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ファンタスマゴリア・オブ・ザ・ナイトメアact2
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「くっ・・・スキルを使いすぎた」
普段であれば戦闘中の駆け引きなど考えもしない。だがさすがに己を圧倒する敵となれば別の話だ。
ヴァイスにしては珍しく、後先を顧みぬ派手な攻撃の裏に緻密な罠を織り込んで見せたのだ。これには口うるさいジェゼーモフもうなずいたに違いない。だがその彼も今や雪の下で永遠の眠りについているのだろう。
何故ここに来てそんなことを考えたのかヴァイスには見当もつかなかった。風の無い街、よどんだ寒気のみが身に染み渡る・・・
「・・・」
しばしの沈黙。どこからともなく降ってわいたような感傷に険しい表情のヴァイスが振り向くと、目の前には全てを飲み干す暗闇がそのあぎとを開いて待ち構えている。
「さて」
退き際はどこかという声が頭をよぎる。
手を引けば引いたで着手金3倍の違約金がのしかかる。当面は苦しいが、さりとてヴァイスの実力をもってすればどうとでもなろう。想像以上に手を焼くこの案件など今すぐ放り投げて帰る手もある。
「なんてな・・・」
自嘲気味に笑うヴァイスは撤退の選択肢をなげうつ。
先ほどからしきりに意識に浮かび上がる不安の正体をつかめぬのであれば、いっそのこと忘れてしまうのがよいのだ。
失われつつある自分を取り戻すかのように、ヴァイスは普段の思考パターンをなぞる。
残る敵は二人。なかなかの手練のようだが・・・
「コケにされたまま黙っていられるか。」
件の敵はと言えば、どうにも寄せ集めにしかすぎないようだ。個々の動きはそれなりにしても、連携が取れていない。挙句の果てには報酬を独り占めしようとして仲間割れでもしたのだろう。
互いに無傷でなくば仕留めるなど容易い。よもやニールほど手こずることもあるまい。
ヴァイスは賊が逃走した方角へ糸を放つと、一気に建物の上に取り付く。
「逃げられると思うなよクズども」
次々と建物伝いに跳躍していくヴァイス。だが、不意に地上から声が響いた。
「夜空に舞う天魔のごとし。」
<ボワァ>
「何だ?」
彼女に向けて突如火球が放たれる。空中でのあらぬ方向からの奇襲にキリモミ状の落下を余儀なくされたヴァイスは寸でのところで地面との激突を回避した。
「テメエか、ジジイ」
「あな、恐ろしや。聖レクスティウスの調伏せし天魔バイデーンもかくにやありけむ。」
恐ろしいと言う割には不気味な笑みをこぼす老人は錫杖を片手にヴァイスを見つめている。
「法衣のジジイが僕に何の用だって聞いてんだ。訳わからねえことほざいてんじゃねーぞ!」
まさかあの金ピカゴリラやミミズ野郎どもの仲間とも思えねえが・・・コイツは何だ?次から次に一体どうなってやがる
「幸いなるかなレクスティウス。」
「あぁ?」
「汝、主に仇なす天魔とまみえり。主の右の御手は剣となりて左の御手によりこれを賜へり。すなわち天魔の前にして正しからざるはなし。」
何やら古い詩篇のようなものを口ずさみ始めた老人を前にヴァイスがげんなりする。レクスティウスなる人物が何者かさっぱり見当もつかない。
「黙って聞いてりゃあ会話にもなりゃしねえ。まさか頭ボケてんじゃねえだろうな?」
「喝っ!」
茶々を入れるヴァイスを一喝するかのように老人が信じられないほどの大声を張り上げた。すると辺りを煌々と照らす火球が3つ現れ、法衣の老人の周囲をまわり始めたではないか。
どうやら詩篇を詠うと見せかけて、術式詠唱だったのだろう。だが本当のところはどちらであろうとも構わない、最初に攻撃を受けた段階で殺すべき敵であることは確定している。
「なるほどね、殺る気満々ですってところか・・・。前衛も無しに魔術師が単独で僕に挑もうって、余程自信があるのかねえ?おおかたお前もエルフ目当てなんだろうよ。」
ん?この紋章どこかで・・・西方審問騎士団か!このジジイが?
「・・・且つは嘆き、且つは憎む。朝夕は短く、直くあるは難し。衆生の情欲即ち泥濘の夢」
「詠唱なんざ待つかよボケぇ」
「煉獄、寿ぎ」
西方審問騎士団の紋章に気を取られて動き出しが鈍ったヴァイスは攻撃こそできなかったものの、ダイアモンド=コクーンで老人から放たれた業火を後方に受け流す。
「は、後がねえぞジジイ!残り2発」
西方審問騎士団だろうがこの程度。連続詠唱を全てやり過ごしたら一気に殺す
先ほどの業火によって後方の建物に火の手が上がると、焼け付くような空気に背中を押されるような感覚を覚えた。
「天にも届く傲慢の廓」
法衣を取り巻く火球の回転速度が増していくのを冷静に眺めるヴァイス。一度見たからにはなにも真正面から受けてやる必要などあるまい。火球が大業火となって自らに襲い来る前に回避すべく、密かにワイヤーアクションを仕込み始める。
「煉獄、慶び」
「どこ狙ってやがんだ。オラ、大事だぜラス1」
「主命なきまどろみを生と呼ぶは許さじ」
ワイヤーアクションによりあっさりかわされてしまった光景に老人が目を見張る。だがそれも一瞬、残りの一撃を確実に見舞うべく詠唱を絶やさなかった。
「煉獄、祈り」
「当たるかよ、くたばれジジイ!」
ワイヤーアクションによって訳もなく大業火を見送ったヴァイスは連続術式詠唱を使い切り、まったくの無防備となった法衣の老人を瞬殺すべく攻撃のみに全ての意識を傾ける。
目の前の老人は次の詠唱などに取り掛かるわずかな時間すらも残されていなかった。だが最後のあがきだろうか、魔力を練り上げる兆候すらもなくただ一言何かをつぶやいて見せたのだった。
「ドゥーオマギクス」
普段であれば戦闘中の駆け引きなど考えもしない。だがさすがに己を圧倒する敵となれば別の話だ。
ヴァイスにしては珍しく、後先を顧みぬ派手な攻撃の裏に緻密な罠を織り込んで見せたのだ。これには口うるさいジェゼーモフもうなずいたに違いない。だがその彼も今や雪の下で永遠の眠りについているのだろう。
何故ここに来てそんなことを考えたのかヴァイスには見当もつかなかった。風の無い街、よどんだ寒気のみが身に染み渡る・・・
「・・・」
しばしの沈黙。どこからともなく降ってわいたような感傷に険しい表情のヴァイスが振り向くと、目の前には全てを飲み干す暗闇がそのあぎとを開いて待ち構えている。
「さて」
退き際はどこかという声が頭をよぎる。
手を引けば引いたで着手金3倍の違約金がのしかかる。当面は苦しいが、さりとてヴァイスの実力をもってすればどうとでもなろう。想像以上に手を焼くこの案件など今すぐ放り投げて帰る手もある。
「なんてな・・・」
自嘲気味に笑うヴァイスは撤退の選択肢をなげうつ。
先ほどからしきりに意識に浮かび上がる不安の正体をつかめぬのであれば、いっそのこと忘れてしまうのがよいのだ。
失われつつある自分を取り戻すかのように、ヴァイスは普段の思考パターンをなぞる。
残る敵は二人。なかなかの手練のようだが・・・
「コケにされたまま黙っていられるか。」
件の敵はと言えば、どうにも寄せ集めにしかすぎないようだ。個々の動きはそれなりにしても、連携が取れていない。挙句の果てには報酬を独り占めしようとして仲間割れでもしたのだろう。
互いに無傷でなくば仕留めるなど容易い。よもやニールほど手こずることもあるまい。
ヴァイスは賊が逃走した方角へ糸を放つと、一気に建物の上に取り付く。
「逃げられると思うなよクズども」
次々と建物伝いに跳躍していくヴァイス。だが、不意に地上から声が響いた。
「夜空に舞う天魔のごとし。」
<ボワァ>
「何だ?」
彼女に向けて突如火球が放たれる。空中でのあらぬ方向からの奇襲にキリモミ状の落下を余儀なくされたヴァイスは寸でのところで地面との激突を回避した。
「テメエか、ジジイ」
「あな、恐ろしや。聖レクスティウスの調伏せし天魔バイデーンもかくにやありけむ。」
恐ろしいと言う割には不気味な笑みをこぼす老人は錫杖を片手にヴァイスを見つめている。
「法衣のジジイが僕に何の用だって聞いてんだ。訳わからねえことほざいてんじゃねーぞ!」
まさかあの金ピカゴリラやミミズ野郎どもの仲間とも思えねえが・・・コイツは何だ?次から次に一体どうなってやがる
「幸いなるかなレクスティウス。」
「あぁ?」
「汝、主に仇なす天魔とまみえり。主の右の御手は剣となりて左の御手によりこれを賜へり。すなわち天魔の前にして正しからざるはなし。」
何やら古い詩篇のようなものを口ずさみ始めた老人を前にヴァイスがげんなりする。レクスティウスなる人物が何者かさっぱり見当もつかない。
「黙って聞いてりゃあ会話にもなりゃしねえ。まさか頭ボケてんじゃねえだろうな?」
「喝っ!」
茶々を入れるヴァイスを一喝するかのように老人が信じられないほどの大声を張り上げた。すると辺りを煌々と照らす火球が3つ現れ、法衣の老人の周囲をまわり始めたではないか。
どうやら詩篇を詠うと見せかけて、術式詠唱だったのだろう。だが本当のところはどちらであろうとも構わない、最初に攻撃を受けた段階で殺すべき敵であることは確定している。
「なるほどね、殺る気満々ですってところか・・・。前衛も無しに魔術師が単独で僕に挑もうって、余程自信があるのかねえ?おおかたお前もエルフ目当てなんだろうよ。」
ん?この紋章どこかで・・・西方審問騎士団か!このジジイが?
「・・・且つは嘆き、且つは憎む。朝夕は短く、直くあるは難し。衆生の情欲即ち泥濘の夢」
「詠唱なんざ待つかよボケぇ」
「煉獄、寿ぎ」
西方審問騎士団の紋章に気を取られて動き出しが鈍ったヴァイスは攻撃こそできなかったものの、ダイアモンド=コクーンで老人から放たれた業火を後方に受け流す。
「は、後がねえぞジジイ!残り2発」
西方審問騎士団だろうがこの程度。連続詠唱を全てやり過ごしたら一気に殺す
先ほどの業火によって後方の建物に火の手が上がると、焼け付くような空気に背中を押されるような感覚を覚えた。
「天にも届く傲慢の廓」
法衣を取り巻く火球の回転速度が増していくのを冷静に眺めるヴァイス。一度見たからにはなにも真正面から受けてやる必要などあるまい。火球が大業火となって自らに襲い来る前に回避すべく、密かにワイヤーアクションを仕込み始める。
「煉獄、慶び」
「どこ狙ってやがんだ。オラ、大事だぜラス1」
「主命なきまどろみを生と呼ぶは許さじ」
ワイヤーアクションによりあっさりかわされてしまった光景に老人が目を見張る。だがそれも一瞬、残りの一撃を確実に見舞うべく詠唱を絶やさなかった。
「煉獄、祈り」
「当たるかよ、くたばれジジイ!」
ワイヤーアクションによって訳もなく大業火を見送ったヴァイスは連続術式詠唱を使い切り、まったくの無防備となった法衣の老人を瞬殺すべく攻撃のみに全ての意識を傾ける。
目の前の老人は次の詠唱などに取り掛かるわずかな時間すらも残されていなかった。だが最後のあがきだろうか、魔力を練り上げる兆候すらもなくただ一言何かをつぶやいて見せたのだった。
「ドゥーオマギクス」
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