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プロローグ:インタビュー
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フリージャーナリストの堀北は、客の少ない静かなカフェで、橋本真由美へのインタビューを進めていた。テーブルの上には録音中のスマホと資料が並び、店内の控えめなBGMが、張り詰めた空気をわずかに和らげていた。インタビューが始まってから、すでに二十分ほどが経過していた。
橋本真由美は目鼻立ちの整った二十二歳の学生だ。東京の実家から都内の大学に通う彼女は、少し気の強そうな顔立ちではあるが、今はその表情に影が差していた。それも無理はない。彼女は異常な事件で世間を騒がせた、「本田奈央」と親しい関係にあったのだから。
満月の夜、本田奈央は四階のバルコニーを伝って隣室に侵入しては、次々と住民を襲っていった。常軌を逸した犯行に、日本中が震撼した。彼女は逮捕時、「あの女が! あの女が!」と執拗に叫び続けていたという。
七人もの死傷者を出したこの事件は、本田奈央の精神錯乱によるものとして一応の決着を見ていたが、堀北は「あの女」の正体と、事件の真相に少しでも迫ろうと、彼女の親友でもあった橋本真由美にコンタクトを取ったのだ。
「それにしても、信じられません……」橋本真由美は小さな声でつぶやいた。「あの子が、奈央が……あんなことをするなんて」
彼女の視線はグラスの縁に落ちたまま動かない。震える指先でストローを何度も無意識になでている。いまだ現実を受け止めきれていない様子がひしひしと伝わってくる。
堀北は少し身を乗り出し、慎重に言葉を選びながらたずねた。
「でも、人は見かけによらないということは、君がいちばんよく知っているのでは?」
一瞬、橋本真由美がはっとしたように顔を上げた。だが、すぐに目を伏せ、か細い声を漏らした。
「ええ、まあ……そうですね」
彼女はあることがきっかけで、本田奈央と絶縁状態になった。そのことを悔やんでいる様子が、苦悩する表情から伝わってくる。彼女の中には、本田奈央がただの「加害者」ではなく、「親友」だったという事実が重くのしかかっているようだ。
堀北は、うつむく橋本真由美の顔をじっと見つめた。そこには、親友を救えなかったという罪悪感が深く刻み込まれていた。
「わたしが……、わたしがあの子を見捨てなければ、あんなことには——」
橋本真由美は目鼻立ちの整った二十二歳の学生だ。東京の実家から都内の大学に通う彼女は、少し気の強そうな顔立ちではあるが、今はその表情に影が差していた。それも無理はない。彼女は異常な事件で世間を騒がせた、「本田奈央」と親しい関係にあったのだから。
満月の夜、本田奈央は四階のバルコニーを伝って隣室に侵入しては、次々と住民を襲っていった。常軌を逸した犯行に、日本中が震撼した。彼女は逮捕時、「あの女が! あの女が!」と執拗に叫び続けていたという。
七人もの死傷者を出したこの事件は、本田奈央の精神錯乱によるものとして一応の決着を見ていたが、堀北は「あの女」の正体と、事件の真相に少しでも迫ろうと、彼女の親友でもあった橋本真由美にコンタクトを取ったのだ。
「それにしても、信じられません……」橋本真由美は小さな声でつぶやいた。「あの子が、奈央が……あんなことをするなんて」
彼女の視線はグラスの縁に落ちたまま動かない。震える指先でストローを何度も無意識になでている。いまだ現実を受け止めきれていない様子がひしひしと伝わってくる。
堀北は少し身を乗り出し、慎重に言葉を選びながらたずねた。
「でも、人は見かけによらないということは、君がいちばんよく知っているのでは?」
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