異世界で石に転生した件

atori

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3.振り向けばそこに

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 人の体じゃなかったんだから、せめて魔法くらいは使えるようにしてくれよな……。

 大体石魔法って何だよ。

「石化魔法ならわかるけど、他に石版は無いのか?」

 意識をさらに集中させるともう一つ見えてきた。

 石版の中に『石打撃』とあって、これもまた星ひとつだ。

 さっきの石版とは違う。
 星の中が光っていた。
 
 もしかして……。

 俺は石打撃と叫ぼうとして、やめた。
 声を出すまでも無かったからである。
 体に衝撃が走り、小さな窪みが出来る。
 地面に俺の体(石)が突き刺さっていた。

「なるほど、叫ばなくても使えたのか……」

 ……。

 地面にしっかりと突き刺さってるな。

 う~~~ん、よいしょ!

 ……。

 抜けないな……。

 やべえ、抜けねえ。

 こんな坂の中途半端なところで止まって、身動きできないとか……。

 しばらく俺は空を眺めた。
 雲が立ち込めて何も見えそうに無い。
 生き物も飛んでないし、気が滅入りそうだった。

「何とかしてくれよ……」

 せめて石魔法とやらが使えていたら、どうにか出来たかもしれないのに。

 しばらくして、足音が聞こえてきた。
 地面を踏みしめる音。
 目を無理やり水平方向に引っ張ってそれを見やると、よくわからない何かが近づいてきていた。
 
 四足で地面を歩き、全身が黒く、狼のように鋭い牙を持つ。
 だが、動物ではない。
 少なくともあんな恐ろしい生き物は俺の世界にはいなかった。

 奇怪な鳴き声が耳をつんざく。

 まるで魔物だ。

 俺との距離まであと一歩というところで、地面から地面にヒビが入る。

 裂け目が俺を中心に広がり、魔物を巻き込んで崩れだした。

 大量の土砂は、土石流となって襲い掛かる。

 俺は土砂の中に埋もれながら、また長い長い坂を下ることになった。
 
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