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第4章
77,3つの依頼
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翌朝いつも通りに変な鳴き声のすずめモドキに起こされて起床し、ネーシャと一緒に軽くランニングを済ませる。
アルもずっとオレの後ろについて走っていたけど相変わらず息が乱れるということを知らないのでランニングメンバーには追加してあげない。
オレはいつも通りにスキルをリセットして少し走ったら汗だくで小休憩が必要なレベルなので息1つ乱さないアルがちょっと恨めしい。
小休憩を取っている間にもネーシャは見える範囲を1人で走っていたりする。
ユユさんに弟子入りしてから数日しか経過していないが、体力がかなりついてきたように見える。
栄養事情の改善の成果が体力という形で現れてきたのかもしれない。
あとは気持ちの問題だろうか。今も汗だくだけど気持ちよさそうに尻尾を振りながら走っている。
円形の脱毛も毛が少しずつ生えてきてよくみないとわからない程度にはなってきている。
もう少ししたらあんな大怪我をしていたなんてわからないくらいに完治しそうだ。
2人共浄化をかけてもらいさっぱりしてから海鳥亭へと戻る。
朝の清々しい空気はいつの間にか動き出した世界の熱気に包まれ始めている。
今日も1日が始まる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユユさんにネーシャを預け、予定通りの時間に冒険者ギルドに赴くと奥のテーブルでフードを深く被って肘を突いてボーっとしている大きな白いシルエットが見える。
背には同じく白い布で包まれた巨大な剣。
腰の位置は少し盛り上がっていて中に大きな尻尾が格納してあるのがわかる。
フードも頭頂部が少しだけ盛り上がっているのは大きな耳があるからだ。
「おはようございます、レーネさん」
テーブルに近づきながら白い大きいシルエット――レーネさんに声をかける。
オレの声にボーっとしていたレーネさんがこちらを振り向くとそのフードに隠れた表情には明らかな安堵と歓喜の表情が見えた。
【おはようございます、ワタリさん! アルさん!】
極度の人見知りのレーネさんは気を許してくれているオレにすら普通に話し掛けることができない。
でも念話なら普通の会話が嘘みたいに饒舌になってくれる。
【もしかして待たせちゃいました?】
【いえ、大丈夫です! 誰かと約束して依頼を受けに来るなんて久しぶりだったのでちょっとワクワクしちゃって早く来ちゃっただけですから、気にしないでください】
遠足の前の子供のようなことを生き生きとした表情で言うレーネさんにほっこりしながらも、その不憫な性格にちょっと同情する。
オレに心を開いてくれたのは加護の力が大きいけど、この後の関係はオレ次第だ。
彼女とはこれからもいい関係を築いていきたいと笑顔で応えた。
「うぅ……私のワタリちゃんがぁ……」
そんな笑顔で念話しているオレ達は端から見たら笑顔で見詰め合っているように見えるのか、依頼が張ってあるボードの影からハンカチを噛み締めて今にも歯軋りしそうな人がなにやら呻き声をあげている。
もちろん我らがエリザベートさんだが、アルのものすごい絶対零度の視線にそちらをチラ見するくらいしかできない。
今のアルなら視線だけで凍えさせることが可能だろう……。攻撃できないんじゃなかったんですか、執事君。
【それで……今日はどの依頼を受けましょうか?】
【あーそうですねぇ……。一昨日は薬草採取だったし、今日は軽く討伐系でも受けようかと思っています】
【討伐ですか。ワタリさんは特殊進化個体討伐協力で貢献度が加算されるはずなのでランクEに上がっていることは確実です。
ですのでまずはランクの更新をしてしまいましょう】
【あ、そうなんですか? じゃあさっそくしちゃいますか。受付の人に言えばいいんですか?】
【はい。普通は依頼を達成したときに貢献度の加算が行われるのですが、昨日の調査は結果が出るのに少し時間がかかったようでしたのでもう大丈夫だと思いますよ】
【じゃあ受付行ってきますねぇ~】
【はい、私はランクEの依頼を見てきますね】
一旦二手に分かれて受付に行くとハンカチを噛んでいた人は今度は受付側に回って強引に受付のお姉さんと交代している。
「いらっしゃいませ~。本日の依頼は私の家で一緒にお昼を食べるのと私の家にお泊りとなります~」
ものすごくいい笑顔で顔を少し傾けて手の平を上にして案内している変な人がいるカウンターから無言でずれて念の為1つ受付を飛ばして移動すると変な人が泣きそうな声で待ったをかけてくる。
「うわーん、ごめんなさい。真面目にやるからぁ~」
「まったく……何やってんですか」
「だってぇ~……。あの人嫌いの白狼がワタリちゃんと一緒に依頼を受けるなんて前代未聞だよ?
絶対ワタリちゃんの可愛さにやられたに決まってるじゃない!
私のワタリちゃんに手を出そうなんて許せないわ! もうこうなったら登録抹消して身ぐるみ剥いで川に流すしか……」
泣きそうになっていたのが一転して真剣に暗黒面に突入していくエリザベートさんの声は後半は聞き取れなかった。アルが失礼します、と言ってそっと耳を塞いでいたのだ。
そんなアルのなんともいえない気遣いに抗うことなく、塞いでいた手が退けられたのは黒くなってしまったエルフさんを数人掛かりで職員さんが連行していった後だった。
そういえば白狼ってレーネさんのことだよね? 二つ名とか渾名とかだろうか。すっごく中二な響きだねぇ。でもぴったりあってる。白くて一匹狼なところとか。
「お待たせ致しました、キリサキ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
連行されていった人の代わりに席についたお姉さんは何もなかったと言わんばかりに素晴らしい笑顔で通常業務をこなそうとしている。
オレも特に突っ込む気も起きないのでその流れに乗ることにしてランクの件を話す。
特に何の問題もなく、アルのカードと一緒に預けたギルドカードの表示はランクEとなり、ランクアップはあっという間に済んでしまった。
カードを受け取る際におめでとうございます。今後のご活躍も職員一堂期待しております、と言われて優しい笑顔を向けられた。
きっとランクアップした人全員に言っているのだろうけど、受け付けのお姉さんだけでなく他のカウンターのお姉さん方からも拍手とお祝いの言葉を贈られたりしてちょっと気恥ずかしかった。
ちなみにランクFからEは平均で1ヶ月程度でランクアップするそうだ。
オレ達は特殊進化個体討伐協力というイレギュラーで急速にランクアップが早まったというわけだ。
早々こういうことがあるわけでもないので今後のランクアップは平均速度より遅くなるだろう。急ぐ必要はあまりないのだから。
無事ランクアップを済ませ、依頼を物色しているレーネさんと合流するとレーネさんはちょっと恥ずかしそうにしている。
今ギルド内にいる冒険者は相変わらずオレ達一行だけなので、職員の視線は自然とランクアップした時のままオレに向けられている。
なのでレーネさんの近くに行けばそのまま視線が追ってくるということだ。
自分に向けられた視線ではなくても同行者に向けられている視線でもレーネさんには恥ずかしいようだ。
繊細な人だなぁと苦笑しつつもレーネさんが持っている依頼書に目が行く。
【何かいい依頼がありましたか?】
【あ、は、はい。これなんてどうかなと思うんですけど……】
ちょっと自信なさげにしゃがんで手渡してくるレーネさんから依頼書を受け取り眺めてみる。
内容は獣の窟近くの荒地に出没しているハウンドドッグ20匹の討伐だ。
ランクEとしては報酬がかなりいい依頼ではあるが、問題はハウンドドッグは群で行動する魔物という点だ。
大体5~10匹程度で群を形成する。リーダー格はほとんどが魔結晶持ちというわけではなく、ちょっと強い程度のレベルだ。
連携を駆使して行動するため通常は4,5人のPTを組んで討伐する相手だ。
正直オレ達だけでも楽勝なレベルだ。
それに加えレーネさんも手伝ってくれる。最早楽勝なんてレベルではないのではないだろうか。
というわけでコレ1つだけではなく他にも目的地である獣の窟近くの荒地で出来そうな依頼をレーネさんが探しておいてくれた。
こちらも討伐系でビッグホーネットという蜂系の魔物の討伐依頼だ。
それに付随してビッグホーネットの蜜の採取依頼もあった。
こんな時間にまだ残っているのは目的地の荒地が遠いからだろうか。
もしかしたらレーネさんは思ったより早く来ていて確保していてくれたのだろうか。だったら申し訳なく思うがその反面非常に嬉しい。
【じゃあレーネさんのお奨めだし、この3つの依頼を受けましょうか】
【はい!】
役に立てたのがよっぽど嬉しかったのかレーネさんの表情は非常に明るい。
フードに隠れて暗くなっているはずの表情がその笑顔だけで輝いて見えるかのようだ。
受付で3つの依頼の受付を済ませるとさっそく出発する為に南門へと向かうのだった。
アルもずっとオレの後ろについて走っていたけど相変わらず息が乱れるということを知らないのでランニングメンバーには追加してあげない。
オレはいつも通りにスキルをリセットして少し走ったら汗だくで小休憩が必要なレベルなので息1つ乱さないアルがちょっと恨めしい。
小休憩を取っている間にもネーシャは見える範囲を1人で走っていたりする。
ユユさんに弟子入りしてから数日しか経過していないが、体力がかなりついてきたように見える。
栄養事情の改善の成果が体力という形で現れてきたのかもしれない。
あとは気持ちの問題だろうか。今も汗だくだけど気持ちよさそうに尻尾を振りながら走っている。
円形の脱毛も毛が少しずつ生えてきてよくみないとわからない程度にはなってきている。
もう少ししたらあんな大怪我をしていたなんてわからないくらいに完治しそうだ。
2人共浄化をかけてもらいさっぱりしてから海鳥亭へと戻る。
朝の清々しい空気はいつの間にか動き出した世界の熱気に包まれ始めている。
今日も1日が始まる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユユさんにネーシャを預け、予定通りの時間に冒険者ギルドに赴くと奥のテーブルでフードを深く被って肘を突いてボーっとしている大きな白いシルエットが見える。
背には同じく白い布で包まれた巨大な剣。
腰の位置は少し盛り上がっていて中に大きな尻尾が格納してあるのがわかる。
フードも頭頂部が少しだけ盛り上がっているのは大きな耳があるからだ。
「おはようございます、レーネさん」
テーブルに近づきながら白い大きいシルエット――レーネさんに声をかける。
オレの声にボーっとしていたレーネさんがこちらを振り向くとそのフードに隠れた表情には明らかな安堵と歓喜の表情が見えた。
【おはようございます、ワタリさん! アルさん!】
極度の人見知りのレーネさんは気を許してくれているオレにすら普通に話し掛けることができない。
でも念話なら普通の会話が嘘みたいに饒舌になってくれる。
【もしかして待たせちゃいました?】
【いえ、大丈夫です! 誰かと約束して依頼を受けに来るなんて久しぶりだったのでちょっとワクワクしちゃって早く来ちゃっただけですから、気にしないでください】
遠足の前の子供のようなことを生き生きとした表情で言うレーネさんにほっこりしながらも、その不憫な性格にちょっと同情する。
オレに心を開いてくれたのは加護の力が大きいけど、この後の関係はオレ次第だ。
彼女とはこれからもいい関係を築いていきたいと笑顔で応えた。
「うぅ……私のワタリちゃんがぁ……」
そんな笑顔で念話しているオレ達は端から見たら笑顔で見詰め合っているように見えるのか、依頼が張ってあるボードの影からハンカチを噛み締めて今にも歯軋りしそうな人がなにやら呻き声をあげている。
もちろん我らがエリザベートさんだが、アルのものすごい絶対零度の視線にそちらをチラ見するくらいしかできない。
今のアルなら視線だけで凍えさせることが可能だろう……。攻撃できないんじゃなかったんですか、執事君。
【それで……今日はどの依頼を受けましょうか?】
【あーそうですねぇ……。一昨日は薬草採取だったし、今日は軽く討伐系でも受けようかと思っています】
【討伐ですか。ワタリさんは特殊進化個体討伐協力で貢献度が加算されるはずなのでランクEに上がっていることは確実です。
ですのでまずはランクの更新をしてしまいましょう】
【あ、そうなんですか? じゃあさっそくしちゃいますか。受付の人に言えばいいんですか?】
【はい。普通は依頼を達成したときに貢献度の加算が行われるのですが、昨日の調査は結果が出るのに少し時間がかかったようでしたのでもう大丈夫だと思いますよ】
【じゃあ受付行ってきますねぇ~】
【はい、私はランクEの依頼を見てきますね】
一旦二手に分かれて受付に行くとハンカチを噛んでいた人は今度は受付側に回って強引に受付のお姉さんと交代している。
「いらっしゃいませ~。本日の依頼は私の家で一緒にお昼を食べるのと私の家にお泊りとなります~」
ものすごくいい笑顔で顔を少し傾けて手の平を上にして案内している変な人がいるカウンターから無言でずれて念の為1つ受付を飛ばして移動すると変な人が泣きそうな声で待ったをかけてくる。
「うわーん、ごめんなさい。真面目にやるからぁ~」
「まったく……何やってんですか」
「だってぇ~……。あの人嫌いの白狼がワタリちゃんと一緒に依頼を受けるなんて前代未聞だよ?
絶対ワタリちゃんの可愛さにやられたに決まってるじゃない!
私のワタリちゃんに手を出そうなんて許せないわ! もうこうなったら登録抹消して身ぐるみ剥いで川に流すしか……」
泣きそうになっていたのが一転して真剣に暗黒面に突入していくエリザベートさんの声は後半は聞き取れなかった。アルが失礼します、と言ってそっと耳を塞いでいたのだ。
そんなアルのなんともいえない気遣いに抗うことなく、塞いでいた手が退けられたのは黒くなってしまったエルフさんを数人掛かりで職員さんが連行していった後だった。
そういえば白狼ってレーネさんのことだよね? 二つ名とか渾名とかだろうか。すっごく中二な響きだねぇ。でもぴったりあってる。白くて一匹狼なところとか。
「お待たせ致しました、キリサキ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
連行されていった人の代わりに席についたお姉さんは何もなかったと言わんばかりに素晴らしい笑顔で通常業務をこなそうとしている。
オレも特に突っ込む気も起きないのでその流れに乗ることにしてランクの件を話す。
特に何の問題もなく、アルのカードと一緒に預けたギルドカードの表示はランクEとなり、ランクアップはあっという間に済んでしまった。
カードを受け取る際におめでとうございます。今後のご活躍も職員一堂期待しております、と言われて優しい笑顔を向けられた。
きっとランクアップした人全員に言っているのだろうけど、受け付けのお姉さんだけでなく他のカウンターのお姉さん方からも拍手とお祝いの言葉を贈られたりしてちょっと気恥ずかしかった。
ちなみにランクFからEは平均で1ヶ月程度でランクアップするそうだ。
オレ達は特殊進化個体討伐協力というイレギュラーで急速にランクアップが早まったというわけだ。
早々こういうことがあるわけでもないので今後のランクアップは平均速度より遅くなるだろう。急ぐ必要はあまりないのだから。
無事ランクアップを済ませ、依頼を物色しているレーネさんと合流するとレーネさんはちょっと恥ずかしそうにしている。
今ギルド内にいる冒険者は相変わらずオレ達一行だけなので、職員の視線は自然とランクアップした時のままオレに向けられている。
なのでレーネさんの近くに行けばそのまま視線が追ってくるということだ。
自分に向けられた視線ではなくても同行者に向けられている視線でもレーネさんには恥ずかしいようだ。
繊細な人だなぁと苦笑しつつもレーネさんが持っている依頼書に目が行く。
【何かいい依頼がありましたか?】
【あ、は、はい。これなんてどうかなと思うんですけど……】
ちょっと自信なさげにしゃがんで手渡してくるレーネさんから依頼書を受け取り眺めてみる。
内容は獣の窟近くの荒地に出没しているハウンドドッグ20匹の討伐だ。
ランクEとしては報酬がかなりいい依頼ではあるが、問題はハウンドドッグは群で行動する魔物という点だ。
大体5~10匹程度で群を形成する。リーダー格はほとんどが魔結晶持ちというわけではなく、ちょっと強い程度のレベルだ。
連携を駆使して行動するため通常は4,5人のPTを組んで討伐する相手だ。
正直オレ達だけでも楽勝なレベルだ。
それに加えレーネさんも手伝ってくれる。最早楽勝なんてレベルではないのではないだろうか。
というわけでコレ1つだけではなく他にも目的地である獣の窟近くの荒地で出来そうな依頼をレーネさんが探しておいてくれた。
こちらも討伐系でビッグホーネットという蜂系の魔物の討伐依頼だ。
それに付随してビッグホーネットの蜜の採取依頼もあった。
こんな時間にまだ残っているのは目的地の荒地が遠いからだろうか。
もしかしたらレーネさんは思ったより早く来ていて確保していてくれたのだろうか。だったら申し訳なく思うがその反面非常に嬉しい。
【じゃあレーネさんのお奨めだし、この3つの依頼を受けましょうか】
【はい!】
役に立てたのがよっぽど嬉しかったのかレーネさんの表情は非常に明るい。
フードに隠れて暗くなっているはずの表情がその笑顔だけで輝いて見えるかのようだ。
受付で3つの依頼の受付を済ませるとさっそく出発する為に南門へと向かうのだった。
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