ほーぷ

文字の大きさ
上 下
1 / 2

11月

しおりを挟む
Nov.25.1X93

親愛なる弟へ

 朝晩は肌寒くなってきた。
毎年のことだが、冬が近づくこの季節は妙に侘しい気持ちになるものだ。
枯葉の上を一人歩いていると、小さな頃に君と家まで駆けた日を思い出すよ。懐かしいね。

 近頃、執筆活動はあまり上手くいっていない。書きたいことは山ほどあるのだけれど、うまく言葉に変換できないんだ。実際、私の頭には、もう何週間ももやがかかっている。払っても取りきれない。煙というより霧みたいなものだ。遠くを見ようと思って目を凝らしても、どこまでも灰色の景色が広がっているだけなんだ。

 ひとまず、体調を整えないといけない。
晩秋のこの街の景色は、少し寂しいけれど、夕暮れ時なんかは息を呑むほど美しい。君も一緒に来られたら最高だったんだがね。

 またすぐに手紙を書くよ。
        

しおりを挟む

処理中です...