幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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お帰りアンブッシュ

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「あーぁ、アレを独り占めできたら遊んで暮らせるぜ。今回のダンジョンでの獲物は山分けってルールだから仕方ねえけど・・・。残念だなリーファ。」

クリスタルゴーレムの欠片を入手した私にマイクが語りかける。私としては別にアレが無くてもお金には困らないだろうし。みんなの報酬に上乗せされるなら別にそれでも構わないよ。

「え?まぁいいんじゃないの。」

「ははは、欲が無ぇなぁリーファ。」

「いちいち倒したモンスターを解体してたら救助も遅れるし、救助隊ってのは得てしてそんなもんだってグレンが言ってたよ。違うの?」

「獲物が召し上げられるんだったら結局は骨折り損。抜け駆けがバレりゃあペナルティでそれこそ大損。逆にそれが救助隊の統制につながるんだ。」

実際グリフォンなどの素材は高く買い取られるらしいが、25階層への強行においてそのまま捨て置かれたというのもそういう理由だった。帰る途中で回収しようにも既に食い荒らされて、残されたものもロクなものではない。

今思うとパントリーにぶち込んどけば良かったのかもしれない。今ヘタなこと言うと周りの冒険者から恨みごとを山ほど言われそうだから黙っておこう。

「へぇ、そうなんだ。あの取り決めってそんな意味があったんだねスアレス。」

「クリスタルゴーレムが現れたのがマキアスたちを回収した帰路で良かった。でないとクリスタルゴーレムを前に素通りしなきゃならなかったんだ。」

「じゃあまた狩りに来ないとね。」

「そうしたいのは山々だが、奴は一度襲われた場所には姿を現さないんだ。そもそも何度も遭遇するようなモンスターでもない。俺も話には聞いていたが、遭遇したのは実のところ今回が初めてだ。あんなに硬いとはさすがに驚いたよ。」

「それにしても何でみんなに見せたんだよリーファ。内緒にしておけば後でシンディーちゃんと山分けできたのに。」

「仮に内緒にしたとしても私の顔を引っ張るようなヤツには口が裂けても教えないし、分けてもやらない。」

「も・・・もしかしてリーファ、まだ欠片を持っているのか?・・・いやぁ、悪かったよリーファちゃん!おっ、そういやそこはかとなくリーファちゃんって美人だよなぁ。アタシ前から薄々そう思ってたんだよ。」

「気持ち悪いからやめろよシンディー。それにしても私のホメ方がえらく雑だなぁ・・・そこはかとなくだの薄々だの。言葉の節々から心にも無いこと言ってるの丸分かりだぞ?」

「そんなこと無いよリーファちゃん。シンディーちゃんの澄みきったお目々が嘘ついてるとでも?」

お前の目を見たところで私の考えは特に変わらないんだが?

「いや、欠片はアレで全てだから・・・隠し持ってたって、現金化する時に足が着くだろ?」

「ちぇっ、じゃあしょうがねー。」

「はっはっは、変わり身早ぇなぁシンディー。」

「浅ましいよシンディーは。」

マイクが笑っている横では呆れたティナがシンディーを白眼視している。バツの悪くなったシンディーは誤魔化すようにティナに話をふった。

「何だよ良い子ぶりやがって、チビッ子だって私たちだけで山分けしたいって思っただろ?」

「そりゃちょっとはそう思うけど・・・、でも下手に同業者の恨みを買うのは怖いんだよ。冒険者は特にね。」

「そうだな、ティナの言う通りだ。分配でモメて解散したパーティーは多い。酷いのになると殺し合いなんてのもザラだ。」

「スアレスたちもモメたことあるの?」

「いいや、俺たちパーティーにはリーファも知らない鉄の掟がある。少なくとも分配でモメたことは無いな。」

「スゴいね。どうしてるの?」

「基本的には等分で山分けなんだが、貢献度によるボーナスがある。」

単純に等分だったらサボることだってできるもんね。でも欲張りがいたら自分の主張を譲らないんじゃないの?

「え?貢献度って・・・それこそモメそうだけど。」

「いやぁ・・・リアンが評価してるんだが、誰も反論できないほど緻密で的確なんだよ。6人で不満をぶつけ合っても話し合いの後にはみんなスッキリと納得してた。」

「鉄の掟って・・・リアンがいないと成立しないじゃんか。」

「はっはっは、それな。」

「先ほどから生臭い話ばかりではないか、あまりよろしくないぞお前たち。」

マズい、あまりにも私たちが金の話ばかりしてるもんだからリアンが不機嫌な顔をしている。あのシンディーですらちょっと焦ってるじゃないか。

「ほら欲張りっ子、叱られたじゃねぇか。リアンに謝れよ。」

「何言ってんのよシンディー!アンタが誰よりも強欲なこと言ってたでしょ!何で私が謝るのよ?」

私たちは互いにバカなことを話しながらも地上へと帰還することができた。スアレスとリアンは口々にダンジョンの抵抗が想定を下回ると言っていたのが少し気になるけど、そのおかげで無事に地上へ帰還できたのだから良いじゃないか。

***

「ただいまー!リーファさまのお帰りだぁ!」

私が勢いよく扉を開けて我が家に飛び込むと驚きの光景が飛び込んで来た。何やらキレイな制服姿の人たちばかりだ。どうやらここは私の家ではないらしい。

「あっ!すいません、間違いました。」

「おい何やってんだよリーファ。」

「早く入ってリーファ。疲れたんだからゆっくりさせてよぅ。」

後ろでつっかえているシンディーとティナが早く家に入れとブーたれて来るってことは・・・やっぱり私の家だなぁ。ってか、こんなデカい建物なんてココしかないし。

「え?やっぱり我が家で間違いないよな。ふぇー、それってどうしたの?」

「どうだ、すごかろうリーファ。」

「トマソン?」

「見ろよ、ダンジョンに行ってたアイツら目が点だぜ。」

「へっへっへ、可愛いだろ?」

「エルマ、服を揃えたんだね。良いよ・・・すごく良い!」

「ボーネランドさんの提案を受けて、店として一式揃えて見たんだ。デザインとかもいろいろ話し合って詰めたんだぜ。」

「素材も良いモノを使っているんだ。ワシもかなり勉強させてもらったがな。」

「はぁー、私の制服はあるの?もちろんあるんだよねぇマルテ!どこにあるの?ねぇってば!」

可愛いモノに目がないティナが必死の形相でマルティナに詰め寄っている。マルティナは一瞬口元が緩んだように見えたが見間違いだろうか。すぐに困ったような顔を見せた。

「ティナの分は・・・ごめん、忘れてた。」

「そんなぁ・・・、こんな可愛い制服が着られないなんて。何で私が店員やってる時に揃えてくれなかったの!」

「ティナはいいとして、世紀末ファッション覇王シンディーちゃんの制服は用意してあるんだよな?さっさとよこせよエルマ?」

「お前のも無ぇよ。」

「がーん」

「ほら、リーファも袖とおしてみ?」

ショックを受けるティナとシンディーの後ろで、ロミアが私の制服を持ってきてくれた。白とグリーンを基調とした華やかなエプロンドレスだ。

「私の制服もあるの?やったぁ!」

「ふざっけんな、何でリーファのはあるんだよっ!」

「そうだーっ!リーファだけズルい。」

「冗談だからそんな必死になるなよ。お前らのだってあるさ、準備しないワケがないだろ?」
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