カエル転生からのゲコゲコ下克上!踏まれたカエルが目指すのは……魔王!?

氷狐

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第六話

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 あれから三日が過ぎた。

 え、カニはどうしたって?  逃げたよ、もちろん……俺が!

 まだまだ未知なる敵に挑むのは時期尚早だとの判断からだ。産まれた初日だったし、何よりたくさん食べてたからね。
 まあ、翌日にあのカニが俺と同種のオタマジャクシを捕まえて食べてたのを見た時、判断は正しかったと思ったけど……ハサミでズタズタにされたオタマジャクシに一瞬自分が重なってゾッとしたよ。

 わかってきたことも幾つかあった。
 まずはスキルだけど、これはどうやら食べた対象が持っているものをごく稀に得ることがあるらしい。
 先日、弱った小魚を見つけて食べたらなんか『水棲』ってスキルが手に入った。後は隠れていた昆虫をたまたま見つけて食べたら『隠蔽』ってのとか。
 どちらも、あのプラカードみたいなステータス画面ではグレーで表記されているので、まだ使えるようにはなってないってことだろう。

 それとエクストラスキルの『大食漢』だな。
 あれは、一定時間自分の身体のサイズ以上に『食べる』ことが出来る能力みたいだ。その上限はわからないが、どんなに大きなものでも口に入っていくし腹が膨れることもない。しかも発動中は気が狂いそうな飢餓感と引き換えに全ステータスが一時的にブーストがかかって上昇する。
 まあ、とはいっても基本ステータスがまだまだ低いのでたかが知れているけどね。
 実はこのスキル、保有魔力総量の半分を消費してしまう最終手段的なものだったのだが、それに気付くのはさらに数日後のことだ。

 ◇◆

「くそ、絶対今日こそ終わらせてやるからな!」
「ダル……大声を出すとまたスライムが逃げてしまうよ」

 今日もまた駆け出し冒険者のダルムとキッシュの二人がスライムを求めて沼地へと足を踏み入れている。
 彼らが受けた依頼はよくありがちな、スライムの核を獲ってくるというもの。ノルマは五つで、今日までに集めた核は三つだけ。毎日泥だらけになって帰っているのだが、依頼が達成されないために全く収入に結び付かず、ダルムの苛立ちはもう限界近くに来ていた。

 そんな事情もあり、朝、早めに出かけたかったのだが、薄暗いうちは街道にもふらりと魔物が出てくることがある。しかも今朝は朝靄が濃かったこともあり沼地に到着したのは昼前になってからだった。
 夕方以降も魔物の脅威がある以上、まだ実戦経験のほとんどない駆け出しの二人では暗くなる前に街まで戻らねば危険である。
 結果、スライム探しにあてられる時間はごく僅かとなり、それがさらに焦りと苛立ちを生む原因となっているのだ。

「さあ、出てこいスライム野郎!さあ、どこだ!さあっ!」
「ダル……さすがの私も怒りますよ……」
「……す、すまねえ」

 自らを奮い立たせるつもりで気合いを入れていたダルムだったが、苛立ち混じりのそれは少々やり過ぎであったようで、キッシュに不快な虫でも見るような目で睨まれると、すぐに詫びを入れ小さくなり、彼の後をすごすごとついていった……。

 ◆◇

 ……どうにも、人間が来ると獲物がみんな隠れてしまうのでいかんなあ……。

 ダルムのムダなカラ元気は、こんなところにまで悪影響を及ぼしてしまっているようだ。
 人間たちが沼地へと来ると、大抵の魔物たちは一斉に姿を隠す。それ故に狩りが非常に難しくなるのだが、特に今日のように喚き散らしながら来られると、いよいよ以てお手上げ状態になってしまう。

 恨めしそうな視線を向けつつ、俺はスイスイと泳ぎながら付かず離れず彼らを追った。狙いは先日のスライムの食べかけのようなおこぼれにありつくことである。
 本当ならこの沼地最弱とも思える俺みたいな小さな個体が、こんなに自由に泳ぎ回れるわけがないのだが、今は人間を警戒して出てくるやつなど全くいないし、そもそもこの発想自体が普通の魔物とはかけ離れているからだろう。

 しばらくすると、人間二人は何かを見つけたらしく、身を隠すように姿勢を低くした……。

 ◇◆

「……ダル、止まってください」
「……お、おう」

 キッシュは弓使い。故郷の村でも野山でウサギや鳥などを狩っていた。だから、元農夫で今は片手剣を使っているダルムよりも目が良く、生き物の存在にも敏感である。
 そんな彼が、三メートルほど先の水草の根本に、身体のほとんどを水の中に浸けた状態のゼリー状の生物を見つけたようだ。ゼリーの色は緑。ということはグリーンスライムだろう。

「核を射抜けば昨日のように壊してしまいます。ここは任せましたよダル」

 友からの信頼。それに応えるべくダルムは一度頷くと、物音をたてぬようにスライムへと近づいていった……。
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