ギタリストの俺が今日から妖魔界で閻魔の側近?!

染谷。

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【第二話】

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 足がふわついて宙に浮いたその一瞬、今までは土だった道が木製の橋へと変わる。
 今まで朝日が登ってたのにいきなり夕方へと変わり、雪洞がぶら下がる町並みには様々な声が飛び交っている。舞台セット並みの和の最限度はもはや、京都の町に夜の新宿を重ねたようだった。
 しかし、そこで問題がある。
 何故か、目の前には人間のような見た目をしていても、メイド喫茶にしてはリアルすぎる猫耳が生えていたり、もう人間でもない亀や河童などの動物が喋っているのだ。奇妙を通り越してもう珍妙。俺はどうしたらいいか分からずあたりをキョロキョロしていると、きゅうりの模様の着物を着た一匹の河童のような化物が話しかけてきた。
 緑の肌からしてゾットするのに声なんてまるでヒキガエルの鳴き声だ。
 俺のほうが何倍カッコイイ事か…((殴

「ここでは見ねぇ顔だな。アンタ、※妖種は?見たところ、化け狐か?荷物を見るに三味線を弾く道化に化けて出稼ぎに来たのか?」

 河童は俺の周りをうろうろと嗅ぎ回り匂いを嗅いでくる。「しかし、上手く化けてるもんだなあ」と河童は関心していた。俺は、「化けてなんか居ない、人間だ!」と伝えたかったが、夢じゃなくこの状況が現実だったらどうなるか怖くて化け狐を装ってしまった。持っていた笠を深くかぶり、俺は少し微笑む。少し、コイツには芝居を打つ必要がありそうだ。

「妖種は、ご察しの通り化け狐。さすらいの旅のモノで遠くからぼちぼち来たのさ。」

 俺がそう言うと河童はずっと「顔がいい」だの「今のはかっこいい」等と俺のファンみたいなことを言っていた。バンドで得た人気はここまでにも繋がっているのだろうか?
 河童は顎に手を起きながら俺を見ると、いきなり真剣な顔つきになって言った。

「旅の者なのはいいが、ここらで最近、妖魔界と人間界を繋ぐ結界が剥がされたようで、人間が紛れ込んでいるらしいんだ。閻魔様に見つかったら、と考えると可哀想になぁ。」

「もしかして、旅してるっていうにはソイツを見ていたりしないか?」

「んー、そのような者は知らない。」

 平静を装いつつも、二言目のその言葉を聞いて俺は焦った。俺は鍵を取ろうと思って吸い込まれた先がここだからである。もしかして、あの神社がこの摩訶不思議な世界へと繋ぐ架け橋となっていたのか…。 

(でも、何故人間が紛れてたらここまでのニュースに?しかも、“閻魔様”って、あの、地獄の大王みたいなやつだよな?!)

 一番に浮かんだ疑問が自分の安否と“閻魔様”の事。きっと妖怪たちは皆知っているだろうから聞くに聞けない。旅設定ゴリ押しで聞く事にし、俺は帰ろうとする河童に問いた。

「なぁ、河童殿。俺は旅をしていたせいで色んな都市と法律や決まりがごっちゃになっていてな、ここの事を少しばかり教えてくれないだろうか?」

 俺がそう聞くと、河童は茶飲み喫茶へ行こうとそこまで連れて行ってくれた。まず知らない生物に付いていくなんて事は、いつもなら絶対に無いけど今回ばかりは仕方ない。ここの状況を掴んで、何とかもとの神社まで帰らないといけないのだ。

「いらっしゃいませ♡ご主人様!ニ名様かにゃん?」 

 店についた矢先、猫耳をふわふわさせた秋葉原にいかにもいそうな丈の短い色とりどりのメイド達がお出迎えしてくれた。なんとも、河童の行きつけらしい。猫娘?達が見たいだけなのだろう。ずっと河童は辺りの美女を見てニヤニヤしていた。

「ほぉ~、ここの娘は如何なるときも美麗だ!狐、お前もそう思うだろう?」

 河童にそう聞かれ咄嗟に「そのとおりだな」と返事をしてしまった。確かに可愛い人は何人かいるが、やけに耳としっぽのリアルさが猫娘ということを強調して思わせ、少し残念だ。
 河童は俺と二人分のだし巻き卵を頼んでくれた。「今晩は俺の奢りだ、」と河童は指で鼻をこすって恥ずかしそうに言った。縁というものは大切なんだろうな…。
 そして、河童の雑談に付き合っていると、河童はだし巻き卵を頬張りながら、俺にこれからどうしたいかを聞いていた。俺はまだ緊張しているせいで、だし巻き卵の出汁の効いた味やふわふわさが感じられずにいたままそれを飲み込み答えた。

「俺は帰るべき実家があるのだが、生憎そこまで行く道を知らなくてな。お前と出会った橋にも関所のようなものが無かった。ここに詳しい者は誰だろうか。」

 河童はキョトンとした様子で俺を見た。

※妖種→妖怪の種族、種類
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