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第二部
発端 ⑤
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出だしは上々だと、藤原は内心でほくそ笑む。勝野小百合と他愛ない会話を続けるが、今のところ田島についての質問が放たれる様子はない。どうやら、こちらの意図を察してくれた様子だ。
藤原の直感によれば、勝野小百合は性に対して人並み以上に関心が高いはずだった。優等生の田島じゃ満足させることのできない、放縦な女だと確信していた。目元のほくろにしろ、美しい曲線を描いた鼻梁の高い鼻にしろ、顔全体がすこぶるエロティックだ。長い黒髪のせいで一見清楚風に見えるが、見る人が見れば、エロが皮を被った女だということはすぐにばれるはずだ。先ほどは、こちらの胸板を口を薄っすら開けながら見ていたほどだ。同じ目をした痴女を、藤原はこれまで何人も見てきた。
若い男女が集まる夜の溜まり場に顔を出せば、性に開放的な年上の女子大生やOLたちから藤原は積極的に声をかけられた。どうやら、異性を惹きつける強烈なフェロモンが身体から発散されているようで、そのオスとしての魅力を十二分に活用して、多くの女性と肉体関係を結んできた。まだ十八になったばかりだったが、経験人数はゆうに三十人を超えていた。それも、どれも上玉揃いだった。その経験値の高さから、藤原は相手の目を見れば、性への関心度を察することができた。勝野小百合の黒い瞳には、不道徳な光が間違いなく宿っていた。とはいえ、いきなり核心に迫るにはまだ早い。それまでに数クッションは置くべきだろう。心の壁を少しずつ壊してからでないと本心は引き出せない。そこで、相手からスポーツの話題が出たので、それに関連づけた話題を振ってみることにした。
「勝野って細いけど、何かしてんの?」
細くないよ、と相手は速攻で否定してくる。
「もう見えないとこに、いっぱいお肉ついてんだから。ほんとはダイエットしなきゃなんだけど……。それより藤原君って、どっかの女子校の子と付き合ってるんでしょ?」
「なんで知ってんだよ」
「別にいいじゃん。同い年の子?」
「二個下だよ」
そう答えると、相手はあからさまに表情を曇らせた。
「やっぱ男の子って、年下がいいんだよね……」
「何言ってんだよ。大して変わんないだろ」
「そんなことないよ。二歳差はおっきいよ。わたしも、一年生のときに戻れたらなぁ……」
藤原は相手の様子を見て、手応えを感じはじめていた。手順さえ間違わなければ必ず落とせる。自信は充分にあった。卒業間近のこの時期を選んだのも、気のゆるみを期待してのことだ。その思惑通り、相手はここまでやって来た。あとは、適切な質問を挟んで本音を語らせ、短時間で信頼関係を築いていく。真意を隠しつつ、こちらが信用に値する人物だと思い込ませるのだ。その間、焦ることなく、余裕ある態度で接すればいいだけ。女という生き物は、男の焦りや自信のなさを感じとると、ガードを固めて殻に閉じこもってしまう。そうなっては最後、もう言葉の力だけでは突き崩せなくなる。何事も、焦りは禁物なのだ。
「その子とは、付き合ってどれくらい?」
「そうだな。半年は過ぎたかもな」
「半年かぁ……」
相手は遠くを見るような感じでつぶやき、中身が氷だけになったドリンクカップを太いストローでつつきはじめる。その様子から、藤原は彼女がもっと深い話をしたがっていることに気づく。切り出せないでいるのは、それが話題にしにくい内容だからだろう。そう判断すると、さらなる信頼を得るため次の行動に移る。
「何か飲むか?」
立ち上がりながらそう聞くと、相手は少し驚いた顔をした。
「じゃあ、アイスティーをお願い」
藤原は、彼女の空になったドリンクカップを自身のトレーに載せると席を離れた。
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
藤原の直感によれば、勝野小百合は性に対して人並み以上に関心が高いはずだった。優等生の田島じゃ満足させることのできない、放縦な女だと確信していた。目元のほくろにしろ、美しい曲線を描いた鼻梁の高い鼻にしろ、顔全体がすこぶるエロティックだ。長い黒髪のせいで一見清楚風に見えるが、見る人が見れば、エロが皮を被った女だということはすぐにばれるはずだ。先ほどは、こちらの胸板を口を薄っすら開けながら見ていたほどだ。同じ目をした痴女を、藤原はこれまで何人も見てきた。
若い男女が集まる夜の溜まり場に顔を出せば、性に開放的な年上の女子大生やOLたちから藤原は積極的に声をかけられた。どうやら、異性を惹きつける強烈なフェロモンが身体から発散されているようで、そのオスとしての魅力を十二分に活用して、多くの女性と肉体関係を結んできた。まだ十八になったばかりだったが、経験人数はゆうに三十人を超えていた。それも、どれも上玉揃いだった。その経験値の高さから、藤原は相手の目を見れば、性への関心度を察することができた。勝野小百合の黒い瞳には、不道徳な光が間違いなく宿っていた。とはいえ、いきなり核心に迫るにはまだ早い。それまでに数クッションは置くべきだろう。心の壁を少しずつ壊してからでないと本心は引き出せない。そこで、相手からスポーツの話題が出たので、それに関連づけた話題を振ってみることにした。
「勝野って細いけど、何かしてんの?」
細くないよ、と相手は速攻で否定してくる。
「もう見えないとこに、いっぱいお肉ついてんだから。ほんとはダイエットしなきゃなんだけど……。それより藤原君って、どっかの女子校の子と付き合ってるんでしょ?」
「なんで知ってんだよ」
「別にいいじゃん。同い年の子?」
「二個下だよ」
そう答えると、相手はあからさまに表情を曇らせた。
「やっぱ男の子って、年下がいいんだよね……」
「何言ってんだよ。大して変わんないだろ」
「そんなことないよ。二歳差はおっきいよ。わたしも、一年生のときに戻れたらなぁ……」
藤原は相手の様子を見て、手応えを感じはじめていた。手順さえ間違わなければ必ず落とせる。自信は充分にあった。卒業間近のこの時期を選んだのも、気のゆるみを期待してのことだ。その思惑通り、相手はここまでやって来た。あとは、適切な質問を挟んで本音を語らせ、短時間で信頼関係を築いていく。真意を隠しつつ、こちらが信用に値する人物だと思い込ませるのだ。その間、焦ることなく、余裕ある態度で接すればいいだけ。女という生き物は、男の焦りや自信のなさを感じとると、ガードを固めて殻に閉じこもってしまう。そうなっては最後、もう言葉の力だけでは突き崩せなくなる。何事も、焦りは禁物なのだ。
「その子とは、付き合ってどれくらい?」
「そうだな。半年は過ぎたかもな」
「半年かぁ……」
相手は遠くを見るような感じでつぶやき、中身が氷だけになったドリンクカップを太いストローでつつきはじめる。その様子から、藤原は彼女がもっと深い話をしたがっていることに気づく。切り出せないでいるのは、それが話題にしにくい内容だからだろう。そう判断すると、さらなる信頼を得るため次の行動に移る。
「何か飲むか?」
立ち上がりながらそう聞くと、相手は少し驚いた顔をした。
「じゃあ、アイスティーをお願い」
藤原は、彼女の空になったドリンクカップを自身のトレーに載せると席を離れた。
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