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たからもの
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生暖かい潮の香りが鼻をかすめる。「地球が丸く見える展望台」があるその海岸は、毎年夏になると観光客で賑わうらしい。梅雨に入ったばかりの今は人もまばらだ。少し離れたところに車を停めて、海岸まで歩いた。歩くたびに足が砂の中にめり込んで、思わずよろけそうになる。
「せっかくだから展望台に登ってみる?」
僕がそう尋ねても彼女の反応は薄い。海に来たというのに、彼女は波に打たれる岩を眺めている。海に来たのなら、果てしない水平線に思いを馳せ、寄せては返す波を眺めるのが普通ではないのか。せっかく海に来たのに、彼女は何かに取りつかれたように、ごつごつとした岩を見ていた。彼女のこういう部分に、僕は段々と順応してきていた。
ごく平凡な両親の下に一人息子として生まれた僕は、人生のだいぶ序盤の方から大失敗をしていた。物心がついた頃から、目に映る全てのものに怯えていたのだ。例えば、轟々と音を立てて吹く風や、不規則に頼りなく揺れる蛍光灯の紐なんかは、僕をたまらなく不安にさせた。僕を通して見た外界は不気味にぐにゃりと歪み、いつだって恐怖の対象だった。外から手招きする大人たちをにらみ返し、子供特有の不機嫌さで威嚇した。最初の「設定」を間違えたために、僕の世界は狭く、脆く、灰色だった。成長するにつれ、僕の猜疑心は膨れ上がり、楽しそうな周囲の人々に溶け込むことは容易ではなかった。僕から見た世界は悪意に満ちていたし、形のない暴力が蔓延っていた。だから僕はより一層、自分だけの世界に深く深く潜っていった。それでも学校や習い事は休まずに行ったし、成績も優秀だった。友人からのSOSには快く手を貸したし、女性の機嫌をとる術は心得ていたので彼女もいた。周囲から求められるものには全力で応じたかったのだ。でも僕が求める安寧は与えてもらえない。裏切られる痛みは、段々と鈍化していった。そして自分だけの安全地帯に戻ると、こっそり集めた宝物をしげしげと眺めて心を慰める。何度も書き写した作者不明の詩、亡くなった祖父とのやりとりなどなど。ある人にとってはゴミでも、またある人にとっては宝物…そんなニュアンスの名言をどこかで聞いたことがあるが、僕の宝物は、僕から見てもゴミに見えることがあった。半ば腐敗してるものまである。それでもいつか「素敵だね」と言ってくれる人が現れるのを待っていた。だけど他人は、いとも簡単に僕の世界に土足で入ってくる。そして僕の宝物を勝手に査定して、こんなゴミいらないよと放り投げる。それは親も親友も恋人も変わらない。僕は、そういえば、自分の世界に鍵をかける術を知らなかった。誰かといても孤独だった。一人でいると、言葉になれなかった思考たちが、内側から脳を圧迫して押し潰されそうだった。
大学を卒業し、営業職として働き出して5年が経つ。あぁこんなものか、というのが率直な感想だ。複雑なようで単純な世界。様々な人間で構成されている社会は多重構造だなんていわれるが、その中には手抜きをする人もいれば、犯罪を犯す人もいて、それらを全部ひっくるめて「これが社会です」と差し出されたって、「あぁそうなんですね」と受け入れられる訳がない。取り残されまいと必死にしがみつくほどの価値が、果たしてこの社会に残っているのだろうか。僕の世界は色褪せているが、外界もまた、僕からすれば、色を失いつつあった。でも社会の歯車の一部として振る舞うことは、僕にとっては容易だった。毎朝起きるたびに、今日も死んでいないと思う。たまたま生き延びたから、そのまま今日を生きる。昔から自分を俯瞰して眺めることは得意だと思っていた。だが、それはすなわち、自分の現状を直視していないのと同義ではないのか。胃の辺りにずしりと何かがのしかかる。少なくとも彼女に出会うまでの僕は、確かに日々を生きながら、同時に少しずつ死んでいた。
ある日僕は、有休消化という名目で一人旅に出た。手狭なコンパクトカーで北へ向かう。関東生まれ関東育ちの僕は、東北地方には行ったことがなかった。何か美味しいものでも食べて帰ってくればいいやと思い、仙台市にある宿を予約した。ネットで観光スポットを調べると、大観音に城跡、評価の高い牛タンの店なんかが出てくる。非日常というのか。どこに行っても僕は僕自身について回るから、厳密には「非日常」ではないのだけれど、気分転換くらいにはなるだろうと言い聞かせた。気だるい体と沈んだ心が、なす術もなくベルトコンベアーに乗って運ばれていくような、奇妙な感覚だった。
宿は駅のある中心街から少し離れたところにあり、主張しすぎないシンプルな外観が、程よい存在感を放っていた。チェックインの際に夕食の予約をする。部屋まで運んでもらう懐石料理か、宴会場でのバイキングか選ぶことができた。僕は女将さんと2人きりになるのが面倒なので、迷わずバイキングを選んだ。案内された客室に入ると、爽やかな畳の匂いの中に微かな煙草臭を感じた。大浴場に寄って汗を流し、そのまま宴会場へ向かう。今はシーズンではないが、旅行客というのは常に一定数いるものだ。それなりに賑わっている。食べたいもの、というよりは、せっかくだから普段あまり食べる機会のないものを選んで皿に盛り、自分の席に戻った。隣のテーブルには女性が一人で座っている。連れがいるような気配はなく、どうやら向こうも一人旅のようだ。風呂上がりだからなのか、元々なのか分からないが、化粧っ気のない顔で、髪は雑にまとめて結ってある。年は僕と同じくらいか、少し若いようにも見える。黙々と食べている彼女の皿をちらりと見た。ドレッシングのかかった野菜と唐揚げ、卵焼き、ご飯にはちょこっとカレーがかかっている。この宿が売りにしている牛タンや海鮮には目もくれず、どこでも食べられるような平凡なメニューを選ぶ彼女は、少し異端だった。もったいないなぁと思いながら、僕はたった今アナウンスされた期間限定メニューを取りに行くために席を立った。
翌日、少し朝寝坊をした僕は、またも舌に馴染みのない朝食を食べ、のろのろと出発の準備をしていた。まだ休みはあったが、この宿は一泊しか予約していなかった。そのときの気分に応じてスケジュールを変えられるようにしておきたかったのだ。チェックアウトを済ませ、エントランスに向かうと、昨夜見かけた女性が立っている。旅行にしては少ない手荷物だ。一人旅なら誰かを待っている訳でもあるまい。少し不思議に思ったが、がさごそと車のキーを探しながら駐車場へ向かって歩き出した。
「ねぇ」
目の前を通り過ぎようとすると、唐突に女性が声をかけてきた。
「はい?」
「車で来てるの?」
「そうですけど。」
「一緒に乗せて。」
何を言っているのだろう。今どきのユーチューバーが好みそうなヒッチハイクというやつか?なぜ初対面の僕に対してタメ口で、こんなに馴れ馴れしいんだろう。彼女の言葉には、幼さと力強さが絶妙なバランスで同居していた。返答に困り、しばし間が空く。彼女はじっと見つめてくる。これもまた、ちょうど感情が読み取れない表情だ。
「どこまで…ですか?」
彼女に尋ねた。
「行けるところまで。」
意味が分からない。言葉遣いもなっていなければ、内容も内容だ。悪質な詐欺や勧誘の可能性だってある。彼女の言葉と表情は、奔放さと危なっかしさを孕んでいた。本当に移動手段がないだけなのか、彼女の真意が分からない。僕の判断にかかっている。いつだって、僕の世界を守れるかは僕にかかっている。だが僕は、開けっ放しのその世界に、またも他人を招き入れてしまった。
僕は彼女を助手席に乗せ、とりあえず海岸沿いを走った。もともとこれといった目的もない旅だったから、時間的な余裕はある。彼女はコンビニで買ったカフェオレを飲みながら、窓を開けて手を出しているようだった。
「危ないですよ。」
彼女は知らんぷりしている。
僕は思い切ってずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「聞いてもいいですか?」
「ん。何?」
「今は、何をしている、というか、その…ヒッチハイクで一人旅をしてるってことですか?」
「そう。どこかに行けたらいいなと思って。帰る場所もないし、待つ人もいないし。あてのない一人旅って言えばかっこいいかな。」
彼女が自嘲気味に微笑む。家族は?仕事は?聞きたいことは山ほどあったが、言いたくないのかなと尻込みしてしまう。同時に、こんなに図々しい相手に気を遣っている自分に少し呆れた。
休憩を挟みながら数時間車を走らせた。彼女が寄りたいという場所にいくつか寄ったが、それらはどこも観光名所からは程遠い、すっかり廃れた商店街や草の生い茂る河川敷などだった。彼女は風景を目に焼き付けるかのように、あまり瞬きをせずに見入っていた。まるで絶景を見ているようだ。会話が途切れている間も、居心地の悪い空間にならないのが不思議だった。彼女は自分の生い立ちから現状まで、意外なほどあっさりと教えてくれた。九州出身で、幼い時に両親が他界し、親戚の家で育てられたこと。大学進学とともに上京し、卒業後は派遣バイトをしながら生計を立てていたこと。親戚はみんな高齢になり、金銭的な援助はおろか、ほとんどが施設や病院に入っていて頼れないこと。貯金はほぼないが、どうしても遠くに行きたくて、こうしてヒッチハイクで旅をしていること。大体こんな感じだった。ずいぶん苦労はしているようだが、彼女の話し方はさっぱりしていて、哀愁こそあるが、辛気臭くなかった。僕も少しだけ話をした。生い立ちと現在の仕事のこと。彼女はあまり興味がないようだったので、すぐに切り上げた。彼女の生い立ちに比べれば、確かに僕のは「強烈さ」に欠けるというものだ。僕にとっては険しい道のりだったのだが、ごく平凡な家庭に育ち、収入も安定していることは事実であり、客観的には彼女の方が過酷な状況で生きていた。そういう意味では僕は「普通」なのだろうか。あれほど外の世界に恐怖を感じ、くだらない宝物を守り続けて、色を失った僕の世界。たまに物珍しいものを取り入れては、何とか色をつけようとしてもがいてきた。環境を変えたり、食べるものを変えたり、でも結局帰る場所は同じだった。彼女の生きる世界は殺伐としていたが、何でもない情景にうっとりと見入り、マックのハンバーガーを美味しそうに頬張る彼女は、ちゃんと生きていた。
信号のない、ひたすら真っ直ぐな国道を走っていると、彼女が唐突に言った。
「海岸に行きたい。」
「ずっと海辺にいるのに?」
「うん。岸まで行きたいなって。」
ぴりっとした緊張感を肌で感じながら、黙って検索を始めた。Googleマップで調べると近くに展望台のある海岸があった。年中開放しているらしい。僕はすっかり彼女の言いなりになっていた。彼女は僕の希望を尋ねることはなく、いつだって自分の要望ばかりを通した。わがままで図々しい。でも僕の世界を壊すことはしなかった。傍観するだけで何も奪っていかない。その絶対的な安心感は、ゆるりと心地よく僕を包み込んだ。彼女の世界は一見するとどこからでも入れそうなのに、角度を変えると、孤島に建てられた刑務所のような、他者を寄せ付けない雰囲気を放っていた。彼女が景色を眺めるとき、長い間閉じ込められて日の光を浴びていなかった人が解放されて、眩しそうに、そして満足気に目を細めているように見えることがあった。瑞々しさと、これ以上ない枯渇。これもまた彼女の世界で同居しているようだ。
少し離れたところに車を停めて、海岸まで歩いた。歩くたびに足が砂の中にめり込んで、思わずよろけそうになる。どこまでも広がる水平線に目を凝らす。展望台に登ったらさぞ綺麗な景色が拝めるだろうが、どうやら彼女はあまり興味がないらしい。何やら熱心に岩肌を見つめている。しばらくすると黙って靴を脱ぎ、海水に足を浸した。僕は彼女の後ろ姿を見ていた。海風に吹かれながら、絶壁に当たっては砕ける波を眺めている。彼女の気が済むまで、好きなだけそうしていればいい。それが正しいことを僕は確信していた。彼女の世界にも海水は染み込み、やがて母なる海に包まれるのだろうか。いやいや、彼女の世界が海を丸ごと取り込んでしまうかもしれない。そんな馬鹿げたことを考えていた。
喉が渇いたので、駐車場の自販機に行くと彼女に告げた。
「うん。」
彼女は小さな笑みを浮かべながら、ちらりと振り返って返事をした。
カフェオレがあれば買ってきてあげよう。
それが、僕が見た最後の彼女の姿だった。
駐車場から戻ると彼女は消えていた。しばらく海岸を歩き、車に戻って待ったが、彼女はとうとう現れなかった。その夜は念のため近くで一泊して、次の日に海岸に戻っても、彼女はいなかった。他の運転手を見つけたのだろうか。周辺の店で聞いてみたが目撃情報はなかった。もちろん連絡先など聞いていない。携帯電話を持っているのかも分からない。もう一度だけ海岸に戻った。昨日と何も変わらない景色から、彼女だけが消えた。それだけで少し海の青色がぼやけて見えた。時間切れだった。僕は一人帰途についた。
気がつくと、あの旅から1週間が経過しており、僕は自宅と職場を往復する生活に戻っていた。ふとした瞬間に彼女を思い出しては、どこで何をしているのかぼんやりと考えたが、当然答えは出ず、僕はまた日常生活の一部になっていた。元の世界に戻ってきた訳だが、以前とは少し違っていた。むやみやたらに新しい物を取り込んだり、せっかくだから、何かの縁だからと、やりたくもないことや、会いたくもない人に時間を割くことをやめようと心がけていた。宝物は腐っても宝物なのだから、誇りを持って、大切にしようと思えるようになっていた。僕は、自分の世界と外の世界の間に、うっすらと細い境界線を引いた。まだ簡単に飛び越えられるけれど、それは僕の小さな抵抗を示していた。きっと少しわがままになったし、図々しい人間になったと思う。でも、生きている感覚を取り戻しつつあった。
外回り中の昼休みは、いつもコンビニで昼食を買い、社用車の中で食べる。不安定な膝の上に弁当を置いて片手でスマホを眺めていると、ネットニュースの速報が目に飛び込んできた。「逃亡中の詐欺グループ幹部の女 出頭する」。手に布をかけられパトカーに乗り込んでいく女性の写真。紛れもない、彼女だった。
少しの間、時が止まった。脈が一拍抜けた。見間違いではないか。しかし服装も背格好も間違いなく彼女そのものだ。慌てて文章を追う。この詐欺グループは、虚偽の婚活サイトを運営し男性客をターゲットに金を巻き上げたかと思えば、高齢者を対象にした介護サービス業者を装い、同じく巨額の売り上げを得ていた。各地を転々としていたが、消費者センターに同じような苦情が相次ぎ、捜査に乗り出した警察は、経営者である女と社員に逮捕状を出していた。その後、女が行方をくらましたため、全国規模で捜索していたらしい。さらに驚いたのはその生い立ちだった。赤ん坊だった彼女は、東京都のとある孤児院の前に捨てられているところを発見され、そのまま施設で幼少期を過ごした。高校に馴染めず中退した彼女は、いつしか詐欺グループの出し子として小遣い稼ぎを始めるようになった。そこで得たノウハウとコネを利用して詐欺目的の企業を経営していた。一部の暴力団との繋がりも示唆されており、複数の風俗店が同時に摘発されていた。彼女は全ての罪を認めているとのことだ。さまざまなネットニュースであっという間に特集が組まれている。僕の知らない彼女のあれこれが、世界に垂れ流されていく。
なるほど、彼女の話はでっち上げだった訳だ。しかも犯罪者じゃないか。その気になれば、僕から金を騙し取ることも出来たはずだ。でも彼女は何も盗んでいかなかった。心配になって一応調べたが、相手が犯罪者だと知らなかった場合は、犯人隠避罪などの罪には問われないらしい。
どうして海に行きたかったんだろう。どうして出頭する気になったのだろう。どんな気持ちで僕に嘘をついたのだろう。詐欺師の彼女にとっては、息をするような行為なのかもしれない。でも、僕は答えが欲しかった。彼女の言動の一つ一つを丁寧に振り返ったが、見当もつかなかった。彼女は誰なのか、何なのか、僕はおおよそ何も知らないのだと、今さら気がついた。今ならあの番組のアナウンサーの方が詳しいだろう。僕と彼女の二つの世界は、途方もなく大きな隔たりで阻まれているようで、いつでも触れられるほど近くにある、そんな気がしてならなかった。交わることのなかったであろう二つの人生が、一瞬だけ交差した。事故かもしれないし、必然かもしれない。そんなことはどうでもよかった。ふと横を見れば、息がかかるほど近くに、誰かの世界は存在している。後に気づいたのだが、この発見は、僕の言い知れない孤独を緩和するのに大いに役立ったといえる。
海に行きたい。何となくそう思ったから彼に伝えてみた。目の前に広がる青くて丸い海は、全てを飲み込むように雄大だが、それでもやっぱり自分の罪は消えないことを、残念に思った。まだ少し冷たい海水が足に触れる。穏やかな水流によって削られた川の石は丸くなるのに、荒い海流に削られた岩肌は、あんなにもギザギザしている。私の心も同じだろうか。そんなことを思うと、目が離せなくなり、しばらく岩を見つめていた。展望台には登りたくない。高い所は苦手だ。私は、自分をわがままだと思ったことは一度もない。なぜなら私の願いは、望みは、いつだって一つも叶わないのだから。でも彼は、ありのままの私を驚くほど「そのまま」受け入れた。そして、彼のその行いは、私自身も意識していないほど深い深い場所で、私をそっとすくい上げた。何もないと思っていた私の世界には、疑念が、嘘が、裏切りが、そして絶望が蔓延っていたのだ。この数日間で実に多くのものを手放すことができた。知らず知らずのうちに執着し、自分を守るための盾にしていたそれらは、もはや何の意味もなさなかった。それで良かった。
無理やり忘れる必要のない思い出ができるなんて。自分に「感謝する」心が残っていたなんて。信じられなかった。初めてできた宝物は、永久に消えることのない光を放っていた。
時間切れだ。
もう二度と会うことはないであろう彼に、さようならの代わりにありがとうと呟いて、私は歩き出した。
「せっかくだから展望台に登ってみる?」
僕がそう尋ねても彼女の反応は薄い。海に来たというのに、彼女は波に打たれる岩を眺めている。海に来たのなら、果てしない水平線に思いを馳せ、寄せては返す波を眺めるのが普通ではないのか。せっかく海に来たのに、彼女は何かに取りつかれたように、ごつごつとした岩を見ていた。彼女のこういう部分に、僕は段々と順応してきていた。
ごく平凡な両親の下に一人息子として生まれた僕は、人生のだいぶ序盤の方から大失敗をしていた。物心がついた頃から、目に映る全てのものに怯えていたのだ。例えば、轟々と音を立てて吹く風や、不規則に頼りなく揺れる蛍光灯の紐なんかは、僕をたまらなく不安にさせた。僕を通して見た外界は不気味にぐにゃりと歪み、いつだって恐怖の対象だった。外から手招きする大人たちをにらみ返し、子供特有の不機嫌さで威嚇した。最初の「設定」を間違えたために、僕の世界は狭く、脆く、灰色だった。成長するにつれ、僕の猜疑心は膨れ上がり、楽しそうな周囲の人々に溶け込むことは容易ではなかった。僕から見た世界は悪意に満ちていたし、形のない暴力が蔓延っていた。だから僕はより一層、自分だけの世界に深く深く潜っていった。それでも学校や習い事は休まずに行ったし、成績も優秀だった。友人からのSOSには快く手を貸したし、女性の機嫌をとる術は心得ていたので彼女もいた。周囲から求められるものには全力で応じたかったのだ。でも僕が求める安寧は与えてもらえない。裏切られる痛みは、段々と鈍化していった。そして自分だけの安全地帯に戻ると、こっそり集めた宝物をしげしげと眺めて心を慰める。何度も書き写した作者不明の詩、亡くなった祖父とのやりとりなどなど。ある人にとってはゴミでも、またある人にとっては宝物…そんなニュアンスの名言をどこかで聞いたことがあるが、僕の宝物は、僕から見てもゴミに見えることがあった。半ば腐敗してるものまである。それでもいつか「素敵だね」と言ってくれる人が現れるのを待っていた。だけど他人は、いとも簡単に僕の世界に土足で入ってくる。そして僕の宝物を勝手に査定して、こんなゴミいらないよと放り投げる。それは親も親友も恋人も変わらない。僕は、そういえば、自分の世界に鍵をかける術を知らなかった。誰かといても孤独だった。一人でいると、言葉になれなかった思考たちが、内側から脳を圧迫して押し潰されそうだった。
大学を卒業し、営業職として働き出して5年が経つ。あぁこんなものか、というのが率直な感想だ。複雑なようで単純な世界。様々な人間で構成されている社会は多重構造だなんていわれるが、その中には手抜きをする人もいれば、犯罪を犯す人もいて、それらを全部ひっくるめて「これが社会です」と差し出されたって、「あぁそうなんですね」と受け入れられる訳がない。取り残されまいと必死にしがみつくほどの価値が、果たしてこの社会に残っているのだろうか。僕の世界は色褪せているが、外界もまた、僕からすれば、色を失いつつあった。でも社会の歯車の一部として振る舞うことは、僕にとっては容易だった。毎朝起きるたびに、今日も死んでいないと思う。たまたま生き延びたから、そのまま今日を生きる。昔から自分を俯瞰して眺めることは得意だと思っていた。だが、それはすなわち、自分の現状を直視していないのと同義ではないのか。胃の辺りにずしりと何かがのしかかる。少なくとも彼女に出会うまでの僕は、確かに日々を生きながら、同時に少しずつ死んでいた。
ある日僕は、有休消化という名目で一人旅に出た。手狭なコンパクトカーで北へ向かう。関東生まれ関東育ちの僕は、東北地方には行ったことがなかった。何か美味しいものでも食べて帰ってくればいいやと思い、仙台市にある宿を予約した。ネットで観光スポットを調べると、大観音に城跡、評価の高い牛タンの店なんかが出てくる。非日常というのか。どこに行っても僕は僕自身について回るから、厳密には「非日常」ではないのだけれど、気分転換くらいにはなるだろうと言い聞かせた。気だるい体と沈んだ心が、なす術もなくベルトコンベアーに乗って運ばれていくような、奇妙な感覚だった。
宿は駅のある中心街から少し離れたところにあり、主張しすぎないシンプルな外観が、程よい存在感を放っていた。チェックインの際に夕食の予約をする。部屋まで運んでもらう懐石料理か、宴会場でのバイキングか選ぶことができた。僕は女将さんと2人きりになるのが面倒なので、迷わずバイキングを選んだ。案内された客室に入ると、爽やかな畳の匂いの中に微かな煙草臭を感じた。大浴場に寄って汗を流し、そのまま宴会場へ向かう。今はシーズンではないが、旅行客というのは常に一定数いるものだ。それなりに賑わっている。食べたいもの、というよりは、せっかくだから普段あまり食べる機会のないものを選んで皿に盛り、自分の席に戻った。隣のテーブルには女性が一人で座っている。連れがいるような気配はなく、どうやら向こうも一人旅のようだ。風呂上がりだからなのか、元々なのか分からないが、化粧っ気のない顔で、髪は雑にまとめて結ってある。年は僕と同じくらいか、少し若いようにも見える。黙々と食べている彼女の皿をちらりと見た。ドレッシングのかかった野菜と唐揚げ、卵焼き、ご飯にはちょこっとカレーがかかっている。この宿が売りにしている牛タンや海鮮には目もくれず、どこでも食べられるような平凡なメニューを選ぶ彼女は、少し異端だった。もったいないなぁと思いながら、僕はたった今アナウンスされた期間限定メニューを取りに行くために席を立った。
翌日、少し朝寝坊をした僕は、またも舌に馴染みのない朝食を食べ、のろのろと出発の準備をしていた。まだ休みはあったが、この宿は一泊しか予約していなかった。そのときの気分に応じてスケジュールを変えられるようにしておきたかったのだ。チェックアウトを済ませ、エントランスに向かうと、昨夜見かけた女性が立っている。旅行にしては少ない手荷物だ。一人旅なら誰かを待っている訳でもあるまい。少し不思議に思ったが、がさごそと車のキーを探しながら駐車場へ向かって歩き出した。
「ねぇ」
目の前を通り過ぎようとすると、唐突に女性が声をかけてきた。
「はい?」
「車で来てるの?」
「そうですけど。」
「一緒に乗せて。」
何を言っているのだろう。今どきのユーチューバーが好みそうなヒッチハイクというやつか?なぜ初対面の僕に対してタメ口で、こんなに馴れ馴れしいんだろう。彼女の言葉には、幼さと力強さが絶妙なバランスで同居していた。返答に困り、しばし間が空く。彼女はじっと見つめてくる。これもまた、ちょうど感情が読み取れない表情だ。
「どこまで…ですか?」
彼女に尋ねた。
「行けるところまで。」
意味が分からない。言葉遣いもなっていなければ、内容も内容だ。悪質な詐欺や勧誘の可能性だってある。彼女の言葉と表情は、奔放さと危なっかしさを孕んでいた。本当に移動手段がないだけなのか、彼女の真意が分からない。僕の判断にかかっている。いつだって、僕の世界を守れるかは僕にかかっている。だが僕は、開けっ放しのその世界に、またも他人を招き入れてしまった。
僕は彼女を助手席に乗せ、とりあえず海岸沿いを走った。もともとこれといった目的もない旅だったから、時間的な余裕はある。彼女はコンビニで買ったカフェオレを飲みながら、窓を開けて手を出しているようだった。
「危ないですよ。」
彼女は知らんぷりしている。
僕は思い切ってずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「聞いてもいいですか?」
「ん。何?」
「今は、何をしている、というか、その…ヒッチハイクで一人旅をしてるってことですか?」
「そう。どこかに行けたらいいなと思って。帰る場所もないし、待つ人もいないし。あてのない一人旅って言えばかっこいいかな。」
彼女が自嘲気味に微笑む。家族は?仕事は?聞きたいことは山ほどあったが、言いたくないのかなと尻込みしてしまう。同時に、こんなに図々しい相手に気を遣っている自分に少し呆れた。
休憩を挟みながら数時間車を走らせた。彼女が寄りたいという場所にいくつか寄ったが、それらはどこも観光名所からは程遠い、すっかり廃れた商店街や草の生い茂る河川敷などだった。彼女は風景を目に焼き付けるかのように、あまり瞬きをせずに見入っていた。まるで絶景を見ているようだ。会話が途切れている間も、居心地の悪い空間にならないのが不思議だった。彼女は自分の生い立ちから現状まで、意外なほどあっさりと教えてくれた。九州出身で、幼い時に両親が他界し、親戚の家で育てられたこと。大学進学とともに上京し、卒業後は派遣バイトをしながら生計を立てていたこと。親戚はみんな高齢になり、金銭的な援助はおろか、ほとんどが施設や病院に入っていて頼れないこと。貯金はほぼないが、どうしても遠くに行きたくて、こうしてヒッチハイクで旅をしていること。大体こんな感じだった。ずいぶん苦労はしているようだが、彼女の話し方はさっぱりしていて、哀愁こそあるが、辛気臭くなかった。僕も少しだけ話をした。生い立ちと現在の仕事のこと。彼女はあまり興味がないようだったので、すぐに切り上げた。彼女の生い立ちに比べれば、確かに僕のは「強烈さ」に欠けるというものだ。僕にとっては険しい道のりだったのだが、ごく平凡な家庭に育ち、収入も安定していることは事実であり、客観的には彼女の方が過酷な状況で生きていた。そういう意味では僕は「普通」なのだろうか。あれほど外の世界に恐怖を感じ、くだらない宝物を守り続けて、色を失った僕の世界。たまに物珍しいものを取り入れては、何とか色をつけようとしてもがいてきた。環境を変えたり、食べるものを変えたり、でも結局帰る場所は同じだった。彼女の生きる世界は殺伐としていたが、何でもない情景にうっとりと見入り、マックのハンバーガーを美味しそうに頬張る彼女は、ちゃんと生きていた。
信号のない、ひたすら真っ直ぐな国道を走っていると、彼女が唐突に言った。
「海岸に行きたい。」
「ずっと海辺にいるのに?」
「うん。岸まで行きたいなって。」
ぴりっとした緊張感を肌で感じながら、黙って検索を始めた。Googleマップで調べると近くに展望台のある海岸があった。年中開放しているらしい。僕はすっかり彼女の言いなりになっていた。彼女は僕の希望を尋ねることはなく、いつだって自分の要望ばかりを通した。わがままで図々しい。でも僕の世界を壊すことはしなかった。傍観するだけで何も奪っていかない。その絶対的な安心感は、ゆるりと心地よく僕を包み込んだ。彼女の世界は一見するとどこからでも入れそうなのに、角度を変えると、孤島に建てられた刑務所のような、他者を寄せ付けない雰囲気を放っていた。彼女が景色を眺めるとき、長い間閉じ込められて日の光を浴びていなかった人が解放されて、眩しそうに、そして満足気に目を細めているように見えることがあった。瑞々しさと、これ以上ない枯渇。これもまた彼女の世界で同居しているようだ。
少し離れたところに車を停めて、海岸まで歩いた。歩くたびに足が砂の中にめり込んで、思わずよろけそうになる。どこまでも広がる水平線に目を凝らす。展望台に登ったらさぞ綺麗な景色が拝めるだろうが、どうやら彼女はあまり興味がないらしい。何やら熱心に岩肌を見つめている。しばらくすると黙って靴を脱ぎ、海水に足を浸した。僕は彼女の後ろ姿を見ていた。海風に吹かれながら、絶壁に当たっては砕ける波を眺めている。彼女の気が済むまで、好きなだけそうしていればいい。それが正しいことを僕は確信していた。彼女の世界にも海水は染み込み、やがて母なる海に包まれるのだろうか。いやいや、彼女の世界が海を丸ごと取り込んでしまうかもしれない。そんな馬鹿げたことを考えていた。
喉が渇いたので、駐車場の自販機に行くと彼女に告げた。
「うん。」
彼女は小さな笑みを浮かべながら、ちらりと振り返って返事をした。
カフェオレがあれば買ってきてあげよう。
それが、僕が見た最後の彼女の姿だった。
駐車場から戻ると彼女は消えていた。しばらく海岸を歩き、車に戻って待ったが、彼女はとうとう現れなかった。その夜は念のため近くで一泊して、次の日に海岸に戻っても、彼女はいなかった。他の運転手を見つけたのだろうか。周辺の店で聞いてみたが目撃情報はなかった。もちろん連絡先など聞いていない。携帯電話を持っているのかも分からない。もう一度だけ海岸に戻った。昨日と何も変わらない景色から、彼女だけが消えた。それだけで少し海の青色がぼやけて見えた。時間切れだった。僕は一人帰途についた。
気がつくと、あの旅から1週間が経過しており、僕は自宅と職場を往復する生活に戻っていた。ふとした瞬間に彼女を思い出しては、どこで何をしているのかぼんやりと考えたが、当然答えは出ず、僕はまた日常生活の一部になっていた。元の世界に戻ってきた訳だが、以前とは少し違っていた。むやみやたらに新しい物を取り込んだり、せっかくだから、何かの縁だからと、やりたくもないことや、会いたくもない人に時間を割くことをやめようと心がけていた。宝物は腐っても宝物なのだから、誇りを持って、大切にしようと思えるようになっていた。僕は、自分の世界と外の世界の間に、うっすらと細い境界線を引いた。まだ簡単に飛び越えられるけれど、それは僕の小さな抵抗を示していた。きっと少しわがままになったし、図々しい人間になったと思う。でも、生きている感覚を取り戻しつつあった。
外回り中の昼休みは、いつもコンビニで昼食を買い、社用車の中で食べる。不安定な膝の上に弁当を置いて片手でスマホを眺めていると、ネットニュースの速報が目に飛び込んできた。「逃亡中の詐欺グループ幹部の女 出頭する」。手に布をかけられパトカーに乗り込んでいく女性の写真。紛れもない、彼女だった。
少しの間、時が止まった。脈が一拍抜けた。見間違いではないか。しかし服装も背格好も間違いなく彼女そのものだ。慌てて文章を追う。この詐欺グループは、虚偽の婚活サイトを運営し男性客をターゲットに金を巻き上げたかと思えば、高齢者を対象にした介護サービス業者を装い、同じく巨額の売り上げを得ていた。各地を転々としていたが、消費者センターに同じような苦情が相次ぎ、捜査に乗り出した警察は、経営者である女と社員に逮捕状を出していた。その後、女が行方をくらましたため、全国規模で捜索していたらしい。さらに驚いたのはその生い立ちだった。赤ん坊だった彼女は、東京都のとある孤児院の前に捨てられているところを発見され、そのまま施設で幼少期を過ごした。高校に馴染めず中退した彼女は、いつしか詐欺グループの出し子として小遣い稼ぎを始めるようになった。そこで得たノウハウとコネを利用して詐欺目的の企業を経営していた。一部の暴力団との繋がりも示唆されており、複数の風俗店が同時に摘発されていた。彼女は全ての罪を認めているとのことだ。さまざまなネットニュースであっという間に特集が組まれている。僕の知らない彼女のあれこれが、世界に垂れ流されていく。
なるほど、彼女の話はでっち上げだった訳だ。しかも犯罪者じゃないか。その気になれば、僕から金を騙し取ることも出来たはずだ。でも彼女は何も盗んでいかなかった。心配になって一応調べたが、相手が犯罪者だと知らなかった場合は、犯人隠避罪などの罪には問われないらしい。
どうして海に行きたかったんだろう。どうして出頭する気になったのだろう。どんな気持ちで僕に嘘をついたのだろう。詐欺師の彼女にとっては、息をするような行為なのかもしれない。でも、僕は答えが欲しかった。彼女の言動の一つ一つを丁寧に振り返ったが、見当もつかなかった。彼女は誰なのか、何なのか、僕はおおよそ何も知らないのだと、今さら気がついた。今ならあの番組のアナウンサーの方が詳しいだろう。僕と彼女の二つの世界は、途方もなく大きな隔たりで阻まれているようで、いつでも触れられるほど近くにある、そんな気がしてならなかった。交わることのなかったであろう二つの人生が、一瞬だけ交差した。事故かもしれないし、必然かもしれない。そんなことはどうでもよかった。ふと横を見れば、息がかかるほど近くに、誰かの世界は存在している。後に気づいたのだが、この発見は、僕の言い知れない孤独を緩和するのに大いに役立ったといえる。
海に行きたい。何となくそう思ったから彼に伝えてみた。目の前に広がる青くて丸い海は、全てを飲み込むように雄大だが、それでもやっぱり自分の罪は消えないことを、残念に思った。まだ少し冷たい海水が足に触れる。穏やかな水流によって削られた川の石は丸くなるのに、荒い海流に削られた岩肌は、あんなにもギザギザしている。私の心も同じだろうか。そんなことを思うと、目が離せなくなり、しばらく岩を見つめていた。展望台には登りたくない。高い所は苦手だ。私は、自分をわがままだと思ったことは一度もない。なぜなら私の願いは、望みは、いつだって一つも叶わないのだから。でも彼は、ありのままの私を驚くほど「そのまま」受け入れた。そして、彼のその行いは、私自身も意識していないほど深い深い場所で、私をそっとすくい上げた。何もないと思っていた私の世界には、疑念が、嘘が、裏切りが、そして絶望が蔓延っていたのだ。この数日間で実に多くのものを手放すことができた。知らず知らずのうちに執着し、自分を守るための盾にしていたそれらは、もはや何の意味もなさなかった。それで良かった。
無理やり忘れる必要のない思い出ができるなんて。自分に「感謝する」心が残っていたなんて。信じられなかった。初めてできた宝物は、永久に消えることのない光を放っていた。
時間切れだ。
もう二度と会うことはないであろう彼に、さようならの代わりにありがとうと呟いて、私は歩き出した。
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