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逮捕当日
しおりを挟む「身体検査開始!」
「了解!」
耳を劈くようなけたたましい複数人の声が聞こえる。堪らず顔を顰めた。威圧という目的もあるのだろうか。音楽で例えるなら横型アクセントというより縦型アクセントだ。横型アクセントは音の減衰を伴う。つまり尻すぼみするのだが縦型は違う。減衰を伴わない音で寧ろクレッシェンド気味な表現だ。最も作曲者の性格によって都度解釈が異なるため、あくまで一般論だが基本的にはそのように解釈される。だが点ではなく面で圧してくるような威圧感があるからスフォルツァンドの方が近いかもしれない。とにかく圧迫感のある響き渡る掛け声だった。
時刻は18時を少し回った頃である。場所は○県△警察署内部の留置施設。私は警察に逮捕され同施設の留置場へと身柄を引き渡されていた。
留置施設は警察の取調室を出てドアを2つ隔てたほど近い場所にある。留置場内には4つの独房、監視台とシンクが各1つ確認できる。物珍しさに横目で施設内を見渡していた私に声がかけられた。
「まずは目を見せてください。」
指示に従い留置担当官を見据える。ギョロリとした目は鏡のように私を映しており、そこには不愛想でいかにも面白みのない人間が佇んでいるのが見えた。目の確認が終わると続いて鼻の中、そのまま口の中、耳の穴といった顔の箇所を丹念に検査された。
「次は手を壁について足を肩幅に開いてください。」
続いてボディーチェック。担当官の手が頭頂部に触れ、そのまま首回り、左右の腕から手先、胸部、シャツの中、下半身、下着、足の裏、留置所貸し出しのサンダルの裏に至るまで確認が行われた。
「身体検査異常なし!金探開始!」
続いて金属探知機を用いた検査に移る。私は先ほどと同じ体制のまま頭部からサンダルまで同様の順番で検査を受けた。私は嘆いたり取り乱したりするようなことはなく黙って検査を受けていた。尋常ならざる状況であったが私はこの時どこか他人事のように感じていた。警察関係者が執り行う業務を身をもって体験することは初めてのことだったので担当官の一挙手一投足にわざわざ感心し、担当官の真摯な眼差しにもまた畏敬の念を抱いた。これは心理学でいう逃避行動の現れだったのかもしれない。
「異常なし。それでは部屋まで案内するので付いてきてください。」
金属探知が終わったため壁に付けていた手を離し担当官に付いて行く。案内された部屋は奥から数えて2番目の独居房であった。冷房直下で体に悪そうなポジションである。私は部屋を見渡す。白色を基調とした空間であった。部屋の壁と天井、さらに檻が白一色である。床には黄緑色の畳が三畳だけ手前に敷かれており、その奥はわずかに黄土色のフローリング床のスペースがある。扉は格子状の太い金属製柵と網状の細い金属製柵を組み合わせた構造でところどころ塗装が剥げてくすんだ銀色になっている。壁は少しひんやりとしていて硬かったが、表面はなめらかで見かけ上の硬さを感じさせない造りだ。また部屋の背面には柵状の窓が備え付けられている。部屋は横2.5メートル、奥行き3メートル、高さ3メートル程度の大きさで正面から見据えて左奥に排泄スペースが扉を隔てて設置してあった。
白は混じりけのない色なので純粋、清潔、神聖といったイメージがある。私のようなものを入れる場所としては中々に皮肉が効いている。白は黒を強調する。少しでも白に中てられ、自分の黒さを自覚しろということだろうか。それとも何もないというイメージで社会から隔絶した空虚な存在であるということを暗示しているのだろうか。少し部屋を見まわし、そんな印象を持っていると担当官から声がかかった。
「部屋の設備を説明をします。奥の個室はトイレになります。使用した後は壁にある丸いボタンを押して水を流してください。手洗い用の水もボタンを押したら一緒に出てきます。もしトイレットペーパーが必要になった場合は声をかけてください。そうしたらトイレットペーパーをこちらで用意するので必要な分だけ取って使ってください。あと余ったトイレットペーパーは取り置きできないので、すべて流すのを忘れないでください。部屋の説明は以上です。それと夕食が用意できているのですが、食事前に手を洗いますか?」
警察に連行されてから10時間、まだ手を洗っていない。そのため現在私の手は細菌がモッシュを起こしているに違いない。ライブ会場にはあらゆる菌種が大挙して押し寄せ仲間作りに励んでいることだろう。もしこんなところで食あたりでも起こしたらどうなってしまうだろうか。経験したことがあるので断言するが、腸炎の際はあまりにも頻繁に波が来るのでトイレットペーパーを補充するその刹那でさえ命取りになるのだ。トイレットペーパーを都度お願いしている暇などないであろう。そのことを考えると身震いしてしまう。手洗いの提案を二つ返事で受けた後、二人の担当官がドアの前までやってきてそのうち一名が開錠に取り掛かった。錠は3つあり、その内2つはスイング式打掛錠のようだった。2つ金属製の打掛錠を外し終えたら担当官が胸元にしまっていた鍵を使い最後の錠――シリンダー錠――を外し扉を開けた。ガコンという無骨な金属音が大きく鳴り響く。サンダルを履き二人の担当官に挟まれながら留置場内の奥にある水場へと向かう。流し台はおそらくステンレス製であり蛇口が3つ並んでいる。シンクの上には歯ブラシとコップを収納する棚が置かれ、部屋番号が振られている。
「手洗いが終わった後は、後ろに掛けてある手拭き用のタオルを使用してください。それが終わったらシンクに飛び散った水を流し台専用のタオルで拭いてください。」
汚した部分は自分で清掃するというのは当然のことではある。何となく新人研修を受けているような気分になった。忘れたらおそらく怒られるだろう。ここを使う際はタオルで拭くことを忘れないようにしようと心に刻み込む。大抵の人は心に刻むまでもない内容だと感じるだろうが、残念ながら私はおつむが良くないのだ。何かを覚えて実行する際は単純なことでさえ頭の中で復唱し、実際の動き方をシミュレートして心の準備をしておかないと何故かぎこちなさが出てしまう。過去を振り返っても準備をしておかなければ、その特性故に馬鹿にされることが時々あった。こちらは頑張っているのにそのぎこちなさを話題に挙げられることは許し難かった。とにかく私は悪気がないのに他人から蔑まされることに対する忍耐がなかった。
部屋に戻った後は食事の時間となる。部屋の前面に設置されていた差し入れ口にえんじ色の弁当箱と箸、水入りのコップが差し入れられる。弁当は暖かかった。中にはきんぴらごぼう、炒り卵、から揚げ、白米が入っている。好みで購入する食材が偏っている普段の食事よりも栄養バランスは良さそうだ。味は塩気があり濃く感じたが、概ね美味しく食べることができた。刑事施設は冷や飯であると刷り込まれていた私にとってはいい意味で衝撃である。けれども、水に関しては温いうえに地域柄なのか多少の塩気を感じあまり美味しくなかったのだが。
食事を終えた後は弁当箱とコップを差し入れ口に戻した。場内のスピーカーからは歌謡曲が流れている。80年代くらいの曲だろうか。中学生時代に知り合いがよく人目をはばからず熱唱していた曲と同じものだ。私は歌うことが嫌いだが音楽鑑賞は好きである。聴くのは専らクラシック音楽ばかりのため歌謡曲には疎いが、フレーズや和声等の音楽構成に着目して聴けば耳馴染みのない曲も面白いものだ。少しは音楽でも楽しもうと思っていたところ再び担当官から声がかかった。
「寛いでいるところすみませんが、時間割を説明させていただきます。これから20時に歯磨きと洗面、それと布団を敷いてもらいます。そのあと21時からは消灯になるので大きな音を出さないように注意してください。起床は7時です。起床後に掃除などをしてもらうのですが、細かいことはまたその時にお伝えします。あと留置場内で新聞をとっているので見たいときには言ってください。それと留置所内の本を貸し出すこともできるので読みたい場合はお伝えください。」
20時まではまだ1時間以上あった。音楽鑑賞をするのもいいが、新聞を読んで暇をつぶすことにし担当官へその旨を伝えることにした。他の人も見るため一人当たりの持ち時間は30分だそうだ。一面ニュースから政治欄、経済欄、スポーツ欄に目を通していく。時間制限があるため社説や投稿者欄は読み飛ばした。普段はネットニュースで興味のある記事にしか目を通さないこともあり、背景や因果関係がつかめない記事もいくつかありもどかしさを覚える。最近はインターネットの普及で気軽に情報を手に入れられるが知識が偏ってしまうことはいただけない。自分の意思で情報を集めることは悪くないが、ある側面で見れば質の悪いことだ。受動的ならまだしも能動的に情報を手に入れているので記事の内容を妄信しやすい。取捨選択の要素があるため知らず知らずのうちに愉悦を感じるようなニュースだけで自分の周りを固めてしまう。私の場合は何かにつけて政治家の悪事ばかりを追っていた。現状の不満を政治批判により慰めていたのである。政治の功罪を見ずに罪ばかり注視していた。その姿勢がもたらした結果は、現在新聞記事に悪戦苦闘するという形で顕在化している。また、新聞を読み進めるうちに、一点気になったことがある。それはいくつか切り取られた記事があるということだ。後でわかったことだが、その行為は被疑者のプライバシーを守るという観点から行われているそうだ。当然だが留置場には人の出入りがある。中には新聞に掲載されたような人が入ってくることもあり得る。そのような場合、同じ留置施設に入れられた者の素性や事件内容が類推できてしまうのだ。他には事件の共犯者の情報が載っていた場合、被疑者に無用な情報が入り取り調べに支障を来す可能性があるため、それを防ぐ目的があるようだ。いずれにせよ留置場ではこの類のフィルターを通した新聞を与えられる。最も当時の私はそのような背景を知る由もないわけで、ただただ疑問を膨らませていたが。
時刻が20時を回ると就寝準備に取り掛かる。寝具室に案内され、布団一式と枕、シーツを取り出し独房に入れ、その後は歯磨き洗面だ。
「歯ブラシとコップは右上の棚に置いてあるのでそれを使用してください。歯磨きが終わったら顔を洗っても大丈夫なので洗いたい場合は洗ってください。時間は5分なので、5分以内にすべてを終わらせるようにお願いします。」
5分で歯磨き洗面とは随分と短い時間設定である。普段私は歯磨きを始めると10分近くかかるため非常にシビアであると感じていた。5分間の経過はストップウォッチで見せてくれるため、幸い残り時間は把握できる。流し台をタオルで拭く時間を考慮に入れると4分半ほどで顔洗まで終わらせる必要があるだろう。歯間を丁寧に磨く暇はない。せめて歯周病で歯茎が下がってこないように歯と歯茎の境まではしっかり磨くように試みた。残り時間90秒で歯磨きを終えたが、思いの外口をゆすぐのに手間取り後の残り時間は60秒程になっていた。これでは丁寧に洗顔する余裕もなく、顔を1回だけ乱雑に洗い洗顔を終わらせざるを得なかった。結局シンクを奇麗にしたときには残り時間は5秒もなかったためかなり慌ただしい時間となってしまった。今までは意識したことさえなかったが、口をゆすぐという行為に30秒も時間を割かれるということは意外な発見だ。こんなことが無ければ生涯わからずじまいだったかもしれない。次回は残り2分時点で口をゆすぐように時間調整をすることを念頭に置きつつ部屋に戻ることとなった。時間に縛られるというのはやはり苦痛である。今後はこのような場面が訪れても苦しまないように是非とも「あと5分だけ」というフィクション御用達の時間操作を試みる呪文を習得しておきたい。
部屋に戻った私は就寝準備に取り掛かるがその際も不便を強いられた。まず敷布団と掛布団をカバーに入れるのだが、なかなかに不親切な造りのだ。カバーはフタをハサミで切り取った封筒のように、長方形の短辺のうち片方だけ開くようになっている構造であった。布団という手紙を郵便封筒に詰めるような作業だと思ってもらうといい。半分くらいまでは腕が届くので問題はなかったが、それ以降は骨が折れた。布団カバーの端まで腕が届かないため靴下を引っ張って履くようにカバーを引っ張りあげるか、布団を尺取り虫の如く反り返らせてから伸ばす伸縮運動によりカバーの深部に到達させるしかなかった。それはもう無理やり布団を詰めるという結果を導いた。その作業を終えるだけで10分ほど費やしてしまい、当然のように無理やりシーツに入れられた布団はシワクチャで起伏を形成したため寝心地は酷いものであった。小人が封入する時はこんな思いをしているのだろうか。わざと使いにくいものを支給されているのではないかとも憤慨したが、私がここにいることは因果応報なのだ。この仕打ちは必然的なものであると考え何とか自分を納得させるに至った。
寝具の用意をし終わり、あとは消灯を待つべく布団に潜ってじっとしていた。掛布団はこの季節にしては分厚い。少し暑かったため長袖を脱いでおいた。天井は白色で、デザインに関してはよく学校や事務所に使用されている無作為に細かい穴が掘られているような天井だった。トラバーチン模様というらしく、ビスを目立たなくするとともに吸音効果が期待されて採用しているらしい。他には火災報知器か監視カメラなのか見当のつかない円筒形が見える。監視カメラは設置されているのだろうか。そう思うとこの恒常的に管理されているという環境に嫌悪感を覚えていた。「ビッグブラザー、イズウォッチングユー」。1984年ではないはずなのだが。
私は辛い思いをするとふと考えてしまうことがある。苦しむということが生まれてきた理由なのだろうかと、生きることは苦しむことなのかと。そして私はこの命題を真であると思えてならないのだ。そのため今私を照らしているのはLED証明から放たれる物理的な光だけだ。
「消灯です。」
部屋の電気、加えて独居房と看守台の間の通路の電灯が消え、代わりに室内備え付けの小さな電灯が点灯し今度は個室を電球色に染めた。やることもないため寝ようと思っていたが、21時という早い時間にはなかなか寝付くことができなかった。なんとか寝付こうと目をつむっているが、時々人の気配を感じたり歩行音や紙のすれる音などのため集中がしばしば乱される。担当官は夜勤体制で番を行っているようだった。看守台で書類整理をしたり、時々部屋の中を覗きに立ち歩いたりしているのだ。集中が乱されるので私は無理に寝ようとすることを諦めた。
子供が逮捕されたという報せを受けた時親は何を思うのだろうか。悲嘆した末激昂して勘当という結果をもたらすのだろうか。その時は大海に漂う藻のようになり、願わくば未来永劫輪廻の環に入らないことを祈ろう。私という個人は因果なものだと思う。生きる上で苦痛は必ず訪れるが、幸福は必ずしも約束されるものではないと信じて疑わないのだから。そして二度と生を受けたくないと本気で思っているのだから。私の不幸はこの思考を修正できなかったことにある。
それにしても長い一日であった。私の思考は徐々に今日の出来事へと移っていった。
今朝は天気良好、朝の気温もさして不快感を覚えるようなものではなかった。枕元で充電していたスマートフォンを取り午前6時前に起床したことを確認した。出社時間は9時半のため十分な余裕がある。眠気は大してなかったので出勤時間までネットサーフィンをして退屈を紛らわすことにした。気になる政治ニュース、経済ニュースに目を通した後はもっぱら解説系の動画を見ながら寝転がっていた。エネルギー消費の激しくない仕事についているため、節約もかねて朝食は普段食べずに済ませている。
その日は燃えるゴミの収集日であったので8時前に一度ゴミ収集所へ向かった。その時間にはなると日が高くなっていたため結構眩しくなり気温も上がっていた。だが地域柄風のよく通る場所であったため、体感温度に関してはあまり高くならないところがここの利点である。ゴミ出しを終えた後は家に戻り再びネットサーフィンをしていた。
ピンポン!
朝8時過ぎのことである。突然インターホンが鳴った。こんな時間に誰だろうか。近所の人か、それとも……。一瞬思考が散ったが、すぐある可能性に思い至る。同時に血液が冷えるのを感じた。私は脈が速くなっていることを自覚しながら、訪問者を確認するためテレビドアホンに向かう。そこには見知らぬ男性が4名映っていた。全員目つきが鋭い。決して目つきが悪いという意味ではない。何と表現するのが適切なのか定かではないが、とにかく白目と黒目の明暗の差がハッキリしており、鮮やかな色彩を放っているのだ。端的に言えばギラついている。それに比べると私が普段接する人間は目がくすんでいるように思える。服装の方はフォーマルファッションの長袖とスラックスで統一されている。
警察だ。私はそう判断するのに大して時間を要さなかった。心当たりならある。むしろ警察が来るのは遅かったと感じているくらいであった。少し気持ちを整理して施錠していた玄関扉に手を伸ばそうとした。するとドアを乱雑に叩く音が鳴り響いた。
「いらっしゃいますか?」
返事が遅いと思われたのか、ノックの後に声がかけられた。私はあわてて扉を開ける。
「朝早く申し訳ありません。私達△警察署のものなのですが、こちらは□さんの自宅で間違いありませんか?」
――はい。そうですけど。
比較的背の低い男性が話しかけてきた。他の男性は黙っている。
「警察が来るってこと、何か身に覚えはある?」
――……あります。
覚悟は決めていたつもりであったが、返答する際少し逡巡してしまった。
「そう。この家に捜査令状出てるから一緒に内容の確認してもらえるかな?」
刑事は持っていたクリアファイルから書類を取り出す。捜索差押許可状と記載されている。
「これね。裁判所の方からもちゃんと許可いただいてるし、有効期限も問題ないことを確認して。それとあなたの名前と住所も間違いない?」
――はい。間違いありません。
「じゃあ悪いけど家に上がらせてもらうからね。」
言葉では悪いと言いながらも無遠慮な様子で4人の男が上がり込んできた。仕方なくリビングに案内する。
「まず、差し押さえをする上で同意書に署名してもらいたいんだけどいいかな?」
はいかイエスというネタを彷彿とさせるような質問だ。ここで断るほどの茶目っ気はない。了承する以外に選択肢はなかった。男は署名の意思を確認すると書類を取り出し説明を始めた。
「差し押さえする物はさっきの捜索差押許可状にも書いてあった通りだけど、念のためもう一度確認しておいて。」
差し押さえるべき物という項目に携帯電話、カメラ、犯行時に着用していた衣類の特徴などが記載してある。書類に目を通していると事件について質問が飛んできた。
「さっき身に覚えがあるって言ったけど何やったの?」
――無断で他の人の家に上がり込みました。
「そうなの。他に何かやった?」
――カメラを仕掛けました。
「そのカメラはどこにあるの?」
わかりきったことを聞いてくるんだな。と私は感じたが、返答を続けた。
――私の手元にはありません。仕掛けたカメラは回収できていないので。他の人の家にまだあるか、警察の方が持っていると思います。
「うん。確かにウチで預かってるカメラがあるね。それで他にも事件に関わるものを探しに来たんだけど部屋の中を案内してもらってもいいかな?」
そのようなやり取りがあったのでリビング、寝室、風呂、トイレと部屋を案内し話を続けた。
「ところでどうやって部屋に侵入したの?窓から?それとも合鍵とか?」
ここには詳しい侵入方法を記載しないが、刑事には正直に詳細を伝えた。嘘などつく理由はない。
「差し押さえしたいのはいくつかあるから案内よろしくね。まずは携帯、それとカメラ購入時のレシートとか付属の説明書はあるかな?あとはいくつか服を持っていきたいんだけど、白いTシャツと茶色っぽいズボン、あとグレーで裾部分がゴム製になっているズボンは心当たりあるかな?」
私は刑事に付き添われながら次々物品を集めて差し出した。比較的若く見える男性が、差し出した物品の内容を細かく何かの書類に記載している。緊張のせいか喉が何度か乾いたため刑事に給水の許可を取りながら作業にあたった。
「あとは写真をいくつか取らせてもらうからよろしくね。あなたにも写真に入ってほしい時があるからその時は協力してね。」
カメラは背の高い男性が撮影している。すべての部屋に入りあらゆる角度から写真を撮っていた。差押え品に対しても撮影を行っていたが、その際には差押えする物を指さしている私の手も一緒にカメラの被写体となった。
「部屋の中はとりあえずこれで大丈夫だ。あとは念のため車と倉庫の中も調べたいから鍵を持って一緒に出てきてくれる?」
室内を調べ終わった頃には時間が9時を回り始めていた。外に出た後は車と倉庫も案内したが、差し押さえるべきものはなかったようで写真のみの撮影となった。外に出ているとういこともありそのまま犯行現場の確認に移る。近所の住宅に侵入していた私は侵入方法についてジェスチャーを交えながら刑事に説明した。一通り説明を終えた後は侵入した住宅を背景に私を映した写真を撮りたいと申し出があったため、再び写真撮影が開始された。この時の気分はまさに虚無と言うべきものであった。これといった感情など湧いてこず、シンプルに指示されたことを遂行するだけだった。
「じゃあこっちで預かったもののリストが出来上がったみたいだから、間違いがないか確認してもらえる?」
先ほど若く見える男性が書類に記載していた内容だ。スマートフォンの機種や色、カバーの色等特徴が詳細に記載されたリストを実物と見比べながら確認していった。結局ズボンとTシャツ、機械類など計10点ほどが押収対象となった。記載に誤りはなかったため署名して書類を手渡す。
「署名終わったね、お疲れ様。後で物品は返すことになると思うけど、何を預かったのかを見返せるように書類の控えはリビングの机に置いておくね。じゃあ悪いんだけどこれから一緒に警察署へ行って事情を聞きたいから荷物とかの準備してもらえる?」
私は黙って冷蔵庫に保管すべきものをしまい、外出用の服に着替え直し準備を行った。まだ逮捕するとは言われていなかったが、逮捕されることなど分かりきっていることだった。これからここに戻ってくることはあるのだろうか、またそれはいつになるのだろうか。冷蔵庫にしまった野菜炒めは腐ってしまうのだろうか。もっと優先して考えるべきことがあるに違いないのだが私はつまらないことばかり考えていた。しかしその時の私に可能だったのはそのようなことを考えるか、今視界に捉えている遠くの山をぼんやりと眺めるだけであった。
いつの間にか日が高くなり外の気温はもかなり高くなっていた。アパートを出た私達は刑事が乗車してきた車を待っている。どうやら車を少し離れた位置に停車していたようだ。4人のうち2人の刑事が車を取りに行き、残る2名が私の監視のために残っていた。私は6万5千円ほどの現金が入った財布をズボンのポケットに入れているだけで手ぶらの状態だ。いつもスマートフォンを入れている右ポケットが物悲しく無性に気になった。
車が来るまでは刑事と雑談を交わしていた。何時からここに住んでいるかといった類の質問や普段の食生活、自炊をしているかなど刑事から聞かれてそれに応じる形だ。現住所に移ったのは転勤で4カ月ほど前の話だ。エンゲル係数を抑えるべく自炊はできる限り行うようにしているが、朝食は抜くことが多いため頻繁に作ることはせずに週3回ほどしか台所を使っていないことを伝えた。雑談も仕事のうちなのだろうか。何となく刑事は寡黙で淡々と仕事をするイメージが先行していた私は意外に感じていた。こちらの気持ちを和らげようという配慮かもしれないが。そうしていると覆面パトカーが到着し後部座席に座るよう促された。私は先ほどまで話していた刑事2名に挟まれる形で後部座席へと乗り込んだ。
「申し遅れました。私は今回の担当刑事である恒と申します。」
車内で自己紹介した刑事は一緒に車を待っていたうちの1名でよく話しかけてきた刑事とは別人だ。名前は恒というらしい。これから自己紹介でも始まるのかと思い私も佇まいを正し改めて挨拶した。しかし名乗ったのは担当刑事のみで他の刑事は自己紹介することのないまま沈黙が流れた。予想を外した私は興味をそがれ、田園風景を横目に見た。車は郊外へと向かっており警察署までは10分ほどで到着した。
警察署に到着した後は刑事に取調室まで案内された。取調室は2階にある刑事課のさらに奥に配置されている。貴重品は刑事課に備え付けてあるロッカーを貸してもらい入れさせてもらっている。取調室は4から5畳程度の広さで全体的に白い部屋だった。出入口は一か所、壁際に寄せられた机が1台あり、机を挟んで入り口から見て奥と手前に椅子が各1脚、部屋の奥には格子状の鉄柵で仕切られた窓がある。私は奥の椅子に案内され、向かいに担当刑事の恒さんが着席した。他の刑事は部屋には入っていないため一対一だ。取調室の出入口のほうを見ると内線用であろう壁掛け電話一機と部屋の隅にパイプ椅子が確認できた。時計はないが現時刻はおそらく11時少し前であろう。
「ご自宅で伺ったことと被るかもしれませんが、改めて確認したいこともありますのでご協力お願いします。これは取り調べに当たって説明していることなのですがあなたには黙秘権という権利があります。そのため言いたくないことは言わなくても結構です。」
――わかりました。
黙秘権の説明は決まり文句なのだろう。後で取り調べを受けた者から無理やり自供させられたなどと騒がれては面倒なことになるだろう。そもそも自供そのものは証拠にならないようなので自供を強要する意味が無い。かつては有罪を下すにあたり自白が大きなウエイトを占めていたようで、糾問的な国家観の中拷問や人質の利用など目を背けたくなるような所業が行われていたそうだ。そんな視点で考えれば推定無罪の原則で物的証拠を重視する現代は恵まれた環境だと思う。だがそのように思うのは私が罪人故だからであろうか。こんな立場に身を落としていなければ見知らぬ犯罪者に対して悪・即・斬などと言ってはしゃいでいたかもしれない。
「まずあなたには〇月△日に他人の家へ侵入した住居侵入の疑いがかけられています。ご自宅で侵入したと仰っていましたがそれは事実でしょうか?」
――はい。その日に侵入したことは間違いありません。
警察が来た際に自白するということは事前に決めていたため、弁解することはせずに客観的事実をそのまま伝えた。その後は何時に侵入したのか、なぜその時間に入ったのか、侵入経路や手段、犯行の目的といった質問に移っていく。しばらく取り調べを受けていると12時を過ぎたようで一時中断となった。昼食は私が持ってきた現金を警察に預け、その金でコンビニおにぎりを購入してもらうことになった。朝食を抜いていたが昼食はおにぎり2つだけで十分だった。残念だがあまり食欲は湧いてこない。
休憩後取り調べが再開し身元や職業、家族構成など個人情報を中心に聞き取りが行われた。聞き取りがひと段落した後、恒さんは壁掛け電話を通じて他の人と連絡を取り、程なくして書類を携えた別の刑事が部屋へと入ってきた。
「薄々気づいていたと思いますが、あなたは今から逮捕ということになります。逮捕状が出ているので書類の内容に間違いがないか確認してください。」
逮捕状に記載された氏名、年齢、住所、罪名、有効期限等誤りがないことを確認し15時頃にあっさりと逮捕執行となった。
「〇時△分執行です。では逮捕ということになりましたので、これからあなたには弁解をする機会が設けられます。その内容を書類にまとめるので書類が出来上がったら確認をして右手人差し指の指印を押してください。」
私は弁解とは言い訳をすることだと解釈している。弁解といっても私のやったことは事実だし犯行を認めているのに一体何を弁解することがあるのだろうか、と疑問に感じた。
――その……弁解と言いますが一般的にどのような内容が記載されるものなのでしょうか?
「例えば罪状の内容に関して認めているか、それとも無罪を主張するかといった内容が記載の中心になります。今回の場合はあなたが罪を認めているので、その事実と具体的にどのような犯行を行ったのかということも併せて記載することになりますね。」
――そうなんですか。では概ね先ほどの取り調べの際にお伝えした内容をまとめるという感じなのですね。
「そうなりますね。ですから先ほどの話をまとめて書類を作成しますので少々お待ちください。もしよろしければ水やお茶などご用意できますので必要な場合は声をかけてください。」
どうやら言い訳とは異なる主旨を含んでいるらしい。喉が渇いているわけではなかったが、折角なので私はお茶を用意してもらった。お茶を用意する際も恒さんは内線を通して別の警察職員に依頼していた。当然だが被疑者を一人にするということは無いようだ。
5分ほど恒さんはノートパソコンに向かい合っていたが、打ち込みが終わったようでモバイルプリンターで書類の印刷をし始めた。印刷された書類は私の目の前に広げられ、その内容を恒さんが音読しながら確認することになった。記載内容は客観的事実を中心として取り調べ内容の返答内容がまとめられていた。特に訂正することもないと判断したため署名と指印をし、恒さんへと差し出した。
「ありがとうございます。続いて弁護士制度の説明をさせていただきます。まずあなたは逮捕されたため弁護士についていただく必要があります。弁護士の決め方は自分で知り合いの弁護士に頼む私選、また国選に分けられます。ただし資力が50万円を超える方は私選弁護人を選定する必要があります。また今お伝えした弁護士以外にも当番弁護士制度というものがあって、この当番弁護士さんは1回限りですが無料で相談することが可能です。」
――私は資力50万円以上あるので私選弁護人を雇うことになると思いますが知り合いがいません。その時はどうするんですか?
「それなら当番弁護士の先生に一度会って相談してみるのはいかがでしょうか。先生への連絡はこちらからするので心配しないでください。」
――では……その当番弁護士制度を利用させていただいてもよろしいでしょうか?
少しだけ判断に困ったが、知り合いもいないので私は提案を受け入れ当番弁護士と面会できるように取り計らっていただくことにした。弁護士制度に疎かったので何を話したらいいか皆目見当がつかないがせめて弁護人の選定方法だけは確認しておきたい。
「それでは弁護士の方には連絡しておきます。これで今日の取り調べは以上になります。」
当番弁護人と接見することを決めた後、手錠と腰縄を持った刑事が部屋に入ってきた。朝自宅に来た時取り仕切っていた刑事だ。
「悪いんだけどこれから手錠するね。決まりなんでね。あと逮捕されたことはお父さんお母さんに伝えさせてもらうからね。」
親へ連絡されると言われ、わずかに抵抗感を覚えたがすぐ思い直して承諾した。もはや自分が取り繕い守るものなどないのだ。両手に手錠と腰縄を掛けられ取調室を後にする。部屋を出た後は近場の一室へと案内された。入って奥の壁際に身長測定器、手前側にカメラとパソコンが確認できた。取調官とは別の職員が部屋で待っている。
身長体重、足のサイズが測られ、写真は正面写真と横向きの写真などを複数撮られた。指紋は手の平全体と手の側面部、各指の指紋に至るまで採取された。指紋は専用の機器を使用して直接パソコンに入力されているようだった。DNAに関しては口腔内経由で検出するキットを使用して採取された。
一連の検査が終わった後は、刑事に付き添われ留置所の手前まで連行された。留置施設への入り口は取調室の連絡通路に面していた。取調室から出て10歩以内という距離感である。留置施設内に繋がるドアには小さな窓がついており、ドア横の壁にインターホンが取り付けられていた。インターホンを通して外部とのやり取りをするようだ。刑事がインターホンを鳴らした後小窓でやり取りが行われ、留置場職員が扉を開けた。
「〇時△分引き渡しです。よろしくお願いします。」
刑事が留置場担当官に伝え、私の身柄は留置場担当官へと引き渡された。その後は小部屋へ案内され、最初に持ち物のチェックが行われ書類に書き出された。因みにパソコンが民間に普及して半世紀以上経つのにすべて手書きである。持ち物は着衣と財布のみだったが、財布の中にあるカード類やレシートに至るまですべて細かく記載されたためかなり時間がかかりそうであった。じっと作業を眺めていると担当官から声がかかる。
「弁護士の先生が接見に来られました。持ち物検査は一度中断して面会室に向かいましょう。」
留置施設の奥にある面会室へと通された。面会室はドラマでよく見るような細かい円形の穴がいくつか開いたアクリル板で仕切られており、奥に眼鏡をかけた男性が座っている。室温は高く湿気も感じる部屋だった。
「初めまして。わたくし当番弁護士の清木と申します。」
――初めまして。よろしくお願いします。
挨拶を済ませた後刑務官は部屋を後にし、面会室には私と清木弁護士だけが残された。席に着くなり清木さんが口を開く。
「少し暑いですね。今冷房をつけていただくようにお願いしたのでもうすぐ涼しくなると思います。肩の力を抜いていただいて大丈夫です。まずはあなたが行ったことに関して連絡を受けているのですが、事実であるかどうかの確認をさせてください。」
本日言い渡された罪状、その事実に間違いがないこと、刑事にも既に自供済みである旨を話した。
「わかりました。これからの手続きに関しては何か聞いていますか?」
――はい。弁護人の選任をする必要があると聞いております。私は資力があるようなので私選弁護人を頼むことになるようなのですが、知り合いがいなくて。このような場合はどうされているのでしょうか?
室温のせいか、それとも他の理由なのかうっすらと汗をかいた私は刑事とのやり取りを思い出し弁護人選定に関する疑問をぶつけてみた。
「そうなんですね。今回の場合は結論から申し上げますと国選弁護人に付いてもらうことは可能です。ただ、少し手続きを踏んでもらう必要があります。まず、一度私を私選弁護人として指名してもらった後、私がその依頼を断ります。断られてしまった場合は、資力のある方にも国選弁護人を付けることができるのでその制度を使いましょう。実は既に私選弁護人を依頼するための書類を持ってきているため後で差し入れしておきます。いくつか記載項目がありますので記載が終わったら裁判所の人に渡すように留置場の人へ依頼してください。」
――わかりました。では清木先生を私選弁護人として依頼させていただきます。書類は担当官に渡せば後の手続きをやってもらえるのでしょうか?
「そうですね。外との必要なやり取りはここの人が行ってくれるはずです。それか近々裁判所へ行くことになると思うのでその時に書類を持参して直接裁判所に渡してもいいと思いますよ。」
――初歩的な質問で恐縮なのですが、逮捕されたら裁判所に行くものなのですか?
恥ずかしい話なのだが私は憐れみを抱くほどの世間知らずで、逮捕後の人間がどのような経過を辿るのかという浅薄な知識さえ持ち合わせていなかった。弁解をするのであればメディアに取り上げられにくい部分だからと言っておこうか。市井で話題に上がるような事件は専ら逮捕されるまでの間熱心に報道され、逮捕後は熱が冷めてしまう傾向にあるため逮捕後から裁判までの間に被疑者が如何なる道を辿って出廷するのかという事柄に触れる機会が乏しかったのだ。
「そっちの手続きに関してはまだ説明されてなかったんですね。では私から説明します。まずあなたは現在逮捕されています。そのような方を被疑者と言います。被疑者は逮捕された後に、このまま身柄を拘束するべきかどうかを判断されます。その判断については検察官と裁判官、両者が相談して決定します。そのまえに被疑者の言い分を聞く機会が設けられるので、近々検察庁と裁判所へ行くことになるはずです。身柄を拘束する必要がないのであれば釈放という形になりますが、捜査そのものは続きますので無罪というわけではないです。証拠隠滅や逃亡の恐れなどの懸念があるときは、身柄を拘束されることになります。その際は10日間拘束されて、取り調べを受けることになります。」
ここまで説明を受け流れはわかった。拘束期間の話が出たため過去に少しだけ聞き齧った知識を聞いてみることにした。
――拘束期間の延長という制度もあると聞いたことがあるのですが。
「そうですね。捜査の進度次第でさらに10日間延長されるという可能性があります。そのため身柄拘束は勾留が決まってから最大で20日間ということになりますね。捜査が終わった後は起訴するかどうかを判断されます。起訴処分になれば、あなたは被疑者から被告人という立場になり裁判の日までさらに拘束されることになり、不起訴であれば釈放ということになります。流れはこのような感じです。」
――ありがとうございます。よくわかりました。何か取り調べで注意したほうがいいことはありますか?
「そうですね。まず事実を話すということは大切ですが、事実ではないことまで認めないように注意してください。何か嫌なことをされたなどといったことがあった場合は、日時と時間と併せてノートに記載しておくといいです。あとは他に捕まっている人から何か吹き込まれることがあるかもしれませんが、嘘を言う人も多いので真に受けないようにしてください。」
――わかりました。
「他には何か質問などありませんか?」
――いいえ。今のところは大丈夫です。では差し入れしていただいた書類に記載して、裁判所に届ければひとまず大丈夫ですね。
「ええ、よろしくお願いします。今のところお伝えしておくことは以上ですね。それにしても……結局冷房はつきませんでしたね。」
蒸し暑い部屋の中で私たちは汗を浮かべながら苦笑していた。清木先生との接見終了後は、荷物検査の続きが行われた。結局すべて終えた頃には18時を回っていた。
長い一日だった。布団の中で私は今痛感している。これは夢ではなく紛うことのない現実であるということを。頬の筋肉が痛む。気がついたら布団の中で歯を食いしばっていた。この無意識的な行動に抗うため意識的に口を半開きにして意識が落ちるのを待つことにする。
なんて醜悪な生涯を送っているのだろう。幼少の頃から幸福になりたいという願いを持っていたはずなのに。いつこの人間社会で生きることに疲れてしまったのだろう。どうでもよくなってしまったのだろう。暗澹たる思いを胸に秘めつつ夜が更けていった。
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