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第零の事件
しおりを挟む私には余罪がある。とはいってもこれは刑事にも検察官の方にも話していた内容だ。これで逮捕しなかったのは今回の事件と一緒くたんと考えたからか、又は起訴するまでもないと判断したためなのか不明である。立件されたからといって全ての行為を裁かれるわけではないのだ。
実を言えば警察の厄介になる10年ほど前から私は異性を盗撮し続けていた。対象物は普段から遮蔽されているような物ではなかったため、犯罪行為であるという認識は薄かった。無許可の撮影ではあったため一般的には悪いことだろうなとは感じていたが、発覚はしないだろうから別にいいかと思っていた。撮影対象は知り合いに限らず手当たり次第、無差別である。
長い年月が経っているのでやり始めたきっかけを鮮明に思い出せるわけではなかったが、就職活動をしていた時期と重なるしちょうど異性に対する一方的な不信感が形成された頃でもあった。この不信感は酷く勝手な感情からきていることも察していたがそれを認める度量はなかった。盗撮行為そのものに快感を覚えていたのではなく、不信感を抱いている異性という存在――敵――を道具のように扱うことであらゆるストレスの解消に充てていたのだと考えている。私は非常に怨恨を感じやすく、またずっと根に持つ性格だったのだ。異性というだけで不快感が生じ、それをずっと我慢して接しなければならないことを苦痛に感じていた。その感情を晴らすべくとにかく私にとって有益な道具へと貶める儀式を執り行っていたのだ。生活する上でまるで必要のないことだが、その行為に依存しきっていた。
警察に捕まったのも元を辿ればここに行きつく。復讐のために道具のように扱い辱め、あまつさえ精神的苦痛を与えて放逐することを我が命題と定め行ったことなのである。虐げられ、辱められることの苦痛を何よりも知っていたはずの自分が他人にここまでの行いをしてしまう。自分の境遇を自己本位で嘆き、人を苦しめることに快楽を覚える。社会に居てはいけない哀れなエゴイストが当然のようにしでかしてしまった所業が今回の一連の出来事なのである。
悪いことだと初めて自覚した時に踏み止まればよかったのだが、これくらいのことは構わないと見逃し続けた結果多くの呪いをまき散らし、最終的に社会から切り離されてしまった。小さなことでも見逃さず早めに芽を摘むことの意義を思い知った。
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