表題はご自由に 【症例:愚か者の事件記録】

黒須共生

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第二の事件

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 これから2件目の事件についてお話しします。被害者のことは普段Bさんと呼んでいたのでBさんと言います。侵入に関してはAさんの時ほど強い目的意識があったわけではありません。1件目の居宅侵入が成功し、味を占めてしまったんです。侵入の経路とやり方は1件目の時と変わりありませんね。同じような構造だったので、応用したということです。
 ――自宅に侵入した理由を話してください。
 Bさん宅に侵入した理由は盗撮でした。気になっている方でしたから純粋に下心ですね。Bさんは私の近隣住民でしたが、Bさんは時々Aさん主催のバーベキューなどに参加することがあったんです。そのようなことで接点がありました。性格は年齢の割に少し子供っぽいという印象でした。いたずら好きという感じではありませんが、いい意味で落ち着きがない。雰囲気はそのような感じです。あとは所々で見せる仕草もどことなく気取っていない感じで少年っぽかったですね。私は人に好意を抱く時に外見や性格というよりも何気ない仕草を重視するのです。そのため外見が特別好ましかったというわけではなかったのです。ですが、バーベキューでは少年っぽい感じだったけど普段はどんな感じに過ごしているのかは気になっていましたね。私生活でだらしがない仕草をしている所を見てみたいと思っていました。そのためカメラの場所は居間とか寝室だったり、よく生活に使うであろう所へ設置しました。 カメラはAさん宅に仕掛けたものを流用しました。
 ――交際しようとは思わなかったんですか。
 逢引したいなどといったことは特に考えていなかったですね。休日は基本的に一人で過ごしていたかったので、遊びに誘うこともほとんどありませんでした。そのため興味はあるけど興味の域を出ない人という感覚でした。
 ――侵入した時、Bさんは外出中だったと思うのですが不在であることを確認して侵入したのですか。
 侵入する際は不在であったことを確認していましたが、それはBさんの所有車がないことを確認して判断しました。今考えると修理に出していて、代車を借りていなかった場合は鉢合わせしてしまったかもしれませんね。杜撰な確認手段だと思います。
 ――カメラの具体的な設置場所を教えてください。
 カメラの設置場所ですが、大抵は家具の底面に設置していました。カメラはセロハンテープを使って固定していました。そのため侵入時にはセロハンテープも持参しておりました。何故底面という低い場所に設置していたかというと、撮影したい部分が基本的に膝下だったからです。これは私の性癖なのですが主に膝下の部分に魅力を感じてしまうんです。その中でも何気なく足を組んだりしている仕草を好ましいと思います。それ以外の部分に関しては、それほど関心がなかったですね。
 ――文庫本の窃盗もしていましたが、理由を教えてください。
 窃盗に関してですが、これに関しては突発的な行動でした。別にBさんの所有物が欲しかったなどといったことはありません。文庫本を取ったのはBさんの趣味を理解したかったからです。話のネタになると思って拝借するつもりだったんです。それを返す前に逮捕されてしまったということです。普通に購入すればよかったのかもしれませんが、何というか図書館から本を借りるような感覚で取ってしまいました。つまらない本だった場合は購入すると損した気分にもなるので。この頃には罪を犯すハードルが低くなっていたのでしょう。
 ――文庫本は読んだのですか。
 窃盗した本は読みましたよ。400ページ程度だったので3日程度で読み終わりました。
 ――本の内容を教えてくれますか。
 本の内容についてですか。内容は復讐をテーマにした探偵ものでした。SF要素もありましたが、難解な表現は使われていなかったので読みやすい作品でした。
 ――他にも本があったと思いますが、何故その本をとったのですか。
 何故その本を取ったのかというと文庫本サイズで持ち出しやすかったし、奥行のある本棚で2列で収納されている後ろの方にあり普段は見えない位置にあった本なので、無くなっていてもばれにくいと思ったんです。それにシリーズもので全巻揃えていたようなので余程気に入っている作品なのかと思いました。そのため本棚にある他の本の題名はいくつか目にしました。漫画は少年ジャンプの作品が多かったですね。他には昔流行った新書がいくつかありました。ですが漫画は見たことがあったものだったし、あまり好きな作品ではなかったので候補から外れました。
 ――Bさん宅に入ったのは合計何回ですか。
 Bさん宅には計4回くらい侵入しました。カメラの設置で2回と回収で2回、それで計4回です。本もカメラの回収時に同時に盗みました。これは全て10日程度の間に行ったことです。日にちはAさん宅へ最初に侵入した数日後のことです。主な侵入時間は昼でした。Bさん宅は職場から3分程度の距離だったので、昼休みの時間帯にやってました。この時間Bさんは仕事中なので不在にしていたということです。車もないことを確認してから犯行に及んでいました。滞在時間は5分もなかったと思います。基本的にカメラを置いてくるか、回収するか、それだけですので。
 ――今はBさんに関してどのように思っていますか。
 Bさんにも本当に申し訳ないことをしてしまいました。こちらの事件に関しては全く怨恨など絡んでいないので、Aさんの時と比べて動機が薄いです。私は普段から不幸であると感じていたので少しくらいはいい思いがしたかった。ただのストレスのはけ口に無関係な人を巻き込んでしまったのです。許されるような行為ではないとわかっていました。それで実際家にまで侵入してしまうんですからどうしようもない人間ですよね。
 ――償いの気持ちはあるということですね。
 住居侵入という行いが被害者にどのような影響を与えるか考えました。まず普段であれば安心できるはずの場所である自宅に対して耐え難い恐怖感と嫌悪感を抱かせるような行いをしてしまったと思います。生涯消えることの無い苦痛を与えてしまい、取り返しのつかないことをしてしまったと思います。もう一人暮らしをすることはできなくなってしまったかもしれません。また、被害者の家族や親しい間柄の方へのショックも計り知れません。近所に住まわれていた方に対しても大きな不安を抱かせてしまったと思います。考えればキリがないほどの影響を及ぼしてしまったのだと思います。できることなら、今回被害を与えてしまったBさんに対して埋め合わせをしたいと考えております。私にできることなどたかが知れているとは思いますが、その気持ちは色あせないようにしなければならないと思います。
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