52 / 59
第三章 復讐の始まり
内見
しおりを挟む
「どうです? ここは周囲に高い建物もないですから、見晴らしも最高ですよ」
不動産屋の営業マンは満面の笑みを浮かべて言った。
何も置かれていない室内を見渡しながら、マコがうれしそうに声を上げる。
「いい部屋だね~」
恭弥も笑みを浮かべて同意する。四階建てマンションの最上階で、単身者向けのワンルームだったが、築浅の物件のため、室内は新築のようにきれいだ。
二人で室内を見て回る間、営業マンは部屋の隅で作り笑いを浮かべていた。ヒゲ剃りの跡が目立つ三十代後半ほどの男だ。
窓から外の景色を眺めてから、恭弥はマコに声をかけた。
「マコ、ここに決めたら?」
「うん、そうだね」
マコは営業マンに視線を向けた。
「ここに決めます」
「かしこまりました。では、店舗に戻って契約の手続きを」
営業マンが運転する車で不動産屋に戻る。地域密着型という感じの、こじんまりとした店舗だ。
恭弥がマコと並んでカウンター席に腰を下ろすと、事務員らしき中年女性が湯気の立つお茶を二人の前に置いた。
お茶をすすりながら二人で待っていると、営業マンが書類を手に現れた。
二人の前に座った営業マンの表情が、ふいに硬くなった。
「……契約の前に、一つお伝えしておくべきことがありまして」
「え、なんですか?」
マコが少し身を乗り出してたずねた。
営業マンは少しためらいがちに口を開いた。
「実は、以前あの部屋に住んでいた方のもとに、こんなものが……」
そう言うと、営業マンは一枚の紙をカウンターの上に置いた。
それは新聞の切り抜きで作られた手紙で、恭弥には見慣れたものだった。
「そ」「の」「部」「屋」「は」「呪」「わ」「れ」「て」「い」「る」「。」「後」「悔」「し」「た」「く」「な」「け」「れ」「ば」「今」「す」「ぐ」「出」「て」「い」「け」「。」「こ」「の」「警」「告」「を」「無」「視」「す」「れ」「ば」「、」「お」「前」「だ」「け」「で」「な」「く」「身」「近」「な」「人」「間」「に」「も」「不」「幸」「が」「訪」「れ」「る」「だ」「ろ」「う」「。」
「きゃっ! やだ、怖い!」
マコが大げさに驚くふりをして見せる。
その迫真の演技に感心しながら、恭弥は営業マンに聞く。
「あの部屋で、何かあったんですか?」
営業マンは慌てて首を横に振った。
「いえいえ、そんなことはありません。まだ築浅ですし、あの部屋に限らず、他のどの部屋でも何も起こってませんよ」
「じゃあ、何でこんなものが?」
「おそらく、単なるいたずらじゃないかと……」
マコが不安げな様子を装って口を開く。
「恭弥君、やめたほうがいいかな?」
「うーん、いい部屋だったからなぁ……」
恭弥は悩むふりをしてから、営業マンに念を押すように聞いた。
「本当に、何もないんですよね?」
「ええ、それは断言できます」
営業マンは自信たっぷりに答えた。
「なら、だいじょうぶじゃね?」
「そうかなぁ……」
マコは不安げな演技を続ける。
恭弥は営業マンに顔を向けた。
「ちなみに、手紙のこともあるんで、家賃とか、もう少し安くなったりしません?」
営業マンは困った顔をして頭をかいた。
「これでも、かなり下げてるんですよね……。あの、少々お待ちいただけますか? 今からオーナーに確認してみますんで」
営業マンは軽く頭を下げると、オーナーと連絡を取るためにカウンターの奥へ消えた。
恭弥はマコとともに、お茶をすすりながら静かに待った。
五分ほどして営業マンが戻ってきた。
「お待たせしました。オーナーと話したところ、一万円ほどならお値引きできるとのことです。いかがですか?」
恭弥は、なおも不安げなふりをしているマコに言った。
「だいぶ格安だよ。あそこに決めちゃえば?」
「そうだね。恭弥君がそう言うなら、あそこにする」
マコの言葉に、営業マンは満足げな笑みを浮かべた。
不動産屋を出るなり、恭弥はマコに言った。
「まさか、一万円も安くなるなんてね!」
「だね。長く住まないにしろ、安いに越したことはないもんな」
もともと安かった家賃がさらに値下がり、恭弥はかなり気分がよかった。
マコ名義で借りた部屋は単身者向けのため、ルームシェアは原則禁じられていた。だが、そこは静かに生活すれば問題はないだろうと踏んでいた。とりあえず、〝ターゲット〟の隣に部屋を確保できたことで、計画は大きく前進した。
「マコ、これからもよろしくね」
「うん! こちらこそよろしく!」
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
不動産屋の営業マンは満面の笑みを浮かべて言った。
何も置かれていない室内を見渡しながら、マコがうれしそうに声を上げる。
「いい部屋だね~」
恭弥も笑みを浮かべて同意する。四階建てマンションの最上階で、単身者向けのワンルームだったが、築浅の物件のため、室内は新築のようにきれいだ。
二人で室内を見て回る間、営業マンは部屋の隅で作り笑いを浮かべていた。ヒゲ剃りの跡が目立つ三十代後半ほどの男だ。
窓から外の景色を眺めてから、恭弥はマコに声をかけた。
「マコ、ここに決めたら?」
「うん、そうだね」
マコは営業マンに視線を向けた。
「ここに決めます」
「かしこまりました。では、店舗に戻って契約の手続きを」
営業マンが運転する車で不動産屋に戻る。地域密着型という感じの、こじんまりとした店舗だ。
恭弥がマコと並んでカウンター席に腰を下ろすと、事務員らしき中年女性が湯気の立つお茶を二人の前に置いた。
お茶をすすりながら二人で待っていると、営業マンが書類を手に現れた。
二人の前に座った営業マンの表情が、ふいに硬くなった。
「……契約の前に、一つお伝えしておくべきことがありまして」
「え、なんですか?」
マコが少し身を乗り出してたずねた。
営業マンは少しためらいがちに口を開いた。
「実は、以前あの部屋に住んでいた方のもとに、こんなものが……」
そう言うと、営業マンは一枚の紙をカウンターの上に置いた。
それは新聞の切り抜きで作られた手紙で、恭弥には見慣れたものだった。
「そ」「の」「部」「屋」「は」「呪」「わ」「れ」「て」「い」「る」「。」「後」「悔」「し」「た」「く」「な」「け」「れ」「ば」「今」「す」「ぐ」「出」「て」「い」「け」「。」「こ」「の」「警」「告」「を」「無」「視」「す」「れ」「ば」「、」「お」「前」「だ」「け」「で」「な」「く」「身」「近」「な」「人」「間」「に」「も」「不」「幸」「が」「訪」「れ」「る」「だ」「ろ」「う」「。」
「きゃっ! やだ、怖い!」
マコが大げさに驚くふりをして見せる。
その迫真の演技に感心しながら、恭弥は営業マンに聞く。
「あの部屋で、何かあったんですか?」
営業マンは慌てて首を横に振った。
「いえいえ、そんなことはありません。まだ築浅ですし、あの部屋に限らず、他のどの部屋でも何も起こってませんよ」
「じゃあ、何でこんなものが?」
「おそらく、単なるいたずらじゃないかと……」
マコが不安げな様子を装って口を開く。
「恭弥君、やめたほうがいいかな?」
「うーん、いい部屋だったからなぁ……」
恭弥は悩むふりをしてから、営業マンに念を押すように聞いた。
「本当に、何もないんですよね?」
「ええ、それは断言できます」
営業マンは自信たっぷりに答えた。
「なら、だいじょうぶじゃね?」
「そうかなぁ……」
マコは不安げな演技を続ける。
恭弥は営業マンに顔を向けた。
「ちなみに、手紙のこともあるんで、家賃とか、もう少し安くなったりしません?」
営業マンは困った顔をして頭をかいた。
「これでも、かなり下げてるんですよね……。あの、少々お待ちいただけますか? 今からオーナーに確認してみますんで」
営業マンは軽く頭を下げると、オーナーと連絡を取るためにカウンターの奥へ消えた。
恭弥はマコとともに、お茶をすすりながら静かに待った。
五分ほどして営業マンが戻ってきた。
「お待たせしました。オーナーと話したところ、一万円ほどならお値引きできるとのことです。いかがですか?」
恭弥は、なおも不安げなふりをしているマコに言った。
「だいぶ格安だよ。あそこに決めちゃえば?」
「そうだね。恭弥君がそう言うなら、あそこにする」
マコの言葉に、営業マンは満足げな笑みを浮かべた。
不動産屋を出るなり、恭弥はマコに言った。
「まさか、一万円も安くなるなんてね!」
「だね。長く住まないにしろ、安いに越したことはないもんな」
もともと安かった家賃がさらに値下がり、恭弥はかなり気分がよかった。
マコ名義で借りた部屋は単身者向けのため、ルームシェアは原則禁じられていた。だが、そこは静かに生活すれば問題はないだろうと踏んでいた。とりあえず、〝ターゲット〟の隣に部屋を確保できたことで、計画は大きく前進した。
「マコ、これからもよろしくね」
「うん! こちらこそよろしく!」
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる