幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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ローグパラディズム・イン・ザ・ダークact9

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大剣はいかにも豪壮な見た目こそしているが、近接戦闘では大層取り回しの悪い武装と言えよう。
例にもれずワイルドもすばしっこいリーファ相手に持て余していた。

「魔術師ながら近接戦闘でも戦い慣れているようだ。堂々たる戦いぶり、敵ながら見事である!」

「そりゃどうも。」

まだ何とかかわせるけど、一撃でももらったら骨ごとへし折られるぞこりゃあ。ハニカムウォールの使いどころが

「だが、まだ何か手の内を明かしておらぬようであるな?」

ハニカムウォールの展開について考えを巡らすリーファだったのだが、ワイルドに何かを気取られたのだろうか。勝ち筋を一つ一つ潰しにかかるワイルドに気圧されぬようにとリーファも気丈な振舞いで応じて見せる。

「そんなことワイルドにわかるものか!」

認めたくないけれどなんとも攻め手に欠ける展開だ・・・何か手はないもんかなあ?これじゃらちが明かない。

大振りしたところで致命打を受けないとあらばどんな戦闘スタイルも取り得ると言わんばかりの猛打に、正直なところリーファも辟易する。

「わかるとも。」

「何とでも言えるさ。その程度で動揺しないよ」

ワイルドの確信的な言葉に虚をつかれたのはリーファだ。いくら言葉で否定しようとも表情でワイルドはくみ取ったのだろう。
形勢不利な状況では知らず知らず心の余裕も削られるというものだ。

「窮地にあって貴殿の目は死んでおらぬのだ。これだけ追い詰めれば諦めるのが徒人のならいよ。」

ちっ!やるねえワイルド・・・悔しいけどよく見てる。

「こっちはワイルドみたいに兜で覆われちゃいないんだ。次からは顔を隠そうかな?」

ボロを出したリーファが自虐的に微笑む。するとそれにつられるかの如くワイルドも上機嫌に叫んだ。

「実に安心した!」

戦闘中に安心?何言ってんだこんにゃろめー、ナメんなし。
・・・いや、ダメだ。こうやって頭に血がのぼるとロクなことにならない。こんなんじゃまたジェゼーモフ先生からお小言もらっちゃうよ

「何が安心したんだって?」

「冗談が言えるとは貴殿もまだまだ余裕があるようだ。」

「まあそうかもね、少なくとも頭は冷えたよ」

またさっきの話に戻るんだけど、下手にハニカムウォールを展開できないってヤツ?あの変な音のヤツで無効化されたらさすがにキツイんだ。タイミングを見切られたが最後、ハニカムウォール無効で真っ二つにされちゃうもん。

「たしかに・・・下手に攻撃を弾いたらばヤツはすぐさま気づきましょう。」

バトラー、ワイルド相手じゃあここぞというタイミングまでカードは切れないってことだ。でもね

「何かご不安でもございますか、リーファさま?」

他の皆がピンチの時には出し惜しみなしだよバトラー。誰一人仲間を失うつもりはないんだ。

「心得ております、リーファさま。左様にロードチャンセラーが差配いたしましょう。」

ワイルドの攻撃をいなしつつ、リーファの目は兜の上部に備わる船の帆のような装飾に向けられていた。つい先ほどはワイルドがあれを軽く小突いた直後に魔術が霧散したのだ。

ワイルドだけあの耳付きなんだ。アレを失えば魔術の範囲無効を何とかできるんじゃないか?

「どうしたリーファ?避けてばかりでは戦いにはならぬぞ。」

だからって考えなしに突っ込みゃいいってもんでもないんでね。しかしランサー、アシッドは通じない

「・・・言ってくれるじゃんワイルド。お望みならまたふっ飛んで見る?」

「この期におよんで遠慮など無用だぞリーファ、いつでもやるがいい。魔術ごと粉砕してくれようぞ!」

ねえ見てよアレ、何とかのマガイだっけ?さっきから馬鹿みたいな硬さなんだコレが。あの耳だけモロいなんてことないよね?
もう私の短剣じゃ振るうだけムダ。どこ叩きつけてももれなく手が痛いだけなのよ~。どうすりゃいいのさ?

「チクショー、硬え!」

向こうでは私と同じくティナとマイクが攻めあぐねているみたいだ。スアレスだけは圧倒的な剣さばきでガンガン押しているけど、敵にダメージは無さそう。

「こっち来んじゃねえってんだ金ピカ野郎!」

「待てえ獣人!」

シンディーにいたっては逃げ回ってる。魔術は効かないから無理もないけどね。

だけどハニカムウォールを扱わせたら右に出るハニービーはいないロードチャンセラーがみんなのことを見てくれているから大丈夫。
ロードチャンセラーのすごさは何たってハニカムウォール多重同時展開のレベルが桁違いなんだ。ロードチャンセラーだけでハニービー数十体以上の力を発揮するからね。そっちは任せたよロードチャンセラー

「クソ、何も通じねえのか?」

「どうした、奇策はもう打ち止めか?」

マイクがじわじわ追い詰められている。相手もなかなかの手練れのようで、知らず知らず狭い空間に後退するようコントロールされているではないか。マイクの首筋にいやな汗が流れる。

「ねえ、マイク?」

「うわっ!何だよティナ?」

敵の攻撃をかわした次の瞬間、マイクの目の前にティナが現れた。ティナが一体どんな動きしているのかさっぱりわからないマイクが仰天する。

「アレ無いの?」

「アレって・・・アレか?無いことないが効かないんじゃな、おわっ・・・っぶねー」

「すばしっこいヤツらめ!」

ティナに気を取られた一瞬のスキにマイクの脇腹を大剣がかすめて行く。少しでも当たれば二度と立てなくなるのは間違いない。集中力を切らしている場合などではないのだ。

「アレやらなきゃこのままジリ貧なんだよ~。えーっとー・・・あの人っ。あそこにいるあの人っ!」

ジリ貧とか言う割にはヒラリヒラリと剣戟をかわしまくるティナが指差した先にはあまり攻撃に参加していない重騎士の姿がある。

「何だチビ助、俺に何か用か?」

「アイツに何かあんのかよティナ?」

「いいからやってほしいんだよ・・・ってかチビって言ったよね?今アイツ、チビって言ったよね?」

ティナが血に飢えた手乗り文鳥のような目をして重騎士をにらみつける。親指で首をかっ切るジェスチャーのおまけ付きだ。

「わかったよ。頼むから俺までにらみつけないでくれ。」

「とうとう破れかぶれとは・・・見苦しいものだ。」

後方で余裕の表情を浮かべる重騎士にブチ切れたマイクが叫んだ。

「うるせえ、言ってろ。今に吠え面かかせてやっからな!」
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