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006 とんでも性能生産、始めました
しおりを挟む双子にお使いを頼んだあとは彼らの装備の作成だ。
回復アイテムも重要だが、もっと大事なのはもちろん装備。
先ほどの『初級ヒーリングポーション』という前例があるので追加効果が多々ついた装備が出来上がるに違いない。
だが『ラビリンス・シード』の装備は見た目が『グラフィックシード』に依存するし、詳細なデータは『鑑定証』を見るか、対応する『スキル』がなければ見れない。
それも自身に所有権のないアイテムに関してはしっかりと手に取った状態でなければAR表示を開けない。
データを盗み見するのは難しいということだ。しかし戦闘中にその威力や追加で発生する類の効果を見ることは出来る。
それだけでも詳細とはいかなくてもどのような追加効果が付与されているかはわかる人にはわかる。
この辺は誰もいないところで使う程度の対策しか取れないが、そこまでするのはさすがに大変なので諦めている。
願わくば、『スキル』Lvにより威力に補正がかかる基本攻撃力増加系の追加効果の発生を望みたい。
『スキル』のせいなのか追加効果のせいなのか判別がつきづらくなるからね。
防具はもっと判別が難しくなる。
武器と違って反撃系の追加効果以外は見ただけでは判別が難しいからだ。
まぁだからといって現状では追加効果の誘導なんてやろうと思っても検証不足もいいところなので出来ないだろう。
精々が掲示板に上がっていた情報を元に試してみる程度だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
まずは1本適当なものを試しに作ってみる。
対象は【鍛冶】で作れる店売り『レシピ』――『ブロンズソード』だ。
ナツの『初心者セット』に入っていた装備の1つだね。
『初級ヒーリングポーション』同様とりあえずで12ステージまでミニゲームを選び、スタート。
もちろん全部音ゲーだけどね。
序盤の最低限のミニゲームの難易度は相変わらずしょぼすぎるけれど、懐かしの曲を選んでいるので耐えられる。
規定のステージ数を超えて跳ね上がる難易度はボクとしては全然余裕で、やはり12ステージ目も濁流のようなターゲットの嵐ではあったが、最早慣れた。
次はやっぱりもっとステージ数を増やした方がいいかもしれない。
装備と消耗品では違いがあるかもしれないと思ったがそんなことはない様子だしね。
斯くして出来上がった品がこちら――
====
ブロンズソード
基本攻撃力:124
耐久:C+
総合品質:D+
追加効果:
基本値増加/B+ 耐久増加/D- 剣速加速/F-
====
『初級ヒーリングポーション』と比べると追加効果の数がずいぶん少なく感じる。
装備は判定が厳しいのかもしれない。ちなみにスコアはノーミスフルスコアである。
だが基本攻撃力が3桁になっている点からしてそちらに吸われている可能性も無きにしも非ず。
ちなみに『初心者セット』の『ブロンズソード』は基本攻撃力50である。
単純に火力が倍以上に伸びているのでこれはこれでありだろう。見た目にもわかりづらい追加効果ばかりついてくれているし。
だがこれは試しで作ったに過ぎない。使っても繋ぎ程度だろう。
ナツは【剣】『スキル』を派生進化させたら、【初級片手剣術】を取得する予定なのでこんな初心者用の武器ではなく、もっと良い物を持たせてあげたい。
実験は終了したので次は本命だ。作る武器は『アイアンソード』。
銅の次は鉄だ。
12ステージではやはり物足りないレベルで楽勝すぎたので今回は15ステージくらいまでミニゲーム数を増やしてみる。
たくさんの筐体ジャンルがある音ゲーなのでマイナー所からメジャー所まで色々織り交ぜてみることにした。
タンバリンを模した筐体をシャカシャカ振ったり叩いたり、マラカスを模した筐体を上段中段下段に斜めも入れた全9方向で規定の角度と音で振ることにより成立するマイナーなくせに難易度が非常に高い筐体まで様々な曲をプレイする。
やはりシャカシャカリズムは高難易度だ。
9度の角度を保った5連続振り――フィフスが特に難しい……!
このボクをして高難易度と言わしめるのだから相当だ!
なんて感じで15ステージもノーミスフルスコアを達成し、完成した品がこちら――
====
アイアンソード
基本攻撃力:207
耐久:B-
総合品質:B
追加効果:
基本値増加/C+ 耐久増加/C+ 衝撃/F+ 斬撃値増加/C- 重量加速/C+
====
……ふむ。
やはり装備は追加効果の判定が厳しい仕様みたいだね。
15ステージまで追加したのにこの結果だ。まだ2回しか試行してないけど多分あってるだろう。
ちなみにβテストで作られた最高ランクの武器でも基本攻撃力が200に届いたものはなかったはずだ。
問題を挙げるとしたら追加効果の衝撃というやつだろうか。確かこれ、一定確率で範囲攻撃となる衝撃破が発生するってやつだったと思う。
見た目にもわかりやすいエフェクトが出るから追加効果がついているのがわかりやすい。
でもボクが知っているようにβテストでも作成できた追加効果なのでそれほど気にするほどでもないだろうか……。
前述したように追加効果の発生検証はまだまだ難しいので1つくらいならこういった追加効果が出ても仕方ない。
何より、数打つには素材が足りない。
北門フィールドで得た素材は基本的にうさたんシリーズのものばかりで、『ストーンラビット』から『ブロンズインゴット』と『アイアンインゴット』が数個出ているだけだ。
【鍛冶】で装備を作るには大体インゴットが必要なのでドロップで得た分以外は新たに購入してくるかまた狩りをしてくるしかない。
なので今はまずはある程度のことには目を瞑って作っていこう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「兄上、頼まれていた物は全て購入しました。
それと、なんともう『アビリティシード』を販売している露店がありました」
「お疲れ様。もう売ってるところがあるんだね。ていうか露店出してる人いたんだ」
「はい、数は少なかったですがすでに露店を広げているプレイヤーはちらほらいるようですわ」
露店は【商人】『スキル』から派生進化させて【初級売買術】を取得すると使える『アーツ』――『露店開店』を使うことで行うことが出来る。
なので最低でも『無印スキル』をLvMAXにしなければいけない。
ボクのようなパワーレベリングはほとんどの人が出来ないだろうから地道に上げていったのだろう。
それに『鑑定証』をつけなければ詐欺の心配もあるので露店を開いているプレイヤー達は【観察】もLvMAXにしていることになる。
「それで売ってた『アビリティシード』の効果は?」
「『基本値増加/H-』が1つだけでした」
「まぁ序盤も序盤ではそんなもんだよね。ちなみにいくらで売ってたの?」
「はい、やはりドロップ率が低いようで――」
『アビリティシード』は生産の際に混ぜることにより、『アビリティシード』についている効果を一定確率でそのまま付与することができるドーピングアイテムだ。
レアアイテムではあるが全てのMOBから入手することが可能。
付与されている追加効果もランダムだが、MOBの強さやレア度に応じて性能が高くなる傾向にある。
追加効果を狙って発生させるのはたくさんの検証と運がいるが、『アビリティシード』ならば確率の壁を突破すれば付与できる。
思い通りの追加効果を持つ装備が作れるのだから当然ながら有用な追加効果には高い値段がつくことになる。
まだまだ序盤の現状ではどんな効果であろうと高値がつくのは当然で、ナツから聞いた値段もボク達が2時間狩りをして得た全てのドロップを売却してもまったく足りない額だった。
まぁでも超がつくほどのレアアイテムでもないし、全てのMOBから手に入るので時間が経過すれば値段も落ち着いていくだろう。
それでもやはり人気のある追加効果は高くなるだろうけどね。
「じゃあはいこれ。2人の暫定装備ね。まだまだ素材が足りないからとりあえずってことで」
「「ありがとうございます! 兄上(兄様)!」」
「外見は店売りの『グラフィックシード』だけど、そのうち職人が売りに出しはじめるだろうし、それまでは我慢してね」
「兄様が作ってくださる物に不満などありませんわ!」
「その通りです兄上! 俺達のためを想って作ってくださった物に誰が不満など言いましょう!」
「そういってもらえると嬉しいよ」
「「兄上(兄様)……!」」
双子コンビの嬉しい言葉にニッコリ笑顔を返してあげればまた妄想の世界に突入していくブラコンズ。
まったくしょうがない双子だけど、そんな双子の姿を見て嬉しくなってしまうのは同じだからボクもしょうがない。
またしばらくは放置になる双子コンビは一先ず置いておいて、買ってきて貰ったものを使って目的の物を作ってしまうことにした。
装備品はいくつかの装備枠に分かれている。
左手と右手に武器を2つか盾を2つ。暗器や特殊ギミックの武器は除いて基本的に両手で2つまでの枠となる。
頭、胸、腰、足、腕、外着、内着に防具を装備し、指に2つ、耳、首がアクセサリー枠となる。
今回作るのはメイン枠は外着だ。
外套とかマントとかその辺のカテゴリーになるもので、【裁縫】『スキル』を使うタイプなのだが実は複数枠を使う装備も作れたりする。
なのでメイン枠を外着として、サブ枠を消費すれば全身を1つの装備で覆うタイプの物が作れたりする。
デメリットは当然消費したサブ枠の分装備する箇所が減ることだが、その分1つの装備に性能を集中させて効果を高めることが出来る。
今回は素材自体も足りないので、複数の装備を作っている余裕がないのも理由の1つだ。
全身を覆えて、素材の量も減らせる。多少防御性能が低くなっても戦闘行為をしないボクにはデメリットにならない。
ミニゲームのステージ数も双子コンビの装備と同様に15ステージにして作成開始。
出来ればあの追加効果が出てくれないかなぁと願いながら降り荒れるターゲットの嵐をノーミスで消滅させていく。
ここには妄想の世界に旅立ってしまった双子コンビしかいないので派手な動きを取っても誰も何も言わない。
暴動のような大歓声も気にしなくていい。
それに、双子コンビの装備はしっかり作らなければいけないが、今作っているのはボクの装備なので幾分気が楽だ。
そんなことを考えていればあっという間に15ステージは終わってしまう。
やっぱりまだまだ足りないなぁ。自分の装備なんだし、もっと増やせばよかっただろうか。
でも買ってきてもらった『グラフィックシード』は有限なので失敗は許されない。
『グラフィックシード』は当然消耗品だ。
ミニゲームもリアル志向の生産同様で、1工程の大失敗で生産自体が失敗し、素材なども全て失ってしまう。
つまりは1ステージ大失敗するだけでアウトなのだ。
もちろんある程度挽回できるようにリアル志向なら致命的な失敗でなければ続けられる。ミニゲームでも一定以上のスコアを保っていれば続けられる。
ボクに限ってそんなミスは音ゲーでは犯さないが万が一ということもある。
なので急激なステージ数の増加はなるべくなら控えた方がいい。
まぁステージ数の増加と難易度の上昇傾向からある程度は予測がつくんだけどね。
それはさておき、完成した品がこちらだ――
====
うさたんキグルミパジャマ
基本防御力:77
耐久:B
装備枠:外着 頭 胸 腰 腕 足
総合品質:B+
追加効果:
基本値増加/G+ 認識阻害/C+ 魅了/B+ 敏捷増加/C+ 器用増加/C 火耐性増加/C+
MP回復量増加/A HP増加/G- MP増加/B-
====
装備枠をかなり消費した結果、追加効果の数が劇的に増えている。
ただ基本的な防御力はずいぶん低くなってしまったようだ。
ナツとアキの防具は2つの枠でこの防御力をあっさりと超えている。
まぁこれだって店売り防具と比べると破格の性能なんだけどね。
この辺は恐らく【裁縫】のLvが低すぎたのも要因の1つだと思われる。何せLv1だからね。
だが他の追加効果が恐ろしいランクになっている。
特にMP系。
あと魅了ってなんだ魅了って。
だが狙っていた認識阻害を事前に掲示板で出やすいっぽいミニゲームの情報を確認していたのが幸いしたのか見事に出てくれた。
運が良かった。やはり日ごろの行いの賜物だろう。双子に大変優しいボクはいい子だからね!
……まぁいい子って年でもないけど。見た目はそのものだけどね!
さて装備してみよう。
装備は『魔法の鞄』を経由させれば一瞬で装着できるので一度『魔法の鞄』に収納してから装備する。
防具のサイズ規格はフリーとなっており、『魔法の鞄』経由で装備すると装備者のぴったりのサイズとなるようになっている。
そんなぴったりサイズの『うさたんキグルミパジャマ』を装備したボクはどこからどう見ても立派なうさたんである。
垂れたウサミミもラブリーキュートであるが、ちょこんとついている丸い尻尾もデンジャラスラブリー。
全身もっさりゆったりなキグルミパジャマだが、動きを阻害するようなことはない。
これなら生産で激しい動きをしても問題ないだろう。
「兄上……なんですかそのラブリーキュートなお姿は! 俺を萌え殺す気ですか!?」
「兄様! 素敵過ぎます! スクショ! スクショを! いえここはムービーを! ムービーを! 撮影はーん!」
「お、おぅ……」
いつの間にか妄想の世界から戻ってきていた双子コンビがボクの姿を見て個別スペースの床の上を転げまわって絶叫を繰り返している。
そのちょっといつもより激しい行動にボクも反応が難しい。
さすがに普段よりはラブリーキュートな姿に反応も違ってくるだろうとは思っていたけれどここまでとは予想できなかった。ボクもまだまだだな。
そんな現実逃避をしている間にも双子コンビからのポーズの注文をこなしていく。
今の2人の目は血走っていてとても拒否できるような雰囲気ではない。無駄にクオリティの高いその再現率に感心してしまう反面いらんだろうとも思ってしまう。
まったく大したもんだぜ、第4世代……。
双子の撮影会は彼らが満足するまで約2時間ほどかけてじっくりたっぷり行われたのだった。
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