たおやかな慈愛 ~私の作る未来~

あさひあさり

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竹田詩乃、斎藤福寿との日々が始まる。

4 マザーと接点がある詩乃?

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「あの、竹田さんってマザーと接点があるんですか?」
「人並み以上にはあると思うよ。だって、私の両親はマザーの管理するための国家公務員だから」
「へぇ、ご立派な方なんですね」
「だから、こういうバイトとか友達に紹介してたんだよ」
私は両親がこういう立場だったから友達が多かったのだろう。両親が普通の人だったら人は寄ってこなかったのだろうと考えると惨めだ。私は斎藤みたいに一人で生きることなんてできないと思う。やっぱりこいつは私より強い人間だ。
入った部屋はマザーの管理室だとされている。管理室といっても、ここにマザーがあるわけではない。マザーはどこにあるのか明らかにされていないのだ。知っている人は両親などの国家公務員ぐらいだ。一般的な国民がマザーを知らない。こういうバイトがあることも広まってないだろう。

「まぁ、竹田さんは分かってると思うけど、面接って言ってもヘルスメーターチェックだけだから」
「はい、前と同じですよね」
「今回は二人で働くの?二人でも一人分しか出せないけど」
「大丈夫です」
斎藤はこのやりとりを不思議そうに見ている。私はこの闇バイトで稼いだお金は全部こいつに渡すつもりだったし、それに仕送りでためたへそくりもこいつに渡そうと考えていた。私だって罪悪感はあるのだ。
「あ、男の子、斎藤君の方は国民カードで個人のチェックするから」
「ほら、この男性に国民カード出して」
国民カードは日本国民である証みたいなカードで、このカードで身分や保険証、免許などの確認ができる万能のカードだ。預金なども複数の銀行でチェックすることができるため、だいたいの国民が持っている。斎藤は国民カードを渡してチェックを受けていた。私はその様子を眺める。

「あんたさ、お金が手に入ったとしてクレジットカードの口座名誰よ?」
「多分、父さんですね」
「それで、口座番号とか分かるの?」
「いや、僕は知りませんよ」
「はぁ……」
私は大きいため息をついた。この口座に予めお金を入れて、後からごめんなさいと言う手は使えないということだ。私が斎藤の親のところにも行かなければいけない。私は親に会いに行くことは嫌だった。だって、彼氏に振られたことを思い出してしまうあから。
「それで引き落としはいつなの?」
「僕が分かると思いますか」
「そうよね、分かるはずないよね」
引き落としが終わってから補填することだってできる。でも、この課金で三0万ぐらいも使ったという行為を斎藤は親に説明できるだろうか。私もそうだからどうとか言えない立場だけど、マザーで育った平和な日本に生きる学生だ。
「この検査が終わったら斎藤の家行くよ。近いんでしょ?」
「近いですけど……」
「やっと危機感起きてきたんだね。だから、私が親に説明してあげるのよ!ありがたく思いなさい」
私はそう言うと斎藤は安心したようだった。

「二人ともヘルスメーターには引っかからなかったから大丈夫ですよ。では、この日程にお願いしますね」
そう言って男性は私に紙を渡すけれど、それが数日後だった。
「え、もっと早い日程はとれないんですか?」
「ごめんね、最短でこれなんだよ」
私はお金の工面についてどうするべきか悩む。まだ【斎藤を助ける】と選択肢が出ている。これ以上どうやって助けてやれば良いのだろうか。そこまで教えてくれれば良いのに。私は金銭面かと思った。なので、斎藤にトイレに行くと言ってから庁舎内にあるATMで私のへそくりをおろした。だって、それくらいしか私にはできることがない。ここまでよく分からない人間のために動ける私は、彼氏に振られておかしくなっていたのかもしれない。
誰かに頼りにされることで精神の安定を求めた。それが斎藤だった。私がこんなに動かなくても良い人間かもしれない。それに私がここまでするのはおかしい。だって、私はゲームとアニメを勧めただけなのだから。でも、おすすめしたアニメを見てくれたりしたことは、今までの友達にはなかったことだ。話せなかったことだったから、話せる相手ができて舞い上がっていたのだと思う。
「お二人はどれくらい働けますか?まぁ、希望に添えるとは限りません」
「三0万程度が目標ですね。あとこれは私の両親には内緒で」
「分かりました。期日は追って連絡します」
「いつもありがとう」
いつもの男性は昔から何かと私をサポートしてくれる人だ。役職とか名前は知らないけれど、こうやって世話を焼いてくれる。私の親ができないことをしてくれる。私はこの男の人のことは両親の部下なのだろうけれど、大事な人だった。
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