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第二章 血塗られた過去
友情
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「これ、何なの……」
登校して校舎に入るなり、華菜子は言葉を失った。下駄箱の上履きが、ぐしょ濡れになっていたからだ。
すぐに犯人の顔が頭に浮かぶ。吉野リサがやったのだ。
「まだ、続けるつもりなの……」
華菜子はポケットティッシュで上履きを拭くが、とてもすぐに履ける状態にはならなかった。仕方なく上履きを履くのはあきらめ、靴下のまま教室へ向かった。
生徒がまばらの教室に入ると、窓際の席で吉野リサとその仲間たちが嘲るように笑っていた。ふいに怒りで涙がこぼれ落ちそうになる。
悔しさを押し殺しながら自分の席に歩み寄った瞬間、またもや言葉を失った。
「ひどい……」
机の上は、「バカ」「ブス」「死ね」「ウソつき」「ヤリマン」「臭い」などの悪意ある言葉で埋め尽くされていた。
華菜子は思わず窓際にいる吉野リサたちを睨みつけた。しかし、彼女たちは平然と澄ました顔で笑っていて動じる様子はなかった。悔しさで再び胸がしめつけられた。
「カナ、おはよ!」
背後から友人の綾が明るい声で背中を叩いてきた。
華菜子が反応できずにいると、机の落書きに気づいた綾が高い声を上げた。
「何これ!?」
教室の空気が一変した。同級生たちの注目が集まるのがわかった。
華菜子は綾と目を合わせられず、涙をこらえるのに必死だった。すると、綾は一度教室を離れたかと思うと、すぐに塗れた雑巾を手に戻ってきた。
無言で机を拭き始めた綾を見て、華菜子の涙腺が一気に崩壊した。それにつられるように、机を拭く綾も泣き出してしまう。そこへ、別の友人が雑巾を手に駆けつけ、綾といっしょに机を拭き始めた。
教室は静まり返り、しばし異様な空気が流れ出した。華菜子が友人たちの行為に感激しながら窓際に目をやると、吉野リサたちが気まずそうな顔をしていた。こんな展開は予想していなかったのだろう。
やがて、担任の男性教師が教室に入ってきた。他の生徒は席に着いたが、友人たちは黙って机を拭き続けてくれた。
「お前ら、何やってんだ?」
教師が近づいてきて、華菜子の机を見て顔をこわばらせた。
「原口、これ誰がやったんだ?」
「わかりません……」
華菜子は涙を拭いながら首を横に振った。
そのとき、廊下側の席に座る男子生徒がおもむろに立ち上がった。高田という名の正義感の強いタイプの生徒だ。彼が教師に向かって憤然とした態度で口を開いた。
「たぶんそれ、吉野たちです。朝、原口の机を囲んでるの見ました」
教室中の視線が吉野リサに集中する。
彼女は不機嫌そうにうつむき、舌打ちをする。
「吉野、ちょっと来い」
教師が吉野リサに声をかけるが、彼女はふてくされた態度のまま動こうとしなかった。
「来いて言ってんだ!」
教師が一喝すると、彼女はしぶしぶといった様子で立ち上がり、険しい表情のまま教師のあとを追って教室を出ていった。
放課後、華菜子は職員室に呼び出された。
職員室の応接セットで向かい合って座りながら担任教師は言った。
「吉野の話だと、お前に片親家庭だとバカにされたって言うんだ」
「わたし、バカになんてしてません!」
華菜子は思わず声を荒げてしまう。
教師は少したじろぎながら答える。
「そ、そうだよな……。先生もそう思う。きっと、何か誤解があったんだろう」
その言葉に、華菜子の頭にさらに血が上る。
「誤解も何も、わたし、本当に吉野さんのことを悪く言った覚えなんてないんです!」
教師は困ったような表情で頭をかいた。
「そうか、わかった……。だが何にせよ、吉野にはきつく言っておいたから、もう悪さはしないはずだ。もしまた何かあったら、すぐに先生に知らせてくれ。いいな?」
「はい、わかりました……」
◈
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登校して校舎に入るなり、華菜子は言葉を失った。下駄箱の上履きが、ぐしょ濡れになっていたからだ。
すぐに犯人の顔が頭に浮かぶ。吉野リサがやったのだ。
「まだ、続けるつもりなの……」
華菜子はポケットティッシュで上履きを拭くが、とてもすぐに履ける状態にはならなかった。仕方なく上履きを履くのはあきらめ、靴下のまま教室へ向かった。
生徒がまばらの教室に入ると、窓際の席で吉野リサとその仲間たちが嘲るように笑っていた。ふいに怒りで涙がこぼれ落ちそうになる。
悔しさを押し殺しながら自分の席に歩み寄った瞬間、またもや言葉を失った。
「ひどい……」
机の上は、「バカ」「ブス」「死ね」「ウソつき」「ヤリマン」「臭い」などの悪意ある言葉で埋め尽くされていた。
華菜子は思わず窓際にいる吉野リサたちを睨みつけた。しかし、彼女たちは平然と澄ました顔で笑っていて動じる様子はなかった。悔しさで再び胸がしめつけられた。
「カナ、おはよ!」
背後から友人の綾が明るい声で背中を叩いてきた。
華菜子が反応できずにいると、机の落書きに気づいた綾が高い声を上げた。
「何これ!?」
教室の空気が一変した。同級生たちの注目が集まるのがわかった。
華菜子は綾と目を合わせられず、涙をこらえるのに必死だった。すると、綾は一度教室を離れたかと思うと、すぐに塗れた雑巾を手に戻ってきた。
無言で机を拭き始めた綾を見て、華菜子の涙腺が一気に崩壊した。それにつられるように、机を拭く綾も泣き出してしまう。そこへ、別の友人が雑巾を手に駆けつけ、綾といっしょに机を拭き始めた。
教室は静まり返り、しばし異様な空気が流れ出した。華菜子が友人たちの行為に感激しながら窓際に目をやると、吉野リサたちが気まずそうな顔をしていた。こんな展開は予想していなかったのだろう。
やがて、担任の男性教師が教室に入ってきた。他の生徒は席に着いたが、友人たちは黙って机を拭き続けてくれた。
「お前ら、何やってんだ?」
教師が近づいてきて、華菜子の机を見て顔をこわばらせた。
「原口、これ誰がやったんだ?」
「わかりません……」
華菜子は涙を拭いながら首を横に振った。
そのとき、廊下側の席に座る男子生徒がおもむろに立ち上がった。高田という名の正義感の強いタイプの生徒だ。彼が教師に向かって憤然とした態度で口を開いた。
「たぶんそれ、吉野たちです。朝、原口の机を囲んでるの見ました」
教室中の視線が吉野リサに集中する。
彼女は不機嫌そうにうつむき、舌打ちをする。
「吉野、ちょっと来い」
教師が吉野リサに声をかけるが、彼女はふてくされた態度のまま動こうとしなかった。
「来いて言ってんだ!」
教師が一喝すると、彼女はしぶしぶといった様子で立ち上がり、険しい表情のまま教師のあとを追って教室を出ていった。
放課後、華菜子は職員室に呼び出された。
職員室の応接セットで向かい合って座りながら担任教師は言った。
「吉野の話だと、お前に片親家庭だとバカにされたって言うんだ」
「わたし、バカになんてしてません!」
華菜子は思わず声を荒げてしまう。
教師は少したじろぎながら答える。
「そ、そうだよな……。先生もそう思う。きっと、何か誤解があったんだろう」
その言葉に、華菜子の頭にさらに血が上る。
「誤解も何も、わたし、本当に吉野さんのことを悪く言った覚えなんてないんです!」
教師は困ったような表情で頭をかいた。
「そうか、わかった……。だが何にせよ、吉野にはきつく言っておいたから、もう悪さはしないはずだ。もしまた何かあったら、すぐに先生に知らせてくれ。いいな?」
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