110 / 139
本編
109:宣誓式
しおりを挟む
「ヌイさま!お待ちしておりました」
いよいよ目的の場所へとたどり着くと、そこにはミレナが立っていた。
「今日ってミレナちゃんが執り行なってくれるの?」
「いいえ、わたくしはまだ半人前ですので」
残念そうに言うと、後ろから見知った顔が姿を覗かせた。
「甥と異邦者、揃ったか」
枢機卿が二人のことを見る。その目に喜びは見えないが、嫌悪も存在しない。
「その……神官貴族ともなれば、ある程度役職がある方ではいけないと」
申し訳なさそうにミレナが言う。
「ううん、ミレナちゃん。そんな顔する必要ないよ。枢機卿はわたしを対等な人として、認めてくれた。そうでしょう?」
ぬいが問いかけると、枢機卿は頷き扉の向こうへと去って行く。ミレナはホッと胸をなでおろしていた。
「それでは、中でお待ちしております」
◇
宣誓場は礼拝堂とは似て非なるものであった。礼拝堂のように、大勢の人たちが座る場所はない。その名の通り、ただ誓う場なのだろう。入ってすぐ正面に枢機卿、その横にミレナが立っていた。
目の前までたどり着くと、ぬいとノルはその場に跪く。互いに片手に持った錫杖を揺らし、口を開く。
「神々に宣誓の許しを」
「神々の代理として、許可を出そう」
枢機卿がそう言うと、ノルは空いた手を胸に当てる。
「この小さき者は、異邦者ヌイを生涯の伴侶として迎い入れることを望む」
次にぬいが同じポーズを取ると、一呼吸する。
「この小さき者は、ノルベルト・イザーク・スヴァトプルクを生涯の伴侶として、受け入れられることを望む」
無事に言い終え、ぬいは人心地つく。ノルの名前は長い、うっかり噛んでしまえば台無しになると、緊張していたからである。二人が口にし終えると、錫杖に飾られた水晶が柔らかな光を放つ。その光は眩しいものではなく、ただ暖かい。
「互いを慈しみ、報いると。神々の面前にて誓えるか」
枢機卿は教典らしきもののページをめくる。その背表紙には水晶がちりばめられているのか、淡く反射している。
「教義に則り、反故にすることはないと誓います」
「与えられるものに驕り、傲慢さを持たぬと誓います」
「神官貴族としての誇りと責任を持ち、今後も邁進するといい。この時をもって、両者は認められた」
「神々に感謝を」
二人がそう言い終わると、ぬいの持っている錫杖が一段と輝きを増す。なぜ自分のだけが、これほど眩しいのだろうと疑問に思う。
だが、ぬいは通常がどんなものであるかは知らない。気にならない振りをしながらノルを見ると、目を丸くしていた。
やはり何かが変なのだろうと、焦りを感じた時。光が弾け、部屋中に霧散する。日の光とステンドグラスの反射から、きらめくその光景は。ただ幻想的であった。
「これは……神々の気まぐれか」
その場にいた全員が枢機卿を見る。どうやらミレナも知らないようである。
「その名の通り、時折このような現象が起こる。人を選ばず、皇族貴族商人または孤児などにも。害も祝福もなにもなく、ただ輝かせる」
「わたくしの親族では見たことはありません」
「百年あったり、なかったり。皇族なれど、神々にとっては等しく人である」
「ええ、そうですね」
枢機卿とミレナが話しているのを聞いていると、ぬいはふと視線を感じた。その主はもちろん一人しかないない。
ノルはただまっすぐ、ぬいのことを見つめていた。
いよいよ目的の場所へとたどり着くと、そこにはミレナが立っていた。
「今日ってミレナちゃんが執り行なってくれるの?」
「いいえ、わたくしはまだ半人前ですので」
残念そうに言うと、後ろから見知った顔が姿を覗かせた。
「甥と異邦者、揃ったか」
枢機卿が二人のことを見る。その目に喜びは見えないが、嫌悪も存在しない。
「その……神官貴族ともなれば、ある程度役職がある方ではいけないと」
申し訳なさそうにミレナが言う。
「ううん、ミレナちゃん。そんな顔する必要ないよ。枢機卿はわたしを対等な人として、認めてくれた。そうでしょう?」
ぬいが問いかけると、枢機卿は頷き扉の向こうへと去って行く。ミレナはホッと胸をなでおろしていた。
「それでは、中でお待ちしております」
◇
宣誓場は礼拝堂とは似て非なるものであった。礼拝堂のように、大勢の人たちが座る場所はない。その名の通り、ただ誓う場なのだろう。入ってすぐ正面に枢機卿、その横にミレナが立っていた。
目の前までたどり着くと、ぬいとノルはその場に跪く。互いに片手に持った錫杖を揺らし、口を開く。
「神々に宣誓の許しを」
「神々の代理として、許可を出そう」
枢機卿がそう言うと、ノルは空いた手を胸に当てる。
「この小さき者は、異邦者ヌイを生涯の伴侶として迎い入れることを望む」
次にぬいが同じポーズを取ると、一呼吸する。
「この小さき者は、ノルベルト・イザーク・スヴァトプルクを生涯の伴侶として、受け入れられることを望む」
無事に言い終え、ぬいは人心地つく。ノルの名前は長い、うっかり噛んでしまえば台無しになると、緊張していたからである。二人が口にし終えると、錫杖に飾られた水晶が柔らかな光を放つ。その光は眩しいものではなく、ただ暖かい。
「互いを慈しみ、報いると。神々の面前にて誓えるか」
枢機卿は教典らしきもののページをめくる。その背表紙には水晶がちりばめられているのか、淡く反射している。
「教義に則り、反故にすることはないと誓います」
「与えられるものに驕り、傲慢さを持たぬと誓います」
「神官貴族としての誇りと責任を持ち、今後も邁進するといい。この時をもって、両者は認められた」
「神々に感謝を」
二人がそう言い終わると、ぬいの持っている錫杖が一段と輝きを増す。なぜ自分のだけが、これほど眩しいのだろうと疑問に思う。
だが、ぬいは通常がどんなものであるかは知らない。気にならない振りをしながらノルを見ると、目を丸くしていた。
やはり何かが変なのだろうと、焦りを感じた時。光が弾け、部屋中に霧散する。日の光とステンドグラスの反射から、きらめくその光景は。ただ幻想的であった。
「これは……神々の気まぐれか」
その場にいた全員が枢機卿を見る。どうやらミレナも知らないようである。
「その名の通り、時折このような現象が起こる。人を選ばず、皇族貴族商人または孤児などにも。害も祝福もなにもなく、ただ輝かせる」
「わたくしの親族では見たことはありません」
「百年あったり、なかったり。皇族なれど、神々にとっては等しく人である」
「ええ、そうですね」
枢機卿とミレナが話しているのを聞いていると、ぬいはふと視線を感じた。その主はもちろん一人しかないない。
ノルはただまっすぐ、ぬいのことを見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる