幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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屑鉄屋

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私は敵が動きを見せないので、ここのところゆっくりとセバルを観光している状況だ。いろんなところを巡って、美味しい食材を買い漁るのがほぼ日課となっている。
そんな私たちの一方でグレンやトマソンも日中は忙しくしている。リアンたちはセバルに帰って来ていないようだし、毎日遊んでいるようで少し申し訳ない。おそらく私にしか担当できない贋金捜索はセバルの存亡に関わる重大な任務とは言え、果たしてこれでいいのか?

「リーファさま、贋金を使った者たちをマークしました。市内各所で贋金がバラまかれております。」

「おぉ、10日目にしてようやく動き出したってことだね。よし、そのままアジトまで連れてってもらおうじゃないか。犯人と例のブツを一気に押さえるよ。」

急に大きな声で独り言のような事を言いだした私を見て、隣で一緒に歩いていたロミアが目を丸くしている。そうだよな、何度も同じこと繰り返してるけれどロミアからするとビックリするよね。

「リーファ?」

「あぁ、ごめんロミア。バトラーと話してたんだ。私は今から仕事だから、ロミアたちは買い物を続けててよ。」

「私もついてってやるよ。」

「シンディーはロミアのお供だ。」

「どうせアタシがいなくたってトラブルになったらお前の能力であっと言う間に片付けちまうんだろ?ロミア一人でも大丈夫さ。」

「そうなるとシンディーのお守りが。」

「まさかのアタシかよ!リーファってば有能なシンディーちゃんをつかまえてそりゃ無いぜ。海賊退治で活躍して以来ずっと遊んでばかりで刺激がほしいんだよー。」

そんな全力で可愛さアピールされてもなぁ。でも人手はあった方が良いと言える。

そんなリーファたちの周りでは、帽子を目深にかぶりつつリーファたちを遠巻きにして様子をうかがっている男たちが街に行きかっていた。男たちはすれ違いざまに一言ずつ言葉を交わし、通りの情景に溶け込んで彼女の監視を続けていた。

「リーファ=クルーンが動き出したぞ。不用意に近づくな、隠れて遠目で監視するんだ。」

「隣にいるキツネ耳は仲間のようだな。あいつも追っておこう。お前は仲間に知らせて来い。」

「わかった。」

どうにも街外れの方向に向かっているリーファたちに対して、さすがに通行人にまぎれることも厳しくなって来た。尾行の方式を変えるよう迫られた男たちは建物などに身を隠しながらなおも監視を続けていた。

「どうやら港にある貸し倉庫に向かっているようだな。まさか!」

「あそこには贋金の集積地『屑鉄屋』がある。ユグルトの私兵が管理している屑鉄屋に一直線に向かっているのは何故だ?今までそんな素振りなどまるで無かったぞ。どういう理屈だ?アイツは神託でも受けているのか?」

男たちの懸念は的中し、彼女たちは数ある倉庫の中から符牒が指し示している倉庫の前で立ち止まった。

「おい、やはりそうだ。屑鉄屋の倉庫じゃないか。」

倉庫の前に腰かけている倉庫番にリーファたちが声をかけた。わざわざこんなとこに来たのは何故かわからないが、倉庫番は万が一のためにリーファたちに符牒を投げかけた。

「おや、お嬢さんがた。『屑鉄は入り用で?』」

「屑鉄?そんなものいらないよ。」

「ではお引き取りください。」

「今日はここに用があって来たんだ。帰るわけにはいかないね。」

符牒の答えが違うので仲間ではないことがハッキリしたが、どうやらコイツらは何らかの事情を知ってここに来たらしい。大人しく帰ればよかったのに。俺を恨むなよ、もう見逃してやることなどできなくなった。

「そうですか・・・。『一見さん』が来たぞー!!」

一見さんというのはどうやら敵という意味の符牒らしい。倉庫の中からズラズラと得物を手にした男たちが外に出てきた。ここには一般の通行人がいるはずもなく、叫んだところで誰も来やしないだろう。

「何だコイツら?みんな武装してるぞ。」

「どこでここの事を知ったのかはたっぷりと聞かせてもらうからなぁ。覚悟しろよガキども。」

「お前らで全部か?」

「何だ?余裕じゃねぇか。助けなんてくるとでも思ってるのか。」

「まぁ後でゆっくりと聞いてやるよ。」

「ふざけんな!不審な動きを見せたら片方は殺す。おら、大人しく中に入れ。」

「ふぎゃぁ!zzz」

「おい、何で倒れた?うぎゃぁ!zzz」

「うわぁ!」

次々に男たちが悲鳴を上げて倒れて行く。グラムスでもよく見かけた光景だが、どんなトリックがあるのかシンディーはまじまじと観察している。

「相変わらず仕組みがわからねぇ。なぁ、そろそろシンディーちゃんにも懇切丁寧に教えるべき時が来たんじゃねーのか?」

「バカ言ってないで中を調べようぜ。私たちで証拠を押さえるんだ。」

同じく遠巻きに監視を続けている男たちも、グラムスで集めた情報と寸分違わぬ事態に舌を巻いていた。

「おい、見たか?」

「み・・・見るには見たが、何もわからん。あっと言う間に私兵どもが倒れただけじゃないか。」

「あれではもうおしまいだなぁ。下手をすれば俺たちがああなっていたのか。」

「リーファ=クルーンを影で援護する手練がどこかにいると考えるほかあるまい。今もどこかに潜んでいるのだろう。我々も迂闊に近づけば察知されてやられるのは間違いなさそうだ。」

「とにかくブラセンさまに報告しよう。」
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