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第一章 心霊現象
凶兆
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夜の海岸。
波が引くたびに、濡れた砂浜に黒い物体が浮かび上がる。腐敗した死体だった。
海水をたっぷりと含んだ衣服が重たく貼りつき、裂けたシャツの隙間からは白くふやけた皮膚がのぞいている。服装から若い男だと推測できたが、顔面は無数の傷に覆われ、さらに水で大きくふやけ、生前の面影を探すことはもはやむずかしい。ただし、苦しい死に様だったことは容易に想像できた。
場面は変わり、夜の幹線道路。
街灯に照らされた歩道を、二十代半ばの男が足取りも覚束ないまま歩いている。彼は何度もよろめきながら進んでいたが、ふいに車道へと飛び出した。
次の瞬間、一直線に伸びたヘッドライトの光が男の顔を照らし出す。
浮かび上がったのは、異様なほど大きく見開かれた両目。その直後、鈍く湿った衝突音が夜気を震わせ、急ブレーキの甲高い悲鳴が闇夜を切り裂いていった。
◈
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