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第三章 復讐の始まり
歩道橋の惨劇
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午後三時を過ぎたころ、学校というよりもオフィスビルに近い校舎から生徒たちが続々と姿を現した。その中に、吉野リサの姿があった。不機嫌そうな顔で、スマホに視線を落としている。
SNSで確認済みだったため、彼女の顔はすぐにわかった。派手な髪色をしているが、他の生徒も似たような外見のため、さほど目立ってはいない。
連れがいないのは好都合だ。恭弥は静かにあとを追った。
いつものように黒縁の眼鏡をかけ、パーカーのフードを深く被り、さらにマスクをして顔を隠していた。パンデミック前なら完全に不審者だ。
前を歩く吉野リサとの距離は五、六メートルほど。かなり近いが、彼女はスマホに夢中で気づかれる心配はなさそうだ。スマホを横向きにしているところを見ると、ユーチューブか何かの動画を観ているのだろう。完全に自分だけの世界に入り込んでいる。そのせいで、前から来る歩行者と何度もぶつかりそうになっていた。普段なら、恭弥はそんな迷惑行為を見て苛立ちを覚えただろうが、今日に限っては歓迎した。
「歩きスマホ最高」
吉野リサに時間をかけるつもりはなかった。今日で片をつけるつもりでいた。ごく簡単な方法で、姉が受けた苦痛を倍返しにできればそれでよかった。
彼女が歩道橋の階段を上り始めた。まさに絶好の機会が訪れた。歩道橋は、一度上がれば必ず下りなければならない。恭弥は足音を殺しながら彼女との距離をさらに詰めていく。
幸い、歩道橋に人影はなかった。前を行く吉野リサは、スマホに視線を落としたまま歩いていき、左側に下りる階段に差しかかる。
「よし、今だ!」
彼女が階段を下り始めようとした瞬間、恭弥は相手の背中を押すため駆け出そうとした。
「あ!?」
恭弥は思わず足を止めた。階段の下から、黒いTシャツを着た坊主頭の男がすっと現れたからだ。恭弥はうつむき、何事もなかったかのように歩き続ける。
「ちっ……」
恭弥が舌打ちしたところで、ふいに右から左へ向けて突風が吹いた。帽子を被っていたら飛ばされるほどの強さだ。その強風の影響で、階段を下りようとしていた吉野リサがバランスを崩した。
「え!?」
裏返ったような驚いた声が風に乗って響くのと同時に、階段を踏み外したらしい彼女の身体は、両手を宙に投げ出したまま無様に転がっていった。
恭弥は歩道橋の上から、階段を転げ落ちる吉野リサを見つめた。慌てて歩道橋の端まで駆け寄り階段下を見下ろすと、吉野リサが地面に倒れ込んでいた。右足は不自然な角度で曲がっている。
「痛い! 痛い! 誰か助けて!」
悲痛な叫び声が周囲に響き渡る。あの落ち方では、右足以外にも骨折している可能性が高い。
「スマホ、スマホ! あたしのスマホ、どこ!?」
スマホで助けを呼ぶつもりなのだろうか。吉野リサは腕を振り回しながら泣き叫んでいる。恭弥は彼女の周囲に視線を走らせるが、スマホは見当たらなかった。
すると、彼女のもとにベージュのスーツを着たOL風の女性が駆けつけてきた。それを見て、恭弥はすぐに踵を返す。先ほどすれ違った坊主頭の男が歩道橋の上から様子をうかがっていたが、恭弥は素知らぬ顔で脇を通り抜け、歩道橋を下りていった。
少し離れたところで足を止めると、恭弥はふと空を見上げた。
「今の……姉ちゃんがやったの?」
◈
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SNSで確認済みだったため、彼女の顔はすぐにわかった。派手な髪色をしているが、他の生徒も似たような外見のため、さほど目立ってはいない。
連れがいないのは好都合だ。恭弥は静かにあとを追った。
いつものように黒縁の眼鏡をかけ、パーカーのフードを深く被り、さらにマスクをして顔を隠していた。パンデミック前なら完全に不審者だ。
前を歩く吉野リサとの距離は五、六メートルほど。かなり近いが、彼女はスマホに夢中で気づかれる心配はなさそうだ。スマホを横向きにしているところを見ると、ユーチューブか何かの動画を観ているのだろう。完全に自分だけの世界に入り込んでいる。そのせいで、前から来る歩行者と何度もぶつかりそうになっていた。普段なら、恭弥はそんな迷惑行為を見て苛立ちを覚えただろうが、今日に限っては歓迎した。
「歩きスマホ最高」
吉野リサに時間をかけるつもりはなかった。今日で片をつけるつもりでいた。ごく簡単な方法で、姉が受けた苦痛を倍返しにできればそれでよかった。
彼女が歩道橋の階段を上り始めた。まさに絶好の機会が訪れた。歩道橋は、一度上がれば必ず下りなければならない。恭弥は足音を殺しながら彼女との距離をさらに詰めていく。
幸い、歩道橋に人影はなかった。前を行く吉野リサは、スマホに視線を落としたまま歩いていき、左側に下りる階段に差しかかる。
「よし、今だ!」
彼女が階段を下り始めようとした瞬間、恭弥は相手の背中を押すため駆け出そうとした。
「あ!?」
恭弥は思わず足を止めた。階段の下から、黒いTシャツを着た坊主頭の男がすっと現れたからだ。恭弥はうつむき、何事もなかったかのように歩き続ける。
「ちっ……」
恭弥が舌打ちしたところで、ふいに右から左へ向けて突風が吹いた。帽子を被っていたら飛ばされるほどの強さだ。その強風の影響で、階段を下りようとしていた吉野リサがバランスを崩した。
「え!?」
裏返ったような驚いた声が風に乗って響くのと同時に、階段を踏み外したらしい彼女の身体は、両手を宙に投げ出したまま無様に転がっていった。
恭弥は歩道橋の上から、階段を転げ落ちる吉野リサを見つめた。慌てて歩道橋の端まで駆け寄り階段下を見下ろすと、吉野リサが地面に倒れ込んでいた。右足は不自然な角度で曲がっている。
「痛い! 痛い! 誰か助けて!」
悲痛な叫び声が周囲に響き渡る。あの落ち方では、右足以外にも骨折している可能性が高い。
「スマホ、スマホ! あたしのスマホ、どこ!?」
スマホで助けを呼ぶつもりなのだろうか。吉野リサは腕を振り回しながら泣き叫んでいる。恭弥は彼女の周囲に視線を走らせるが、スマホは見当たらなかった。
すると、彼女のもとにベージュのスーツを着たOL風の女性が駆けつけてきた。それを見て、恭弥はすぐに踵を返す。先ほどすれ違った坊主頭の男が歩道橋の上から様子をうかがっていたが、恭弥は素知らぬ顔で脇を通り抜け、歩道橋を下りていった。
少し離れたところで足を止めると、恭弥はふと空を見上げた。
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