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第4章
79,荒地
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乾いた風が吹く荒地は起伏に富んでおり、そこかしこに大小さまざまな岩が点在している。
植生も枯れかけた草や葉のない痩せた木などが多い。
砂漠ほど乾ききっていないし、2つの太陽の日差しも強くはない。
ピクニックには不向きな場所だが魔物を討伐しに来たオレ達には問題もない。
気配察知に引っかかるのは岩場の影などにいる蛇や小動物だけだ。
今のところ魔物の類は引っかかってこないし、引っかかっている蛇も攻撃的なものではないようだ。
アルの歩みは早くもなく遅くもなく、基本的にオレの歩幅にあわせた速さだ。
起伏がそれなりにある見通しのあまりよくない場所だが、気配察知を持っているオレに全幅の信頼を置いているアルの足は淀みなく前進している。
この荒地は獣の窟ほど広くはないけれど、それでもかなりの広さを誇っている。
荒地に生息している魔物もランクEで1~2人くらいのPTでもそれなりに狩れる程度の強さだが、荒地の代表格のハウンドドッグやビッグホーネットは群を成している場合が多々あるため油断していると逆に狩られてしまう危険性もある。
そのためランクE以上になると大体3人以上のPTを組んで行動することが多くなる。
ランクD以上となるとPTがほぼ必須といっても過言ではなく、ソロなどほとんど淘汰されてしまうのが常だ。
そんな中ソロでランクAにまで上り詰めているレーネさんの実力がどれほどのものかわかるというものだ。
しばらく荒地を探索すると気配察知でさっそく3匹の魔物を発見した。
アルにそのことを伝え、大きな岩を迂回して魔物達に近づくとあちらもオレ達に気づいたようで戦闘態勢に移行するために威嚇を始めている。
だが距離的にまだ30mくらいあるため一息で詰められる距離ではない。
だが遮蔽物がなくなったためオレにとって30m程度なら十分射程内だ。
3匹の魔物――大きな尻尾の骨がハンマー型になっているネズミ型の魔物スマッシュマウスはランクFの討伐依頼にあった魔物だ。
あの尻尾のハンマーで攻撃してくるので遠距離攻撃はない。
なので先手必勝。
荒地には延焼するようなものも少ないので遠慮なく初級魔法:火を使える。
初級魔法:火で攻撃するのは久しぶりな気がする。
火の矢を形成し、鏃に捩れを作り貫通力をあげたものを3本高速で射出する。
高速で飛来する火の矢はスマッシュマウス3匹の頭部を寸分違わず打ち抜き、打ち抜かれた魔物達は一瞬にして絶命したようだ。
アルが解体するために近寄っている間に、レーネさんを振り返ってどうだったか感想を聞くことにしよう。
【どうでしたか?】
くるっと踵に全体重を乗せて回ってレーネさんを見ると目を大きく開いて固まっている。
火の矢も通常の矢のサイズより大分小ぶりのものだったし、相手もスマッシュマウスがたった3匹だ。
特に驚くようなことではないと思うが……。
【レーネさん?】
【ぁ、す、すみません! その……ワタリさんは火の魔法すごく上手なんですね!】
【えっと、苦手ではないけど得意でもないかな?】
【そうなんですか!? でもスマッシュマウスを倒すのに十分なだけの威力を残し、消費を抑えた造形。消費を抑えているのに威力を残す為に工夫もしている。
ワタリさんはやはりすごいです!】
どうやらレーネさんは火の矢に施した工夫に感心しているようだ。
でもこれくらいならみんなやっていることじゃないのかな?
一応図書館で読んだ魔法関連の本にも創意工夫次第で魔法は強くも弱くもなるって書いてあったから、トレーニングでも色々頑張ってみたんだけど。
【これくらいなら魔法を使う人ならだれでもやっているんじゃないでしょうか?
MPは有限ですし、少ない消費で最大効率を求めるのは必須だと思うんです】
【確かにそれが理想です。
でも現実にそれが出来るかと言われるとなかなか難しいんですよ】
他の魔法使いを見たことがないオレは、オレ自身が施している魔法に対するイメージの工夫が普通程度のものだと思っていたがどうやら勘違いのようだった。
オレには生前の世界での様々な知識があるがこの世界――ウイユベールではそうではないのだ。
なるほど、レーネさんが驚いていたのも頷けるというものだ。
【まぁ私の魔法は結構色々違うかもしれないですけど、我慢してくださいね?】
【はい! 楽しみにしています】
基本見学で出番のないレーネさんだが、周りを警戒しているといってもやはりそこはランクE程度の魔物しかでない荒地だ。
基本暇だろうからオレの魔法で少しでも楽しんでくれたら幸いだ。
その後1時間ほど荒地を回り出会った魔物に様々な形状の魔法を叩き込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【いませんねぇ……】
【そうですね。でもまだ1時間ほどですのでこれからですよ】
【そうですね……ん?】
【誰かいますね、他の冒険者の方でしょう。では私達はこちらへ行きましょう】
気配察知に引っかかった魔物とは明らかに違う人の気配。全然強く感じない気配が4つだ。
レーネさんはすでに気づいていたようで、バッティングしないように針路変更を申し出る。
荒地はそれなりの討伐報酬が出る魔物が多いところなので冒険者と出会うこともある。
獲物の取り合いになったら面倒だし、ただでさえオレ達は子供2人と白い巨体だ。
面倒事を回避するためにもレーネさんの提案に乗ることにした。
ちなみに荒地は低ランクの冒険者にとって定番スポットとはいえ、ラッシュの街から徒歩でかなりかかるため移動に半日、狩りに半日、野宿して少し狩って帰るというのが多いらしい。
オレには転移があるので半日もかける必要もないが、荒地方面は獣の窟があるため乗り合い馬車も出ていないので低ランクの冒険者には足がないので時間をかけるしかない。
それでも人気の稼ぎ場所であるためそれなりの人が来る。
それでも荒地は広いので早々バッティングすることもないが、広さ故にたまに獲物の取り合いなんかも起こるらしい。
例え依頼を受けて来ているとはいえ現場での判断は全て自己責任だ。
譲ろうが奪おうがギルドが介入することはない。
例えそれで殺し合いになったとしてもだ。
ただ、だからといって強盗目的や獲物の奪取目的で襲い掛かったりすると罰を受けることがある。
これはラッシュの街の門で確認した犯罪チェックに引っかかるタイプのものでカードに記録されるのではなく、魂に刻まれるとかなんとか。
詳しいことは神様がうんたら~という宗教チックな何かだったが、実際にチェックで判断できる確実な記録が残ってしまうのはなかなか怖い。
ちなみに冒険者同士の獲物の奪い合いによる殺人は軽い罪かもしくは罪にならない。
両者合意の上で冒険者をやっているからだろうか。
軽い罪なら日数経過で消えたり、善行を積んだりすると消えるらしいが、重い罰だとそうもいかないらしい。
教会があるのでそこで御布施をすると消してもらえるとかなんとか本に書いてあったような気がする。
教会ぼろ儲けなんじゃないかねぇ。
その分罪を消せる神官はよくいるような欲の権化のようなヤツでは勤まらないらしい。
清貧な日常生活と善行を常に意識していなければ罪を消すほどのスキルは取得できないそうだ。
ちなみにスキルなのに消費ポイントが0で行動如何によってはスキルが消えるそうだ。
これでは典型的な教会のお偉いさんでは勤まらない。
まぁそういう人は使える人を抱えこんで利用しているんだろうけどね。
そんなわけで滅多に殺し合いにまでは発展しないまでも、他の冒険者に好き好んで近づく必要性もないオレ達は冒険者から離れるように針路を取る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
適当に点在する魔物を蹴散らしつつ、ほどなくして目的のひとつであるビッグホーネットの巣を発見した。
それは大きく盛り上がった蟻塚ような物だった。
前知識がなかったら何かよくわからなかったかもしれない。
全長3m程度で50cmくらいの大きさの蜂がたくさん出入りしている。
ちょうど蜜を集めてきた群が戻ってきたタイミングのようだ。
ビッグホーネットは普通の蜂のように単独で蜜を採取にいかない。
探索用の5cm程度の小さく機動力のある特化された蜂が見つけた場所に5~10程度の群で移動して蜜を採取してくるそうだ。
ウイユベールの花は魔物である場合もあるのでその場合は単独で採取に行くと逆に餌になってしまうのだそうだ。
行き帰りにも単独では襲ってくださいと言うようなものなので群で移動するのはメリットが多い。
ランクEの魔物達は大概が群を形成する。
単独行動をする魔物ばかりだったランクFに比べると格段に難易度が上がるが、群を形成する魔物は多いので慣れる必要性がでてくる。
ランクEからPTを組み始める人も多く、多対多の戦闘の練習にも荒地は人気が高い。
【ちょうど帰ってきたところみたいですので、蜜の採取も出来そうですしちょうどよかったですね】
【そうみたいだね。とりあえず巣の中に煙を入れて様子見かな?】
【そうですね。燻せば中のビッグホーネット達が出てくるでしょうから慌てず、対処してください。小さい蜂は煙で動けなくなりますから、ビッグホーネットだけに集中できます。
蜜の採取は倒した後にしましょう。
多くなりそうだったら加勢しますので心配いりませんよ!】
【了解です。
近寄らせるつもりはないけど、念の為気をつけてね、アル】
【畏まりました。では薪を集めてまいりましょう】
アルが慇懃に一礼し、一緒に木を集めに行く。
燻すといっても荒地にある細い木は煙木と呼ばれる木で、火をつけると煙を結構な量出す木だそうだ。
これを利用して巣に煙を入れて中の蜂達を行動不能にするんだが、ビッグホーネットは体が大きいからか効き目が薄くおびき出すくらいしか効果がない。
そのため巣に煙を入れたら討伐できたり、蜜を採取できるわけではない。ただの準備段階だ。小さな蜂も一応針があるのでまとわりつかれると面倒だしね。
アルと一緒に採取してきた煙木を初級魔法:火で少し燃やし、事前にスキルリセットで入れ替えておいた初級魔法:風で包み込む。
形状は棒状だ。
中で燃え上がる煙木から大量の煙が出てくるが風の中に包まれているため煙は充満して逃げないが、外から酸素は入ってくるようにしてある。
すぐに棒の中がいっぱいになるほど煙がたまったので巣の入り口の1つに向かって、見た目煙の棒にしか見えないソレを射出する。
巣を破壊しない程度の強さで向かっていく煙の棒が巣に着弾し、中に煙を送り込むように風が動き出す。
ここまではイメージ通りだ。やっぱり魔法はすごく便利だ。
煙が巣の中に大量に侵入し、巣のあちこちから煙があがる。
しばしの沈黙のあと、けたたましい羽音を立てて最初のビッグホーネットが巣から飛び出てきた。
先ほどの帰還時にはあのような羽音は立てていなかった。
どうやらあれは警戒音も兼ねているのか、もしくは威嚇か。
どちらにせよ、獲物が巣からでてきたのだ。
さぁ歓迎会の始まりだ。
植生も枯れかけた草や葉のない痩せた木などが多い。
砂漠ほど乾ききっていないし、2つの太陽の日差しも強くはない。
ピクニックには不向きな場所だが魔物を討伐しに来たオレ達には問題もない。
気配察知に引っかかるのは岩場の影などにいる蛇や小動物だけだ。
今のところ魔物の類は引っかかってこないし、引っかかっている蛇も攻撃的なものではないようだ。
アルの歩みは早くもなく遅くもなく、基本的にオレの歩幅にあわせた速さだ。
起伏がそれなりにある見通しのあまりよくない場所だが、気配察知を持っているオレに全幅の信頼を置いているアルの足は淀みなく前進している。
この荒地は獣の窟ほど広くはないけれど、それでもかなりの広さを誇っている。
荒地に生息している魔物もランクEで1~2人くらいのPTでもそれなりに狩れる程度の強さだが、荒地の代表格のハウンドドッグやビッグホーネットは群を成している場合が多々あるため油断していると逆に狩られてしまう危険性もある。
そのためランクE以上になると大体3人以上のPTを組んで行動することが多くなる。
ランクD以上となるとPTがほぼ必須といっても過言ではなく、ソロなどほとんど淘汰されてしまうのが常だ。
そんな中ソロでランクAにまで上り詰めているレーネさんの実力がどれほどのものかわかるというものだ。
しばらく荒地を探索すると気配察知でさっそく3匹の魔物を発見した。
アルにそのことを伝え、大きな岩を迂回して魔物達に近づくとあちらもオレ達に気づいたようで戦闘態勢に移行するために威嚇を始めている。
だが距離的にまだ30mくらいあるため一息で詰められる距離ではない。
だが遮蔽物がなくなったためオレにとって30m程度なら十分射程内だ。
3匹の魔物――大きな尻尾の骨がハンマー型になっているネズミ型の魔物スマッシュマウスはランクFの討伐依頼にあった魔物だ。
あの尻尾のハンマーで攻撃してくるので遠距離攻撃はない。
なので先手必勝。
荒地には延焼するようなものも少ないので遠慮なく初級魔法:火を使える。
初級魔法:火で攻撃するのは久しぶりな気がする。
火の矢を形成し、鏃に捩れを作り貫通力をあげたものを3本高速で射出する。
高速で飛来する火の矢はスマッシュマウス3匹の頭部を寸分違わず打ち抜き、打ち抜かれた魔物達は一瞬にして絶命したようだ。
アルが解体するために近寄っている間に、レーネさんを振り返ってどうだったか感想を聞くことにしよう。
【どうでしたか?】
くるっと踵に全体重を乗せて回ってレーネさんを見ると目を大きく開いて固まっている。
火の矢も通常の矢のサイズより大分小ぶりのものだったし、相手もスマッシュマウスがたった3匹だ。
特に驚くようなことではないと思うが……。
【レーネさん?】
【ぁ、す、すみません! その……ワタリさんは火の魔法すごく上手なんですね!】
【えっと、苦手ではないけど得意でもないかな?】
【そうなんですか!? でもスマッシュマウスを倒すのに十分なだけの威力を残し、消費を抑えた造形。消費を抑えているのに威力を残す為に工夫もしている。
ワタリさんはやはりすごいです!】
どうやらレーネさんは火の矢に施した工夫に感心しているようだ。
でもこれくらいならみんなやっていることじゃないのかな?
一応図書館で読んだ魔法関連の本にも創意工夫次第で魔法は強くも弱くもなるって書いてあったから、トレーニングでも色々頑張ってみたんだけど。
【これくらいなら魔法を使う人ならだれでもやっているんじゃないでしょうか?
MPは有限ですし、少ない消費で最大効率を求めるのは必須だと思うんです】
【確かにそれが理想です。
でも現実にそれが出来るかと言われるとなかなか難しいんですよ】
他の魔法使いを見たことがないオレは、オレ自身が施している魔法に対するイメージの工夫が普通程度のものだと思っていたがどうやら勘違いのようだった。
オレには生前の世界での様々な知識があるがこの世界――ウイユベールではそうではないのだ。
なるほど、レーネさんが驚いていたのも頷けるというものだ。
【まぁ私の魔法は結構色々違うかもしれないですけど、我慢してくださいね?】
【はい! 楽しみにしています】
基本見学で出番のないレーネさんだが、周りを警戒しているといってもやはりそこはランクE程度の魔物しかでない荒地だ。
基本暇だろうからオレの魔法で少しでも楽しんでくれたら幸いだ。
その後1時間ほど荒地を回り出会った魔物に様々な形状の魔法を叩き込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【いませんねぇ……】
【そうですね。でもまだ1時間ほどですのでこれからですよ】
【そうですね……ん?】
【誰かいますね、他の冒険者の方でしょう。では私達はこちらへ行きましょう】
気配察知に引っかかった魔物とは明らかに違う人の気配。全然強く感じない気配が4つだ。
レーネさんはすでに気づいていたようで、バッティングしないように針路変更を申し出る。
荒地はそれなりの討伐報酬が出る魔物が多いところなので冒険者と出会うこともある。
獲物の取り合いになったら面倒だし、ただでさえオレ達は子供2人と白い巨体だ。
面倒事を回避するためにもレーネさんの提案に乗ることにした。
ちなみに荒地は低ランクの冒険者にとって定番スポットとはいえ、ラッシュの街から徒歩でかなりかかるため移動に半日、狩りに半日、野宿して少し狩って帰るというのが多いらしい。
オレには転移があるので半日もかける必要もないが、荒地方面は獣の窟があるため乗り合い馬車も出ていないので低ランクの冒険者には足がないので時間をかけるしかない。
それでも人気の稼ぎ場所であるためそれなりの人が来る。
それでも荒地は広いので早々バッティングすることもないが、広さ故にたまに獲物の取り合いなんかも起こるらしい。
例え依頼を受けて来ているとはいえ現場での判断は全て自己責任だ。
譲ろうが奪おうがギルドが介入することはない。
例えそれで殺し合いになったとしてもだ。
ただ、だからといって強盗目的や獲物の奪取目的で襲い掛かったりすると罰を受けることがある。
これはラッシュの街の門で確認した犯罪チェックに引っかかるタイプのものでカードに記録されるのではなく、魂に刻まれるとかなんとか。
詳しいことは神様がうんたら~という宗教チックな何かだったが、実際にチェックで判断できる確実な記録が残ってしまうのはなかなか怖い。
ちなみに冒険者同士の獲物の奪い合いによる殺人は軽い罪かもしくは罪にならない。
両者合意の上で冒険者をやっているからだろうか。
軽い罪なら日数経過で消えたり、善行を積んだりすると消えるらしいが、重い罰だとそうもいかないらしい。
教会があるのでそこで御布施をすると消してもらえるとかなんとか本に書いてあったような気がする。
教会ぼろ儲けなんじゃないかねぇ。
その分罪を消せる神官はよくいるような欲の権化のようなヤツでは勤まらないらしい。
清貧な日常生活と善行を常に意識していなければ罪を消すほどのスキルは取得できないそうだ。
ちなみにスキルなのに消費ポイントが0で行動如何によってはスキルが消えるそうだ。
これでは典型的な教会のお偉いさんでは勤まらない。
まぁそういう人は使える人を抱えこんで利用しているんだろうけどね。
そんなわけで滅多に殺し合いにまでは発展しないまでも、他の冒険者に好き好んで近づく必要性もないオレ達は冒険者から離れるように針路を取る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
適当に点在する魔物を蹴散らしつつ、ほどなくして目的のひとつであるビッグホーネットの巣を発見した。
それは大きく盛り上がった蟻塚ような物だった。
前知識がなかったら何かよくわからなかったかもしれない。
全長3m程度で50cmくらいの大きさの蜂がたくさん出入りしている。
ちょうど蜜を集めてきた群が戻ってきたタイミングのようだ。
ビッグホーネットは普通の蜂のように単独で蜜を採取にいかない。
探索用の5cm程度の小さく機動力のある特化された蜂が見つけた場所に5~10程度の群で移動して蜜を採取してくるそうだ。
ウイユベールの花は魔物である場合もあるのでその場合は単独で採取に行くと逆に餌になってしまうのだそうだ。
行き帰りにも単独では襲ってくださいと言うようなものなので群で移動するのはメリットが多い。
ランクEの魔物達は大概が群を形成する。
単独行動をする魔物ばかりだったランクFに比べると格段に難易度が上がるが、群を形成する魔物は多いので慣れる必要性がでてくる。
ランクEからPTを組み始める人も多く、多対多の戦闘の練習にも荒地は人気が高い。
【ちょうど帰ってきたところみたいですので、蜜の採取も出来そうですしちょうどよかったですね】
【そうみたいだね。とりあえず巣の中に煙を入れて様子見かな?】
【そうですね。燻せば中のビッグホーネット達が出てくるでしょうから慌てず、対処してください。小さい蜂は煙で動けなくなりますから、ビッグホーネットだけに集中できます。
蜜の採取は倒した後にしましょう。
多くなりそうだったら加勢しますので心配いりませんよ!】
【了解です。
近寄らせるつもりはないけど、念の為気をつけてね、アル】
【畏まりました。では薪を集めてまいりましょう】
アルが慇懃に一礼し、一緒に木を集めに行く。
燻すといっても荒地にある細い木は煙木と呼ばれる木で、火をつけると煙を結構な量出す木だそうだ。
これを利用して巣に煙を入れて中の蜂達を行動不能にするんだが、ビッグホーネットは体が大きいからか効き目が薄くおびき出すくらいしか効果がない。
そのため巣に煙を入れたら討伐できたり、蜜を採取できるわけではない。ただの準備段階だ。小さな蜂も一応針があるのでまとわりつかれると面倒だしね。
アルと一緒に採取してきた煙木を初級魔法:火で少し燃やし、事前にスキルリセットで入れ替えておいた初級魔法:風で包み込む。
形状は棒状だ。
中で燃え上がる煙木から大量の煙が出てくるが風の中に包まれているため煙は充満して逃げないが、外から酸素は入ってくるようにしてある。
すぐに棒の中がいっぱいになるほど煙がたまったので巣の入り口の1つに向かって、見た目煙の棒にしか見えないソレを射出する。
巣を破壊しない程度の強さで向かっていく煙の棒が巣に着弾し、中に煙を送り込むように風が動き出す。
ここまではイメージ通りだ。やっぱり魔法はすごく便利だ。
煙が巣の中に大量に侵入し、巣のあちこちから煙があがる。
しばしの沈黙のあと、けたたましい羽音を立てて最初のビッグホーネットが巣から飛び出てきた。
先ほどの帰還時にはあのような羽音は立てていなかった。
どうやらあれは警戒音も兼ねているのか、もしくは威嚇か。
どちらにせよ、獲物が巣からでてきたのだ。
さぁ歓迎会の始まりだ。
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