3 / 12
お腹が空いたら草を食め!
しおりを挟む
冒険者ギルドとは、行ってしまえばお仕事斡旋の場所だ。
F~Sまでのランクで分けられていて、位が高くなるほど受けれる依頼も増える。
でも、ほとんどの人はDランクにもいかない。
なぜなら、D以上に上がるには魔獣の討伐をしなければならないからだ。
それFやEランクの依頼であれば基本的に植物の採集から、人手が足りない工事の派遣など比較的安全なものが多い。
もちろん、私たちはさっき作ったばっかりなので、Fランクだ。
「薬草の採取するか」
それは簡単な割に割とおいしい依頼、しかも年中やってる。
しかも、薬草を渡せばすぐにお金が渡される。
金欠の味方、薬草万歳。
「そんな地味な仕事を……」
「仕方ないでしょ、これが一番割がいいし」
明らかに乗り気ではないアンリテを連れて、私たちは薬草の生息地の森へ赴く。
道中、『疲れた……』とか『帰りたい……』『お腹空いた』などとうるさかったので、森に生えてる食べられそうな果実を水の魔法で洗って食べさせておいた。
「おいしい!これもっと食べたい!」
お気に召したようで。
それから、薬草を探すついでに食べられそうなものを探していた。
と、ここである疑問が浮かび上がる。
それは、私に毒などは効くのかということ。
目の前にあるのは薬草によく似た麻痺草。
食べると舌がしびれるなど食用には向かないが、加工することで痛み止めなどになる。
「お腹空いてるし、食べるか」
そのまま、麻痺草をかじる。
「何ともない」
舌がしびれることはなかった。
一枚の葉っぱを完食しても、何も起こらない。
そこらへんに生えている草っていう味がする。
おいしくはない
それはそうと、これで簡単な毒なら何ともないことが分かった。
でも、薬草と間違えてないかだけは確認しておこう。
「アンリテ、これ食べて」
「わーい!」
そう言って草を差し出すと、まるで餌に食いつく魚のようにニコニコでぱくっと草を口に入れる。
その後、表情が一転して苦い薬を飲んだようなものになり、その草を吐き出した。
「うわっ」
「うわっ、じゃない! すごく舌がびりびりする!」
「ちゃんと麻痺草でよかった」
「全然良くない!!」
「お詫びにこの甘いやつあげる」
さっき取っておいた果実の実。
「ちょっと許す」
そういって口に放り込んでもぐもぐ食べる。
ちょっとちょろい女神様だった。
「舌がしびれてて全然味しない……。やっぱりあんまり許さない……」
あんまりちょろくない女神様だった。
薬草を集め終わった帰り道。
「なんで私にあんなもの食べさせたの? まだ舌がぴりぴりしてるし」
「ごめんって、私に毒が聞くかどうかの確認のために食べてもらっただけ。悪意とかは一切ない」
「私をなんだと思ってるの?」
「美人で、尊敬できる女神様」
「ほーん、ふーん。許してないけど、今回は多めに見ようかな。許してないけど」
女神様は器も大きくあらせられるらしい。
何はともあれ、冒険者ギルドに帰ってきたので、依頼終了の報告をすることにした。
「これ、薬草です。確認お願いします」
「わかりました」
二人分の薬草を集めた袋を渡す。
すると、今まで笑顔だったギルド職員の顔が曇る。
明らかに困ったような顔になっていたので、こちらから声をかけることにした。
「すみません。何か不備が?」
「申し訳ありませんがこちらの袋に麻痺草が混ざっているので、その分を引いた額お渡ししますね」
そんなはずは、と思った。
似ているとはいえ薬草と麻痺草が違うのは常識だ。
この世界の住民なら間違えることはまずない。
子供ならともかく。
「すみません、こちらの不備で」
「大丈夫ですよ。このように裏の葉脈が少し紫がかっているのが麻痺草ですから、次からはよろしくお願いします」
混入していた麻痺草を一枚取って、丁寧に説明してくれる。
そして、本来であればこちらがやるはずの分別までしてもらった。
「ありがとうございました」
受け取ったのは銀貨5枚。
これくらいあれば安い宿に一泊してご飯も食べられる。
本当はもう少しお金がもらえるはずだったんだけど……
どうやら、アンリテの普通と私の普通の違いはかなり致命的らしい。
今すぐ全部を合わせていく必要はないけど、違うという事はお互いに把握しておかなくては。
この先、致命的な齟齬が出る前に。
その後、私たちは安い宿に一緒に泊まることにした。
銀貨8枚あれば朝も夜も付いてくる。
素晴らしいけど、すでにお金は心許ない。
忘れる前に、ちゃんと話しておくことがある。
「アンリテ、どうやら私たちの常識はかなり異なっているみたい」
「い、いや、あれはちょっと勘違いというかミスしただけだから。 次からは本当に大丈夫だよ! ……ごめんなさい」
「責めてるわけじゃないの。私も知ってるものだと思い込んでた私も悪い。だから、些細なことでも伝え合おうよ、私たち」
いくら戦いに強くなっても、心が読めるわけじゃない。
「優しいんだね」
「優しくはないでしょ」
それは拡大解釈が過ぎる。
「そういうとこだよ、エレノア」
「えっ……」
思わぬ反撃に言葉を失う。
そして、次の言葉を探す。
少し長くなるかもしれないけど仕方ない、これは必要なことだ。
「そうだね、人によって優しいって違うもんね。なら、優しいという言葉の定義について話し合おう」
「いや!! 疲れたので今日は寝る!」
「なら明日にしよう」
「明日も寝てる!」
「お金がないからそれは出来ない……」
と言いつつ私も疲れている。
体はそうでもないけど、心とか。
明かりを消すと、すぐに寝息が聞こえる。
おやすみ、と呟いてから私も意識を手放した。
F~Sまでのランクで分けられていて、位が高くなるほど受けれる依頼も増える。
でも、ほとんどの人はDランクにもいかない。
なぜなら、D以上に上がるには魔獣の討伐をしなければならないからだ。
それFやEランクの依頼であれば基本的に植物の採集から、人手が足りない工事の派遣など比較的安全なものが多い。
もちろん、私たちはさっき作ったばっかりなので、Fランクだ。
「薬草の採取するか」
それは簡単な割に割とおいしい依頼、しかも年中やってる。
しかも、薬草を渡せばすぐにお金が渡される。
金欠の味方、薬草万歳。
「そんな地味な仕事を……」
「仕方ないでしょ、これが一番割がいいし」
明らかに乗り気ではないアンリテを連れて、私たちは薬草の生息地の森へ赴く。
道中、『疲れた……』とか『帰りたい……』『お腹空いた』などとうるさかったので、森に生えてる食べられそうな果実を水の魔法で洗って食べさせておいた。
「おいしい!これもっと食べたい!」
お気に召したようで。
それから、薬草を探すついでに食べられそうなものを探していた。
と、ここである疑問が浮かび上がる。
それは、私に毒などは効くのかということ。
目の前にあるのは薬草によく似た麻痺草。
食べると舌がしびれるなど食用には向かないが、加工することで痛み止めなどになる。
「お腹空いてるし、食べるか」
そのまま、麻痺草をかじる。
「何ともない」
舌がしびれることはなかった。
一枚の葉っぱを完食しても、何も起こらない。
そこらへんに生えている草っていう味がする。
おいしくはない
それはそうと、これで簡単な毒なら何ともないことが分かった。
でも、薬草と間違えてないかだけは確認しておこう。
「アンリテ、これ食べて」
「わーい!」
そう言って草を差し出すと、まるで餌に食いつく魚のようにニコニコでぱくっと草を口に入れる。
その後、表情が一転して苦い薬を飲んだようなものになり、その草を吐き出した。
「うわっ」
「うわっ、じゃない! すごく舌がびりびりする!」
「ちゃんと麻痺草でよかった」
「全然良くない!!」
「お詫びにこの甘いやつあげる」
さっき取っておいた果実の実。
「ちょっと許す」
そういって口に放り込んでもぐもぐ食べる。
ちょっとちょろい女神様だった。
「舌がしびれてて全然味しない……。やっぱりあんまり許さない……」
あんまりちょろくない女神様だった。
薬草を集め終わった帰り道。
「なんで私にあんなもの食べさせたの? まだ舌がぴりぴりしてるし」
「ごめんって、私に毒が聞くかどうかの確認のために食べてもらっただけ。悪意とかは一切ない」
「私をなんだと思ってるの?」
「美人で、尊敬できる女神様」
「ほーん、ふーん。許してないけど、今回は多めに見ようかな。許してないけど」
女神様は器も大きくあらせられるらしい。
何はともあれ、冒険者ギルドに帰ってきたので、依頼終了の報告をすることにした。
「これ、薬草です。確認お願いします」
「わかりました」
二人分の薬草を集めた袋を渡す。
すると、今まで笑顔だったギルド職員の顔が曇る。
明らかに困ったような顔になっていたので、こちらから声をかけることにした。
「すみません。何か不備が?」
「申し訳ありませんがこちらの袋に麻痺草が混ざっているので、その分を引いた額お渡ししますね」
そんなはずは、と思った。
似ているとはいえ薬草と麻痺草が違うのは常識だ。
この世界の住民なら間違えることはまずない。
子供ならともかく。
「すみません、こちらの不備で」
「大丈夫ですよ。このように裏の葉脈が少し紫がかっているのが麻痺草ですから、次からはよろしくお願いします」
混入していた麻痺草を一枚取って、丁寧に説明してくれる。
そして、本来であればこちらがやるはずの分別までしてもらった。
「ありがとうございました」
受け取ったのは銀貨5枚。
これくらいあれば安い宿に一泊してご飯も食べられる。
本当はもう少しお金がもらえるはずだったんだけど……
どうやら、アンリテの普通と私の普通の違いはかなり致命的らしい。
今すぐ全部を合わせていく必要はないけど、違うという事はお互いに把握しておかなくては。
この先、致命的な齟齬が出る前に。
その後、私たちは安い宿に一緒に泊まることにした。
銀貨8枚あれば朝も夜も付いてくる。
素晴らしいけど、すでにお金は心許ない。
忘れる前に、ちゃんと話しておくことがある。
「アンリテ、どうやら私たちの常識はかなり異なっているみたい」
「い、いや、あれはちょっと勘違いというかミスしただけだから。 次からは本当に大丈夫だよ! ……ごめんなさい」
「責めてるわけじゃないの。私も知ってるものだと思い込んでた私も悪い。だから、些細なことでも伝え合おうよ、私たち」
いくら戦いに強くなっても、心が読めるわけじゃない。
「優しいんだね」
「優しくはないでしょ」
それは拡大解釈が過ぎる。
「そういうとこだよ、エレノア」
「えっ……」
思わぬ反撃に言葉を失う。
そして、次の言葉を探す。
少し長くなるかもしれないけど仕方ない、これは必要なことだ。
「そうだね、人によって優しいって違うもんね。なら、優しいという言葉の定義について話し合おう」
「いや!! 疲れたので今日は寝る!」
「なら明日にしよう」
「明日も寝てる!」
「お金がないからそれは出来ない……」
と言いつつ私も疲れている。
体はそうでもないけど、心とか。
明かりを消すと、すぐに寝息が聞こえる。
おやすみ、と呟いてから私も意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる