ったあとも、不機嫌はなおっていないらしい。声色からそれが伺えた。
「ああ、そういう事か。前もミレナちゃんがやってくれたやつだね。それならわたしは向こう側に座った方がいいかな」
立ち上がる仕草を見せ、退くように促すがノルは全く動かない。
「問題ない」
「いや、あるよね?わたしがきちんと考えなかったのが悪かったけど。トゥーくんに背を向けた方がいいと思うんだ」
「僕がどうにかする」
「どうにかって?全く想像がつかないんだけど」
「それは……」
ノルは横を向くとぬいの頬に手を添えた。まるで壊れ物に触るかのような、慎重な手つきである。そのくすぐったさに目を細めると、ノルはすぐに手を離し、顔をそむけた。
「許可なく触ってしまって、すまない。僕が間違っていた」
そう言うとノルは立ちあがった。
「ん?別に嫌じゃないし、いちいち気にしなくても……」
「本当か?本当に、よく考えて言ったことか?」
軽く言うと余程気になっていたのか、ノルは食い気味に聞いてくる。
「うん、嘘じゃないよ」
ぬいが返事をすると、その言葉をかみしめるようにノルは返事をし、横にずれた。
「今ここにはわたしたちしかいないんだから、無理しないで」
ぬいは座席を移動しながら言った。するとノルはムッとした表情で机に手をついた。
「してない」
睨みながら言うが、その姿は悪人というよりは反抗している子供のようである。ぬいは小さく笑うと、その手を軽く叩く。
「落ち着いてって。ノルくんの気持ちは前にちゃんと聞いたし、充分伝わってるから」
言い聞かせるようにぬいは言う。ノルはその離れていく手を逆に掴むと、そのまま正面に座った。
「いや、伝わっていないな。そもそも、なぜ大して知りもしない男の誘いにのった」
「知ってるって。ミレナちゃんから散々話も聞いてたし」
「だが、直接かかわったのは少ないはずだ。少なくとも僕よりは話をしていない。違うか?」
「うっ……そうだけど」
ぬいが言いよどむと、ノルは満足そうに頷いた。
「で、なぜ軽率についていこうとした?」
「その、食べ放題だって言われて」
「はあ……君は食事があればだれでもついていくのか」
「わたしの給金で満足するまで食べたら、一向に旅資金が増えなくて、困っていたところに誘われたから」
ノルは責めるような視線見てくる。彼とは特に何でもない関係だというのに、ぬいは妙な後ろめたさを覚えた。
「それなら今後は僕が誘おう。君とは知己であるし、愚行を犯すことはないと誓っている」
「でも。わざわざ無理をしなくても。トゥーくんと、ちゃんと話せば」
「だめだ」
それだけは許さないと言うように、大きな声で遮った。
「えっと、なんで?」
そもそもぬいが食事を我慢すればいい話である。味さえ気にしなければ、宿舎の食事で足りている。
「あんな大勢の邪魔者がついてくるやつなど、必要ない。それに万が一あいつの素顔を見てしまうことになったら、教皇さまのご指示に背いてしまう。話でもして、うっかり本名を思い出してしまう危険性もあるし……違う、だめだ。なんで僕はこう、いつもひねくれた態度を取ってしまうんだ。つ、つまり……ようは、僕がただ君と、二人で出かけたいだけだ。悪いか?」
照れかくしか、まくしたてるようにノルは言った。二人と強調したことから、どういう意図があるのかは明確である。目を逸らさず、顔は真っ赤になっている。
「えっ……と、その。悪くないよ」
ぬいがそう言うと、ノルは立ちあがり背を向けた位置にある座席に座った。その顔は見えずとも、まだ照れているのだろう。
しばらくするとトゥーが戻ってきた。ばらばらに座っている二人を無理やり引き寄せ、結局トゥーの近くで話しながら食事を摂った。
どんな態度を取られようとも、トゥーは全く動じていない。だが、それが気に障ったらしくノルは顔をしかめると、舌打ちした。
「いいから、離れろ。一人ならともかく異邦者二人が集まれば、さすがに周りが異様さに気づいて騒ぎになる。これ以上、無意味に人を集めるな」
まるで何かの見世物のように、人々が群れを成している。トゥーの取り巻きがどこまでなのかわからないほどである。
「へ~知らなかった」
「うわっ、本当だ。そんなのあるんだね」
同時に二人が返事をすると、ノルは苦虫を嚙み潰したような顔をする。その視線は未だ掴まれている手に向けられていた。
「いつまで掴んでいるんだ」
そう言うとノルは、奪うようにぬいの手を取った。そのまま離さずトゥーに視線を向けると、鼻で笑った。
「君が会わなかったのも当然だ。ずっと僕と居たからな」
どこか挑発するように言うが、トゥーは不思議そうにするばかりであった。
「二人ともいつの間にか仲良くなったんだね。良かったよ、それならノルも一緒に行こう。みんな~今日はここまで。またね!」
トゥーはノルとぬいに手を当てる。それを振り払う余裕もなく転移を唱えられ、その場から三人の姿は消え去った。
◇
到着した場所は広い空間に複数の座席が存在していた。端の方には不自然に一人の席があり、一目でトゥーの場所ということが分かった。顔が見られないようにするためか、薄いカーテンのようなものがかけられている。
「さ、食べようか。俺ちょっと注文してくる」
彼の席のすぐ近くにある扉を開けると、出て行った。
ぬいはトゥーの背が見えるソファーに腰を下ろすと、なぜかその隣にノルも座った。まるで以前の続きのようである。
「ノルくん、他にも席はたくさんあるよ?」
彼の足が長いせいか、座席のせいか。ある程度の距離が存在するとはいえ、妙な圧迫感があった。ノルが退かなければ出れない状況にあるのも、要因の一つだろう。
「知っている。万が一、あいつが素顔を見せた時、それを見せないよう、止めるためだ」
トゥーが去ったあとも、不機嫌はなおっていないらしい。声色からそれが伺えた。
「ああ、そういう事か。前もミレナちゃんがやってくれたやつだね。それならわたしは向こう側に座った方がいいかな」
立ち上がる仕草を見せ、退くように促すがノルは全く動かない。
「問題ない」
「いや、あるよね?わたしがきちんと考えなかったのが悪かったけど。トゥーくんに背を向けた方がいいと思うんだ」
「僕がどうにかする」
「どうにかって?全く想像がつかないんだけど」
「それは……」
ノルは横を向くとぬいの頬に手を添えた。まるで壊れ物に触るかのような、慎重な手つきである。そのくすぐったさに目を細めると、ノルはすぐに手を離し、顔をそむけた。
「許可なく触ってしまって、すまない。僕が間違っていた」
そう言うとノルは立ちあがった。
「ん?別に嫌じゃないし、いちいち気にしなくても……」
「本当か?本当に、よく考えて言ったことか?」
軽く言うと余程気になっていたのか、ノルは食い気味に聞いてくる。
「うん、嘘じゃないよ」
ぬいが返事をすると、その言葉をかみしめるようにノルは返事をし、横にずれた。
「今ここにはわたしたちしかいないんだから、無理しないで」
ぬいは座席を移動しながら言った。するとノルはムッとした表情で机に手をついた。
「してない」
睨みながら言うが、その姿は悪人というよりは反抗している子供のようである。ぬいは小さく笑うと、その手を軽く叩く。
「落ち着いてって。ノルくんの気持ちは前にちゃんと聞いたし、充分伝わってるから」
言い聞かせるようにぬいは言う。ノルはその離れていく手を逆に掴むと、そのまま正面に座った。
「いや、伝わっていないな。そもそも、なぜ大して知りもしない男の誘いにのった」
「知ってるって。ミレナちゃんから散々話も聞いてたし」
「だが、直接かかわったのは少ないはずだ。少なくとも僕よりは話をしていない。違うか?」
「うっ……そうだけど」
ぬいが言いよどむと、ノルは満足そうに頷いた。
「で、なぜ軽率についていこうとした?」
「その、食べ放題だって言われて」
「はあ……君は食事があればだれでもついていくのか」
「わたしの給金で満足するまで食べたら、一向に旅資金が増えなくて、困っていたところに誘われたから」
ノルは責めるような視線見てくる。彼とは特に何でもない関係だというのに、ぬいは妙な後ろめたさを覚えた。
「それなら今後は僕が誘おう。君とは知己であるし、愚行を犯すことはないと誓っている」
「でも。わざわざ無理をしなくても。トゥーくんと、ちゃんと話せば」
「だめだ」
それだけは許さないと言うように、大きな声で遮った。
「えっと、なんで?」
そもそもぬいが食事を我慢すればいい話である。味さえ気にしなければ、宿舎の食事で足りている。
「あんな大勢の邪魔者がついてくるやつなど、必要ない。それに万が一あいつの素顔を見てしまうことになったら、教皇さまのご指示に背いてしまう。話でもして、うっかり本名を思い出してしまう危険性もあるし……違う、だめだ。なんで僕はこう、いつもひねくれた態度を取ってしまうんだ。つ、つまり……ようは、僕がただ君と、二人で出かけたいだけだ。悪いか?」
照れかくしか、まくしたてるようにノルは言った。二人と強調したことから、どういう意図があるのかは明確である。目を逸らさず、顔は真っ赤になっている。
「えっ……と、その。悪くないよ」
ぬいがそう言うと、ノルは立ちあがり背を向けた位置にある座席に座った。その顔は見えずとも、まだ照れているのだろう。
しばらくするとトゥーが戻ってきた。ばらばらに座っている二人を無理やり引き寄せ、結局トゥーの近くで話しながら食事を摂った。
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