アピス⁈誰それ。私はラティス。≪≪新帝国建国伝承≫≫

稲之音

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CCⅩⅩⅦ 星々の様相と局面編 後編(6)

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 第1章。新帝国の執政の裏側(1)

 
 遠征から戻って10日がたっていた。
ぼくは、旧南宮の、来客用の小部屋で、この部屋の主である、
猛禽もうきん類?の美しさをもつ、新帝国の執政官と副執政官を待っている。

しばし待たせられているのは、同行のラファイアさんが、

『では、アマトさん。個妖精こじん的な用を先に済ませますので。』

と言って、おそらくはというより、間違いなく副執政官ルリさんのもとに、
しているからだろう・・・。

今日は、朝一番、ラティスさん帯同で、禁書館に行って、
ラティスさんの姿をふと見して、悲鳴をあげたヨスヤさんから今日の予定を聞き。
次の足で、アバウト学院に寄り、魔力学の泰斗たいとにして学園長のハイヤーン老から、
妖精史学習の10日分の書物をお借りし、
偶然講義時間の合間だった、魔力剣の名匠ジンバラ老から、
数手、の剣の手ほどきを受けた。

そして、講師室をして外に出ると、いつの間にか、子供たちが鈴なりで
ラテイスさんを待っており、

学院理事長としては、しかたないわね。』

と、ラティスさんは、ニコニコ?で子供たちと、外出?する運びとなり、
この時点で、同行者は、急遽きゅうきょユウイ義姉のところから
ラティスさんの精神波で呼び出された、ラファイアさんに変わっている。

今、ぼくにとって、見慣れた景色となりつつある、皇都中心部の街路では、
少し前と違って、腕を組んで歩くような、
距離感の近い若い男女のふたり組が多い。
そのことを、なにげなく、エリースに聞いたら、

『義兄ィ、入学式から何日たっていると思う?
学院内で、恋人たちや親しい男女の友人ができてきてるのは、
あたりまえのことだし・・。』

『義兄ィたちが、で武国へ行った結果・・・。
暗黒の妖精アホのラティスが、ラスカ・レスト・メリオの三軍を滅ぼし、
あわせて武国の防衛に協力したというのが、の事実なっているから、

新帝国、いえ皇都が、外敵に攻め込まれることは、しばらくはないという、
平和な時代の到来を予感して、告白なり、結婚の申し込みなりをして、
うまくいった人たちが多いんじゃない!?』

と、非常に怒った目で、見つめなられながら、
言われたんけど・・・。

そんなことを思っている時、

「アマトくん。おまたせ!」

と、イルムさんと、ルリさんが、扉を開けて入って来た。
いつの間にか、ぼくの横の席には、ラファイアさんが、笑顔で座っている・・・。

「雑談に呼び出して悪いわね。ま、教皇猊下げいかやカシノ司祭には、
話は通してあるから、禁書館の業務の方は気にしなくていいわよ。」

「それから今後は、10日に1度ぐらい、短時間でいいから、
ここを訪問してもらうから。」

「?」

イルムさんの言葉は、ぼくの頭に疑問の波を引き起こす。
簡単にそれに気付いたのか、イルムさんから柔らかい言葉が続く、

「建前論としては、エリースとユウイさん、特にユウイさんに、
新帝国の運営で、ありていに言えば暗部の、知られたくない話もあるから。」

「ま、一番のところは、アマトくんが、定期的にここに寄ることで、
新帝国の政策に、暗黒の妖精ラティスさんの意思が、
いえ、アマトくんの意思が関わっていると、
いろいろな人間をまどわせることかな。」

「最終的には、【影の宰相】とか、【暗闇の宰相】なんて言われて、
アマトがふたつ名を持つ人物として、歴史書に残れば、最高よね。」

「それともアマトは、やはり【予告された帝王】の二つ名は捨てがたい~!?」

と、ルリさんが軽い調子で、会話にはいってくる。

「そうよ、アマトくん。ルリの言うように、新帝国の存続への基本条件は、
この皇都にきみが居続けられて、新帝国史のひとりになれるかどうかよ。」

「いま現在、世俗的なところで言えば、旧帝国の上級文官たちを核とする良識派、
宗教的なところで言えは、二光派や原点派という人間たちが、
きみと暗黒の妖精のラティスさんを、処刑とはいかずとも、
この皇都から追放しようと、画策かくさくしている。」

「それで、彼らは目的達成のためなら、他国、たとえば王国連合との裏取引ですら
でしょうね。」

「そうね、他国のなかに、新帝国の女狐イルム執政官みたいのがいたら、
この動きを、うまく利用されてしまうわね。」

イルムさんの話の硬さが、あるレベルを超えたのを感じて、
ルリさんが、もう一度チャチャを入れてくる。

「まあ、アマトくん。わたしみたいのは、この世界にはそうはいないから。」

「イルム~。それ自分で言う。」

ふたりの美しい女性のすずしい笑い声が、大気に溶けてゆく。


第2章。新帝国の執政の裏側(2)


 「アマトくん。この新帝国が出来たことによる人々への恩恵おんけいを、
わたしは、〖広く薄く〗与えるべしと考えているわ。」

「残念なことだけど、一部の人間は、せまく厚くというのを、
ものすごく強く望むわ。
それが、国を、滅ぼすことと知っても、彼らはかまいやしない。」

「そして、多くの人間は、その動きに、引きずり込まれる。」

「だから、新帝国の制度にも、幾重いくえものわなをしかけているわけね。」

イルムさんの言葉に、ルリさんはその迷路を理解しているのか、
言葉を重ねてくる。

「だが、どんなカラクリをしても、100年はもたないわ。
いつか突破されるわよ。」

「70年から先は、わたしの責任から免除してもらいたいわね。」

楽しそうにしているイルムさんに向かって、ぼくは初歩的な質問をしてみる。

「イルムさん。〖広く薄く〗って、たとえば?」

「そうね・・・。例えば、複式会計を導入したことかしら・・・。」

「?」

「アマト、命令書に、税は売上に対してではなく、利益に対してかけると、
明記してあっただろう。」

「ええ。記帳の仕方が理解できたユウイ義姉ェが、
『小さなお店には、いいことよね。』と、感心ていました。」

ぼくは、その時のユウイ義姉の姿を思い出す。

「そして、罰則のらんには、意図的に、利益を減らし隠して
税の払いをおこたったものには、
新帝国から追放し云々うんぬんとも、書いてあっただろう・・・。」

「それは、利益のないといつわって税から逃げたものへの制裁では・・・。」

ぼくは、ふたりにあきれた目で見られるかもしれないと思いながらも、
安易あんいな言葉を返してみる。

「表向きにはね・・・。けど、本当の狙いは、小さな商店の保護・育成よ。」

「?」

「大きい商店はね、アマトくん。小さな商店をつぶすために、
たとえば、そうね・・・。
ある商品があるとするでしょう。
その商品の材料代の半分ぐらいの値段で、当初は売ってしまうのよ。
そうすれば、小さい商店はあきないができないで消えていく・・・。」

「そのあと、材料代の3倍ぐらいの値段で売って、前の損失だけではなく、
未来の永続な利益も確定させてしまうわけ・・・。」

「・・・・・・・。」

「それでは、新帝国の理念から外れ、新帝国もすたれてしまう。」

「アマト。この方法を彼らが使ったということは、意図的に利益を減らし、
税をまぬがれる行為をしたとか、わたしたちの方から強弁して、
その結果として、そのような商店は、新帝国から追放できるじゃない・・・。」

やさしく微笑ほほえむふたりに、執政の裏側と難しさを知り、
ぼくは、とても、執政官はもとより、ルリさんが期待?する
【影の宰相】も無理だと、心から思ってしまった。
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