【R18】セーフワード 狂気、増殖。

てっぺーさま

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第二部

発端 ④

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「いらっしゃいませ、こんにちはー」
 店内に足を踏み入れるなり、女性店員の元気な声が耳に届く。比較的混雑した店内は少々騒がしく、制服姿の学生たちが目立った。
 待ち人はすぐに見つかった。二人掛けのテーブル席に、壁を背にして座っていた。こちらに気づくと、彼は小さく手を上げて見せる。小百合はつい笑顔を向けてしまうが、すぐに真顔に戻し、早く着きすぎたことを少し後悔した。もう少し待たせておけばよかったのだ。
 Mサイズのアイスティーを購入してから、小百合は藤原の前に座った。
「ねえ、何でここにしたの? 学校の近くでもよかったのに」
「おれといっしょにいるとこ、見られたくないだろ?」
「そんなの気にしないのに」
 嘘だった。田島に知られるわけにはいかなかったし、何よりも、劣等生の藤原といっしょにいるところなど誰にも見られたくなかった。
「それで、田島君のことって何なの?」
「そう急かすなよ」
 相手は余裕ある態度でフライドポテトを口に放り込む。すぐに本題に入る気はなさそうだ。茶色のトレーには、フライドポテトとドリンクの他に、ハンバーガーを包んでいたであろう白い包装紙が丸められていた。
 落ち着き払った相手の様子を見て、田島の名前を持ちだしたのは誘い出すための口実に過ぎなかったのではないかと小百合は勘繰った。もしそうなら、無理に聞き出そうとしたところで答えなどあるわけがない。正直なところ、周囲に自分たちを知る者がいないだけに、藤原との時間を楽しみたかった。田島のことを話題にしなければ、少しでも長くいっしょにいられるかもしれない。
 藤原はなおも、フライドポテトを食べるか、ドリンクに口をつけるかで、まったく口を開こうとしない。仕方なく小百合も、無言のまま太いストローからアイスティーを飲み続ける。透明のドリンクカップについた無数の水滴が手のひらを冷やしてくる。しかし、この無言の時間が苦痛に感じることはなく、藤原の大人びた成熟度がそこに垣間見れた。田島と二人でいるときは、どちらか一方が必ず喋っていたから、沈黙の時間などなかった。それはそれで楽しかったが、藤原とのこの時間は、とても上質なもののように感じられた。だが、無言の時間にやや気まずさを感じてきた小百合は、自ら会話をスタートさせた。
「何飲んでるの?」
「コーラ」
「ふーん」
 藤原にはコーラがよく似合うなと小百合は思った。次の質問は、彼の胸板を見ていたら自然と口にしていた。
「あのさ、藤原君って何かスポーツしてるの?」
 このとき意識して左目を相手に向ける。チャームポイントだと認識している目元のほくろを強調させるためだ。
「中学のときは柔道やってた」
「どおりで。今は何もやってないの?」
「とくにはな。今はたまに、家で腕立てとか腹筋をする程度だな」
「そうなんだ」



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