甘い禁断の蜜

朝飛

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そんな出来事を機に、尚昌と禁断の関係が始まった、というわけでもない。実際のところ、尚昌はあくまでも軽い冗談のつもりか、それとも母に似ている自分を身代わりにしているだけなのだろう。

 そのため、一度口付けをされて以来、確かにやたらとべたべた体に触れられるようになったり、戯れのようなキスも何度もされたのだが、それ以上先に進むことはない。キスもあくまでも触れ合わせるだけで終わるうえに、体に触れるといっても友人同士のじゃれ合いのようなハグの延長上のようなものだ。

 しかし、真面目な性格が災いして、大学生になっても女性経験がまるでなかった清和は、たったそれだけのふれあいでさえ過剰に意識してしまい、それを知っている尚昌にますますからかわれるという悪循環だ。

 そのうえ、そんな現状になったせいか、夢の内容もエスカレートした。夢が現実に合わせて変化したというよりも、夢の内容の方が現実を軽く飛び越えて過激になっている。そして、むしろ最初に尚昌に口付けられる夢を見た後に現実でも起こったことを考えると、正夢になりはしないかと思っている。

 その夢を初めは不快だったり悪夢のように思っていた清和だったが、次第に慣れてきたのか、それとも何らかの気持ちの変化が起こってしまったのか、楽しみにさえ思うようになった。

 無論、尚昌にこのことは口が裂けても言えない。

 実家に帰り、母が友人との電話に夢中になっている隙に尚昌に抱き寄せられ、いつもより長く口付けられた日の晩のことだった。

 残暑が和らぎ、扇風機だけでも十分な室温になった部屋で、清和が浅い眠りを行き来していると、ふいにその夢が訪れた。

 初めに見た夢と変わらず、まるで現実のようにリアルな感触のベッドに横たわっており、今か今かと心待ちしていると、ノックもせずに男が入ってくる。

 確かめるまでもなくその男は尚昌だが、近づいてきた男の顔を引き寄せ、じっくり眺めて確認すると、自ら唇を寄せて貪った。現実ではここまで大胆なことはできないのだが、夢の中だと思えばどこまでもしたいようにできる。

 口の中に潜り込んできた湿った分厚い舌の感触と、口付ける度にちくちくと刺さる髭を楽しんでいると、尚昌にそのまま伸し掛かってこられて服を全て脱がされた。生れたままの状態で尚昌に体のあちこちを愛撫され、素直に気持ちよさを感じて昇りつめていく。

 自分の性器から液体が噴射されるのをはっきりと感じた途端、炭酸の泡のように夢は覚めていった。薄目を開けると、カーテンの隙間から朝陽が差し込んでいる。

 下着が明らかに夢精のために湿っているのを感じる。布団から起き上がって下着を脱ごうとすると、まだ興奮が冷めやらないのか、明らかに主張している自身を目の当たりにして苦笑が漏れた。

 血のつながった叔父とのこんな夢を見て興奮する自分は明らかにおかしいのだろう。そして、戯れや身代わりとは言っても大学生になった甥っ子にキスをする叔父というのもおかしい。

 もしこれが世間一般で言う近親相姦であるとしたら、自分の想いは絶対に報われない。そこまで考えて、叔父の尚昌に対する情の意味を知ってしまい、いや、すでに自覚していたのだが、改めて痛感して、どうしたらいいのか分からなくなった。

 近親相姦であることも確かに重要なことなのだが、そもそも尚昌の想い人というのは。

 その先の答えは考えるまでもないので、思考を中断して洗濯機に汚れた下着と衣類を放り込んだ。スイッチを押して回り始める洗濯機を見ながら、洗濯のように全てなかったことにできたらいいのにと詮無いことをいつまでも考えた。
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