禍羽根の王 〜序列0位の超級魔法士は、優雅なる潜入調査の日々を楽しむ〜

しののめ すぴこ

文字の大きさ
39 / 62
魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科。

晩餐④

しおりを挟む



「——さぁってと。そろそろ部屋に戻るか」

 キリの良いところで切り出した和久に続いて、ユーリカも頷く。

「そうね。明日に支障があったらダメですもの。また、機会を見つけてお食事会しましょ」
「あざっす! けど、そんときゃナイフとフォークを1本ずつでお願いします」
「……デザートだけで良いってこと?」
「あはははははっ。そうきますか!」

 見当違いのユーリカに爆笑する和久。けれどユーリカの気持ちもわかる。和久が意外にも甘いモノ好きだとわかったのは、密かに一番の収穫だ。

 全員が席を立ち、玄関まで移動したところで、そういえば副会長の姿を全く見なかったことに気付いた。累の中で、従者といえば常に側近くにいるものだという認識があったから、とても意外だ。

「そういえば、副会長は……」
「あぁ、ごめんなさいね、顔も出さずに。夜は自由にしてもらってるのよ。一応冬馬も、紺碧校の副会長であり、特別棟に一部屋貰ってる学生なんですから」

 私の世話ばっかりしてて成績が落ちたんじゃ、本末転倒でしょ?
 そう笑うユーリカは、冬馬のことを大切に考えているのがわかる。ただの従者ではなく、同じ学生として接したい気持ちがあるのかもしれない。

「それにきっと今は、1人で訓練でもしてるんじゃないかしら? 冬馬って、努力してるところを見せるの、凄い嫌いらしくてね」
「あ、俺もその気持ちはわかりますよ。基礎的な魔法で失敗してたりすると、凄い恥ずかしいし」
「和久もそうなのね。私はどっちかというと、誰かに相手してもらいたいタイプなんだけど。……ま、そんな感じだから、話があれば明日でいいかしら?」

 もちろん、何の問題もない。まだ直接会話したことが無かったから、この機会に挨拶でも、と思っただけなのだ。

「はい、じゃあまた明日、よろしくお願いします」

 累がそう返答すると、待機していた使用人が、丁寧に扉を開けてくれた。

 礼を言いながらその扉をくぐったところで、廊下の隅に立つ、見慣れた細身のシルエットに気付く。

「……スズメ?」
「お帰りなさいませ。お迎えに上がりました」

 ハイウエストのフレアスカートを翻して、さっと近づいて来たのは、説明するまでもなく累の従者であるスズメだった。お手本のような綺麗な立礼で主人を出迎え、すぐに廊下の端へと避ける。

「迎えって……えぇと、この距離で?」

 累の部屋までは、ここから数十歩程度。なんといっても同じフロアなのだ。

「何か問題が?」
「何もございません」

 一片たりとも表情を動かすことのないスズメに、早々に折れた累。これは無理だ。
 きっと昼間、揶揄い過ぎた反動なのかもしれない。そう考えれば、この怜悧を装う表情だって可愛いものじゃないか。

 突然現れた累の従者を伺うように、こちらを見ている3人に向き直った。

「えぇと、従者のスズメです」
「本日は累様の為に、このような場を開いて頂き、誠に感謝しております。今後とも宜しくお願いいたします」
「まぁ、峯月くんの従者、凄い愛らしい子なのね……。いいえ、こちらこそ気が利かなかったわ。本来なら、お送りする者をきちんと用意すべきでした。次からは安心してちょうだいね」

 貴族であるユーリカが、さも当然の配慮を欠いたとばかりに謝ってくるが、念のため言おう、ここは学校の寮だ。
 どれだけ過保護なんだよ、と和久の呆れている空気がありありと伝わってくるのが痛い。累だって同意見ではあるのだ。……もう慣れたが。

「いえ、本当にお気遣いなく……。じゃあ、お先に失礼します。今日はご馳走様でした」
「えぇ、またね。明日は全力で基礎トレーニングに励んでちょうだい」

 スズメを伴い帰ろうとする累に、にっこりと完全無欠な笑みを浮かべたユーリカは、至極適切なアドバイスをしたのだった。

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ! 「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。 だが、それは新たな伝説の始まりだった! 「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」 前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる! 「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」 仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。 一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを! 無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...