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斎藤福寿、守咲窓華と台湾旅行する。

1 急な出発

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次の日、僕は窓華さんが作った朝食を食べていた。今日はトーストにハムエッグといういつものようなものではなく、サンドイッチだった。
「今日の朝はちょっと豪華ですね」
「へへ、そうかな?これでも呪とすももさんにありがたく思っているんだよ?」
「そうですか……」
サンドイッチはたまごサンドとレタスサンドだった。食パンの耳はそのままだったので腹ごたえがある。
「美味しいですね」
「嬉しいなぁ。楓って無口だから褒めてくれることなかったんだよね」
寂しそうに窓華さんは言った。僕と生活をするということは、旦那さんに最期まで料理を褒められることはないのだ。もう、死ぬまで旦那さんには会えない。窓華さんだって分かっていることだけど、僕はそれが辛い。スマホが鳴ったのだ。いつもは食事のときは部屋にスマホを置いているが、最近はいつ台湾に行けるか分からないからずっと手元に持っている。リビングの机に置いたスマホが鳴る。もちろん、電話口は李さんだ。
『李さんおはようございます』
『あぁ、おはよう。ところで準備できている?』
『え、今日ですか?』
僕は大きい声を出してしまう。窓華さんが気にしているように首をかしげるのでスピーカーにして会話をすることにした。
『手配が今日が最短でね。君たちにとっても早い方が良いと思って』
『そうですか』
『すももさん、私は準備できてますよ!』
窓華さんは大声で言う。このスマホのスピーカー機能は良いのだから、こんなにも大きな声で言う必要はないのに。
『そう、それは良かった。ところで俺も同伴するけど良い?部屋は別』
『僕らと李さんの部屋が違うのは分かりますけど、僕は窓華さんと一緒の部屋なんですか?毎日暮らしてますけど、一緒の部屋はちょっと……』
僕は不安そうに聞いた。だってそうじゃないか。同じ部屋なんて。
『一緒に暮らしていて同じ部屋が恥ずかしいなんてあるんだねぇ』
『それはそうですよ。同じ部屋って緊張するじゃないですか』
『呪も緊張するんだ。可愛いところあるね』
窓華さんはそう言って僕をからかう。いつものことだ。
『もちろん、君たちは同じ部屋だよ。グレードの高い部屋にしてあるから』
『いや、そういうことじゃなくてプライバシーが……』
と言いかける僕に李さんは驚きのことを言った。
『あと、旅行中は寿管士の君にも首輪つけてもらうからね。あとこれは渡したものと少し違って殺傷力があるよ』
『なんでそんなことする必要があるんですか?』
『そりゃあ、二人して逃げたりすると困るからね。火薬が入っていて、もしも不審な動きをしたら俺が遠隔操作のボタンを押してバン!だよ』
僕は李さんに信じられてしないのかなと思った。部下を信用してくれたって悪くないと思うのに。

『分かりました。僕も首輪をつけます』
『理解してくれるなら嬉しいよ。僕は隠れてずっと見ているからね』
『なんかすももさん、ストーカーみたい』
と言って窓華さんは笑った。でも僕は笑えない。だって、僕も保護人の窓華さんと同じであの首輪をつけるのだから。
『二人とも朝は食べたよね?昼ご飯は飛行機の中だよ』
『なら、すぐ行かなきゃいけないじゃないですか』
と言うと玄関のチャイムが鳴る。僕が出ると李さんがそこに居た。
「やぁ、元気にしているみたいで」
玄関でまだスマホを持って僕らを見て言う。僕らもスマホを持っているから李さんの声が二重に聞こえた。どうやら電話をしながらこちらのアパートに向かっていたようだ。僕と窓華さんは用意した荷物を玄関に持ってきた。すると李さんの部下みたいな人が車に運んでくれるようだった。李さんは今日も派手なスーツを着ている。そして、時計だって僕が見たことのないぐらい豪華なものだ。
「本当に急になってごめんね。あと旅行は一泊だからよろしく」
李さんはかばんから、僕と窓華さん専用の首輪を出している。
「自分ではめる?それとも俺がはめる?」
「自分でできますよ」
僕は首輪を自分でつけた。それはつけている感覚のないほど軽く、でも電流が流れるという怖いものだった。
「あとこれアイマスクね」
「なんで?」
「国際空港の場所知られたらやばいでしょ?例えそれが君と保護人でも」
「そうですね、鎖国しているんですもんね」
僕は玄関の鍵を閉めて、李さんの車に乗るとアイマスクをした。数時間揺られただろうか。僕は空港についた。日本に空港はなくなったと聞いたことがある。なのにここはどこなのだろう?と僕はわくわくした。窓華さんも空港があると言う事実にびっくりしているようだった。
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