幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

150,鍛冶神の御手

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 ネーシャが落ち着いたのはそれから30分ほどしてだった。
 それでもまだオレから離れたがらないネーシャの手を握ってあげながら何があったのかゆっくりと聞き出すことにした。
 また抱きついても痛くないように装備はネーシャが一旦離れた時に全て外してある。


「ネーシャ、言いたくなかったら言わなくてもいいけど、何があったのか教えてくれる?」

「……はい……赤くておっきなドワーフの人が――」


 ネーシャが震えながら話してくれたのはユユさんに彫金の修行をつけてもらっていたときに、突然赤い巨大なドワーフに不思議な世界へと連れて行かれたらしい事だった。
 そこで何年かはわからないけど長い時間怒鳴られながら強制的に修行をさせられたそうだ。

 ……なんとなくだが予想はついた。

 ユユさんもネーシャに教えていたら突然彼女が取り乱したといっている。
 つまりはネーシャは時間の流れを操作できる存在に意識を強制的に連れて行かれたということだろうか。

 ネーシャの言を信じるならばそうなる。
 というかネーシャを疑うつもりはない。なぜならオレも同じような現象を味わった事があるからだ。

 そう、創造神などの神的な存在ならこういった事が可能だ。
 この世界――ウイユベールは生前の世界とは違い、神が人に干渉してくることが本当にある。
 いやもしかしたら生前の世界でも神の干渉はあったのかもしれないが、オレの知っている限りではそんなものは眉唾物だ。神の干渉があったなどと言われても頭の心配をするだけだ。

 しかし実際に神に直接あって様々な干渉を受けているオレはこの世界でならそんなこともありうるということを知っている。
 しかし、それを確かめる術はない。
 オレが創造神という神から様々な干渉を受けているといっても、全て相手側からのアクションであり、オレがアクションを起こして干渉できたことなど1度もない。


「……ネーシャ、その赤くてでかいドワーフというのは黄金の巨大な槌を持ってなかったか?
 2匹の龍が絡み合う意匠が施されたやつだ」

「……あ、は、はい。確かに持っていました」


 ゴーシュさんの声音は酷く真剣で怖いほどだった。ネーシャと繋いでいた手がきゅっと強く握られて若干震えてしまっていたほどだ。


「何か知っているんですか、ゴーシュさん?」

「あぁ……恐らくだがその赤いでかいドワーフは鍛冶神様だ」


 ネーシャの手を握り返して怖い顔をしたままのゴーシュさんに聞けば、やはりというかなんというか案の定神様だ。
 まったく神様というやつらは本当に自由気ままに勝手なことをしてくれる。
 しかもネーシャは怒鳴り声などの怒気の篭った声にはトラウマを抱えているというのに、精神世界かどこかは知らないが年単位でネーシャに酷い事をしやがって。


「アル」

「申し訳ありません。こちらからでは手段がございません」

「……むぅ」


 以心伝心でオレが何をしたいかをしっかり理解しているアルだが、やはり手段がないようだ。
 眉根を寄せて口をへの字にした瞬間だった。
 視界の隅にいつぞやの神メール……もとい噴出しに神と書かれたアイコン――またアップデートしたのか――がプルプルと左右に揺れている。
 どこぞの無料通話アプリの真似だろうか……。

 まぁどちらにせよ好都合だ。今回ばかりは覗いていたのは勘弁してやろう。


【はい】

【ぼ、ボクのせいじゃないからね! 管轄違いだし! 鍛冶は鍛冶神の管轄で確かにネーシャちゃんのトラウマを刺激しまくってたのはどうかと思ったけど、それでも有用なスキルを伝授するためには仕方なかったんだよ……。
 鍛冶神も今回はすまなかったって謝ってたから許してあげて……いやほんとに!
 覗いてたのはすいませんっしたー!】


 神マークのアプリを視線でポイントして起動させて出ると、さっそく創造神が捲くし立ててきた。
 管轄違いだかなんだか知らないがうちのネーシャのトラウマ刺激してんじゃねぇよ。謝るならきっちりネーシャに謝れや。


【は、はいいいい】


 何も言ってないのにどうやら伝わってくれたようだ。
 なにやらドタバタした音が聞こえ、どこかと連絡を取っているみたいだ。

 創造神が連絡を取り終わった瞬間にネーシャが一瞬ビクっとしたあとまたキョロキョロとしだした。
 精神世界に連れて行かれたのかな?


【こ、これで大丈夫だと思うよ? 鍛冶神の他にも治癒を司る女神に治療もさせたから!
 そ、それじゃボクはこれで! い、いいよね!?】

【あーはいはい、ご苦労様でした……あ、あと覗きはやめろ】

【は、はいいいいいい】


 なんだか骨を折って貰って悪い気がしたが覗いてたのでその辺はチャラだな。
 トラウマの方も治癒の女神様を派遣してくれたみたいだし、これでネーシャも大丈夫かな?


「ネーシャ、謝ってもらえた?」

「は、はい! さすがお嬢様です! 驚かせてすまなかったって言っていました!
 あとすっごいすっごい綺麗な人? になんだかぽわぽわーっとした不思議な光が! とってもとっても暖かくて! お嬢様と一緒にいるみたいなとってもとっても暖かくてぽわぽわーっとしててすっごくすっごく!
 あ、あとスキルを確認するようにって!」

「そっか。それはよかった。ネーシャももう大丈夫?」

「はい! あの、怒鳴られ続けたのはすごく怖かったです。
 でも……確かにすごい人? でした!」

「まぁ本物の神様らしいよ?」

「そうなんですか! あたし神様になんて初めて会いました!」

「……ま、まぁなんだ。一件落着か? 何があったのかわからんが」

「えぇそうですね。お騒がせしてしまってすみません」

「すみませんでした、親方、師匠、トトさん」


 オレとネーシャのやりとりを驚いたように見ていたゴーシュさん達に苦笑してお騒がせした事を謝り、ネーシャにスキルを見てみるように促す。

 スキルといってもステータスには何の変化もなく、スキル取得リストの中に新たに追加されていたようだ。

 その名も【鍛冶神の御手】。

 取得に必要なポイントも0という大盤振る舞いだ。
 だったらスキルとして取得させておけばいいと思ったが、そういうものなんだろう。


「しかしやはり鍛冶神の御手か……。親父も同じスキルを持っていた。
 鍛冶神の加護を持っている事からいつかは、と思っていたが」

「まさか神様自身から手ほどきを受けて授かるスキルだとは思いませんでしたねー」

「まったくだ」


 どうやら黒狼石の短剣や月陽のネックレスを作り上げた鍛冶神の加護持ちであったゴーシュさんの師匠であり、父親でもある人が持っていたスキルのようだ。
 ゴーシュさんもどうやって取得したスキルなのかは知らなかったようで、実際に神が手ずから授けてくれるスキルだとは夢にも思っていなかったようだ。まぁ普通そうだよね。


「しかしもしかしたらこれでまったく手がだせなかった特殊進化個体モンスターの素材も加工できるかもしれませんね?
 どう? 出来そう?」

「はい、お嬢様! お任せください!
 今のあたしならきっと出来ると思います!
 あ、でも鍛冶神様に教えてもらったのは鍛冶神の御手の扱い方だけなので……」

「加工さえ出来ればあとはなんとかなる。加工後は俺に任せろ」

「はい、親方!」


 どうやら今までどうやって加工したらいいのかまったく不明だった特殊進化個体モンスター――魔結晶8つ持ち――の素材がやっと使えるようになるみたいだ。


「だが加工する前に何を作るかを決めなきゃいかんな。
 どうだ、何を作る?」

「ふふ……。実はもうソレは決めてあるんですよ」

「ほぅ」


 ニヤリ、と笑い、ゴーシュさんにだけ聞こえるように内緒話のようにオレの構想を伝える。
 その構想を聞いたゴーシュさんは一瞬驚いたが、やはりオレ同様にニヤリと笑ってくれた。


「おもしれぇじゃねぇか。いいねぇ、実にやりがいがあるじゃねぇか!」

「期待してますよ!」

「任せておけ!
 よし、ネーシャ! さっそくやるぞ! トト! ユユ!」

「「「はい!」」」


 さっそく取り掛かってくれるようで、ネーシャとランカスター一家は実に楽しそうに工房へと消えていった。

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