幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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死に物狂いで駆けろ

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「何でこんなことになってんだ畜生・・・。」

「スローターホークやギガントサーベルタイガーなんて24階層にいなかったはずなのに。」

24階層に無事にたどり着いたポーターたちだったが、今までの魔物よりもはるかに強い魔物がうろついていることに驚愕する。広大な24階層も八割方進んで来たが、魔物の猛攻をやり過ごしながらの帰還は想像以上の困難が伴なった。

「ここまでヤツら相手にマジックスクロールも全部使いきっちまった。15階層まではもつと踏んでたんだが、23階層にすら届きゃあしねぇ。」

「あと少しで23階層への入り口があるってのに、隠れて進むための遮蔽物は何も無いし。ここまで騙し騙し進んでは来たものの、魔物たちに見つからずにたどり着けそうに無いなぁ。」

「あれからもう6日。細々と食いつないだ食糧だって、昨日で底をついた。この洞穴で息を潜めるだけじゃ、いずれにせよ終わりだ。」

昨日たどり着いた洞穴の中には幸いきれいな湧水が湧いており、ノドを潤すことはできるがそれだけだ。いつ魔物が渇きをいやすために洞穴に入り込んで来てもおかしくはない。ここも身を隠すには安全と言えない。

「はは。マキアスたちのためにメガバックパックを置いてきたが、失敗だったな。あれにもスクロールや水食糧があったのに。どうせアイツらも皆殺しに」

「やめてくれマグラム!あの人は・・・マキアスさんは・・・生きて帰るって言ったんだ。」

「すまねぇサミュエル。少なくともアイツは命を張って俺たちを逃してくれたんだよな。お互い生きて地上に帰るって約束した以上は投げやりなことを言っちゃならねぇってもんだ。」

勝ち目が無い戦いに身を投じてまで逃げるチャンスをくれたんだ。あの場に残って殺されるのを待つなんて俺は耐えられなかっただろう。こんな情けない泣き言を吐いているヒマがあったら死ぬ気であがくべきだ。それがマキアスに通すべきスジってもんだろ。

「俺たちも覚悟を決めようマグラム。マキアスさんは戦ってくれたんだ、こんなところで何もせず死を待つなんて申し訳が立たない。」

「よし、行くぞ。」

***

「くそっ、動きが速くて仕留められねぇ!」

「まだグリフォンの方が攻撃が命中したぜ。グリフォンほど耐久力はねぇから攻撃さえ当たれば簡単に仕留められるんだが。」

「急降下攻撃を狙え!ヤツらのソニックブームは接近しないと効果が薄い。その機を逃すな!」

先ほどからグレンはサーベルを仕留めながらホークも器用に落として行く。しかしそんなことを言われてできるほど甘くはない。ごくごく一部の冒険者しか同じ戦術は採れなかった。ほぼ全ての冒険者たちはホークに集中しなければ落とせないほど動きが速いのだ。

「ギガントサーベルタイガーもキツいんだ、簡単に言うなよグレン!」

「これだけ包囲されちゃあ遊撃にならんな、どうしたもんか。」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇよスアレス。もはや総力戦になってて分隊も機能してねぇんだ。うわっ!」

背後から放たれたソニックブームをマイクが地面に身体を投げ出して間一髪かわす。これではスアレスにツッコミをいれる余裕すら無い。
救難隊は24階層にたどり着いたはいいが、すぐさま空と地上から包囲されるような形で襲撃を受けて乱戦に持ち込まれてしまった。これまで前衛と後衛の連携で強敵を無力化してきたが、ここへ来てそれも難しい状況だ。

「わぁーん!ボウガンの矢が無くなっちゃったよぉ!」

「うるせぇよチビッ子、スローイングダガーだって持ってんだろ?」

「だってあんまりスローイングって得意じゃないんだもん。こんな乱戦で使ったら味方に刺さっちゃうかもしれないんだよ!わかってんの?」

「アホ、そんなこと知るか!自信満々に言うな、チビッ子!」

「あー!またチビッ子って言ったぁ!いいもん、シンディーの近くにいる魔物を狙って投げるもん!」

「間違ってアタシに命中したらぶっ飛ばすからな!」

アホかアイツら・・・。まぁ、まだそれだけ元気があるってことだよね。すると近くにいたリアンが押され気味の戦況を見据えて何か決断をしようとしていた。

「温存しなければならないのだが・・・そんな場合ではないな。」

「待ってリアン!私が何とかして見るから、大事な奥の手があるなら温存して。」

「もしかして分身を使うのか?」

「いや、あれよりはもっと小規模なものだよ。もう24階層なんだ、ここからは私も抑えていた戦力を投入して行くよ。」

バトラー、ホーネット=ランサーは何回使える?

「一匹につき一日一回です。ヴェノムなど他の攻撃手段も使えなくなりますのでご注意ください。600匹おりますので一匹一殺でも余力は十分ございます。」

わかった。毒がまわるのを待つ余裕もなさそうだ、ランサーでサーベルタイガーの頭部を狙ってくれ。

「かしこまりました、リーファさま!」

<ゴギッ!>

鈍い音を立てると次の瞬間にギガントサーベルタイガーが地面に倒れた。ランサーを使うのは初めてだが、サーベルの分厚い頭蓋骨を貫いているようだ。一匹につき数人がかりで対処しなければならないサーベルを速攻で仕留めるのは選択として間違っていないはずだ。

「うわぁ、サーベルの頭がふっ飛んだ!」

「何だ?突然ヤツらのドタマに穴があいたぞ!誰だ、他にも何かいるのか?」

「何じゃこりゃ!こんなのが俺たちに命中したらやべぇぞ!」

「どこから狙ってやがる?探せ!」

何の説明もなくサーベルが倒れていったら遠くから無差別攻撃を受けていると混乱が広がっているようだ。頭を抱えて伏せているヤツもいる。こりゃマズいな、目立ちたくないけど仕方ない。

「大丈夫だ!私がサーベルへ一斉攻撃をかけているから、みんなはホークの撃退に集中してくれ!」

「リーファか!」

「さすがリーファだ。空地からの同時攻撃で危うく崩壊寸前だったぜ。」

「助かった。」

「安心するのは早いぞ!ホークはまだまだ健在だ。こちらに手出しできなくなるまで減殺する!」

ホークに集中できるようになった冒険者たちが空振りしながらも少しずつホークを仕留めて行く。すると周囲を見渡す余裕ができた冒険者が遠くの地平に妙なものを確認した。

「ありゃ何だ?」

「ん?草のかたまりがこっちに近づいて来る。二つだ!」

「あれって人じゃねぇか?オーガに追われてるぞ。」

輪郭がハッキリして来ると緑のカタマリはどうも人間っぽい感じに見えた。もしかしたら新種の魔物かもしれないが・・・。

「何っ?間違いなく探索隊のメンバーだ。直ちに救出に向かうぞ、お前らついて来い!」

ガウスが5人の手勢を引き連れて駆け出して行った。
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