エレノアは世界を救えるか ~女神様と行く異世界救世旅~

なべ

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思ったより前途多難

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まず、森を抜けて町まで行こう。
私はサバイバルをしに来たわけではないんだから。

「で、街はどっちの方なの?」

分からないんだろうなー、と思いながら一応聞いてみる。
すると、意外な答えが返ってくる。

「あっちだね」

指をさした方向に何かがあったわけではない。
けど、自信は確かに感じる。

「分かるんだ」

「私、この世界の女神だからね、土地勘があるんだよ」

「土地勘……?」

なんか違うような……。
いや、間違ってはいないか……。
まあいいや、とにかく指をさした方に行こう。


それから少し進んでいると森のざわめきとは違う声が聞こえてきた。

「アンリテ、聞こえてる? この、唸り声みたいなやつ」

「え? 聞こえてないけど……」

私の気のせいなのかな?
女神のアンリテが聞こえてないなら、そうなのかも。
そう思って歩き進めていくが、その声は近くなるばかりだ。

「ねぇ、ほんとに聞こえてないの?」

「聞こえないけど……」

もうかなり近いはずなんだけどな。
そう思っていると、木の上にいた鳥が、ピィーーと森中に響くような叫んだ。
すると、聞こえてた唸り声の主がどんどん迫ってくる。
それだけじゃない。
大勢の仲間を引き連れて、囲んで来ようとしてきている。

「森の魔獣に囲まれそうだから、早く逃げよう!」

私は後ろのアンリテに声をかけるが、返事が返ってこない。

「聞いてる!?」

そう言って振り返ったところに居たのは、森の魔獣におびえている女の子(女神様)だった。

「私、魔獣、怖い」

「私より強いはずでは?」

女神様なんだし、私を最強(女神談)にすることが出来るぐらい万能なはず。
なのになぜ、魔獣に怯えているのか。
その答えはすぐに語られることになる。

「私、地上では普通の人間ぐらいの能力しかないこと忘れてた!!」

「マジですか」

「マジです」

ここで明かされる驚愕の事実。
世界に直接干渉出来ないとは言っていいたがそこまででとは。
いよいよ、ほんとに何で付いてきたんだ。

ともあれ、ここから逃げなくては。

「抱えていくよ!」

そう言って、返事を聞かずにお姫様抱っこで、一直線に逃げる。

「凄い……」

そう声が漏れてしまうほどに私の体は軽かった。
人を一人抱えていることが気にならないほどの疾走感。
追ってくる魔獣の群れは全く追いつけない。

「わぁ、凄く早い!」

興奮した様子で言ってくる。

「あんま揺らさないで、落ちるよ」

「お姫様みたい! 駆け落ちの!」

「話聞いてた?」

それはもうさっきまで魔獣に怯えていたとは思えないテンションで。
そのまま、森を抜け、草原を抜け、街の門を抜け……ることは出来ずに門番に止められていた。
私は基本何も持っていない。
こういう時はアンリテ頼みになってしまいそうだけど、頼りない事この上ない。

「何も持ってないみたいだが、どこから来たんだ? 身分がわかるものは?」

「えっと、森から来ました。 身分がわかるもの何も」

「何もないのか……。女性二人だけだから、何か事情があるのは察するが……」

早くもピンチを迎えてしまっている。
何とかならないんですか、とアンリテに視線を飛ばす。
すると、何かを察したような顔をして口を開いた。

「あの、私治癒の魔法が使えるけど……。 それじゃだめ?」

「そうなんですか! 失礼ですが、お名前を伺っても?」

「アンリです」

「ありがとうございます! 拘束してしまいすみませんでした。」

「いえいえ」


そんな会話が繰り広げられて、私たちは無事に街に入ることが出来た。
ちなみに私は全く理解できていない。

「さっきのはどういうことなの?」

と聞くと、アンリテは色々と説明してくれた。
まず、治癒の魔法は使える人は非常に限られていて、神の寵愛を受けているものだけだそうだ。
具体的に言うと、宗教国家エリアスという国の人だという事がほとんどで、その力は女神様が直接与えているそうな。
だから、その魔法が使える時点で徳が高く、敬虔な信者として扱われる。

「徳の高い?」

「そこに疑問を持たない!」
「ああ、あと人前では私のことアンリって呼んで」

「いいけど、なんで?」

「いやー、その宗教国家の国教はアンリテ教で女神の名前はアンリテだから……」

「なるほどね、そのまんまだ」

「そのまんまなのよ」


そんな話をして街に入っていくと、露店からいい匂いがしてくる。
確かに身体能力は上がって人間をやめかけているけど、お腹はしっかり減るみたいだ。
野菜、果物、お肉とかの生鮮食品から、串焼きやパンなどのすぐに食べられる物までいろいろなものがある。

「お腹すいた~」

「私も、お金ないの?」

私は当然ない。

「ないよ~」

おいおいおい。
それは流石に死活問題すぎる。
現在昼。
このまま夜までお金がなければ、野宿まであり得る。
世界を救う前に凍え死んでしまうのは勘弁願いたい。

「多少はあるものだと……」

「だって無暗にお金を持ち込んだら、市場がおかしなことになるかもだし」

「本音を言うと?」

「多少持ち込んだところで変わらないから持ってくればよかった…… というか、そこまで頭が回ってませんでした……」

「私も気が付かなかったし、仕方ないから働くしかない」

「お腹空いて働けない」

「頑張ろう」

「ぐえー」

なんだその返事……。
とにかく私たちはどうしようもないから仕事を求めて、ふらふらと冒険者ギルドに向かった。
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