異世界で石に転生した件

atori

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4.謎の声

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 どのくらいの間、土砂の中で流されていたかはわからない。
 一週間ぐらいな気もするし、一時間くらいしかたってない気もする。
 とにかく、土石流から開放された。
 
 見渡すと、木々が茂る森の中だった。
 すぐ前方には、木々を無残になぎ倒して土砂が堆積している。

 荒れ地からは抜け出せたけど、森に変わったからってどうなるわけでもなかったような……。

 とりあえず転がりながら移動した。
 もちろん、石が勝手に浮いたりすることなどできはしない。
 前後を自分で揺らして、ころころと転がることしか出来ない。
 それもダンゴムシの転がる移動速度並みに遅い。

 もう一度、『石打撃』というのを使ってみたが、出来なかった。
 どうやら、先日は勢いよく転がった反動でぶつかって打撃になっただけ。
 自分の転がる動きだけでは打撃にならないらしい。


 やることもなく、土石流の場所にもう一度戻る。
 土砂の周囲を沿うように移動していくと、開けた場所に人道が見つかった。

 俺は目の前の光景に唖然とした。

 この道を進んでいたであろう荷馬車が数台。
 土石流に巻き込まれたのか、土砂に埋もれていたのだ。

 馬車の残骸は激しく損壊し、最後の一台を除いてばらばらになっていた。
 その最後の一台も荷を入れる貨物部分が半分以上がつぶれている。
 車輪はつぶれ斜めになっていた貨物の入り口にゆっくりと近づいて、中をのぞいた。

 箱の中に入っていただろう食料品や果物が散乱していた。
 よくみると、動物か何かの足跡に加えて、食料を食い荒らしたかのように、歯形がついているのもあった。
 
「そういえば、俺何も食ってないけど……食欲わかないんだよな」

 てか、どっから食えばいいかわからん。口ないし。

 睡眠欲も性欲も起こる気配がいまのところ無い。

 すると、隅っこから物音が聞こえてきた。
 ごとっ。
 墨にあった箱の中から音がして、中から謎の声が話しかけてくる。

「だれ?」
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