【呪い系サイコホラー】こはるちゃん、いっしょに。

てっぺーさま

文字の大きさ
56 / 59
第三章 復讐の始まり

トラップ

しおりを挟む
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない……」
 ワンルームの狭い部屋に、不気味な声が響き渡る。
 やがて、スマホへの録音を終えると、マコが少し照れくさそうに顔を歪めた。
「ちょっと、恥ずいね」
「でも、いい感じだったよ」
 恭弥は素直な感想を口にした。彼女の声には感情がこもっていて、不気味さがしっかり出ていた。演技の才能があるのかもしれないと内心で感心する。
 録音した音声を再生する。
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない……」
 音声が流れたとたん、マコが両手で顔を隠して驚きの声を上げた。
「うわっ、ええ~やだぁ~! あたし、こんな声してんの!?」 
 恭弥はそんなマコを見て笑みをこぼす。
「自分の声って、違って聞こえるからね。でも、お世辞抜きで、いい声してるよ」
「ほんと?」
「うん」
 恭弥はもう一度録音音声を再生するが、マコはいまだ頬を赤らめている。
「うん、悪くない」
「自分の声聞くのは恥ずいけど、この作業、なんか楽しいかも」
「そう? じゃあ、今度はもう少しゆっくりめでやってくれる?」
「おっけー」
 恭弥が録音ボタンをタップしてスマホをマコに向ける。部屋に再び不気味な声が響く。
「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない……」
 表情が声に合わせて険しくなっている。その真剣に取り組む姿を内心で微笑ましく思いながら恭弥はスマホを向け続ける。
 すると、手に持っていたスマホが突然鳴り出した。画面に「雅先輩」の表示。
「あ、雅先輩からだ」
 恭弥は電話に出て相手の声に耳を傾けた。その間、マコが心配そうな目でじっと見つめてくる。
「わかりました。じゃあ、今日中に設置しちゃいます。はい、では」
 通話を終えるなり、マコが聞いてきた。
「雅先輩、なんて?」
「あの女を終電近くまで引き止めてくれるって。だから、今日中に仕込んじゃおうと思う」
「今から行くの?」
「いや、暗くなってからにする。そのほうが目立たないだろうし」
「だね。でも、もし早く帰ってきたら?」
「そんときは連絡がくるよ」
「ああ、そっか」

       *  *  *

 日が完全に沈むのを待ってから、恭弥は隣の部屋に忍び込んだ。
 室内に踏み込んですぐに、改めて雅の協力に感謝の気持ちが湧いた。彼が用意した合鍵がなければ、こう簡単にはいかなかっただろう。
 部屋の照明は点けずに、まずは暗闇に目が慣れるのを待つ。夜目が利くようになったところで、靴を脱ぎ、足音を忍ばせながら奥へ進んだ。間取りは今マコと住んでいる部屋と同じだったため、妙な既視感にとらわれる。
 リュックから荷物を取り出し、座卓の上に並べていく。すべて出し終えると、まずは円筒形の卓上スピーカーを手に取り、浴室へ向かった。アウトドア用のスピーカーで、電源コードが不要のタイプだ。
 浴室に入って天井の点検パネルを押し上げて隙間を作ると、そこにスピーカーを慎重に滑り込ませる。設置を終えて部屋に戻り、スマホを操作して浴室のスピーカーから音を流す。
「ん?」
 いくら耳を澄ませても、浴室からは何も聞こえてこない。音量を少しずつ慎重に上げていく。やがて、かすかな声が聞こえてきた。さらに音量を上げると、恨めしい声がはっきりと聞き取れるようになった。
「こんなもんかな」
 きっと、マンションの住人が寝静まった深夜なら、もっと鮮明に聞こえるはずだ。
 次に恭弥は、白い壁に掛かる時計を外し、裏側に小型の黒い機器を両面テープで貼り付けた。続いて、カーテンの裾にカッターナイフで四センチほどの切れ目を入れ、その中に厚さ五ミリほどの小型機器を忍ばせる。裾の切れ目は両面テープで仮止めし、同じ作業を三十センチほど離れた位置にも施した。仕込んだ機器は信号を送ると磁力が発生し、互いに引き寄せ合う仕組みになっている。
 仕掛けをすべて設置し終えると、恭弥はマコに電話をかけた。
「全部終わった。まず、時計から試してくれる?」
「りょ」
 マコからの返事とほぼ同時に、壁掛け時計がカタカタと動き出した。隣室からの操作でも支障なく動くことが確認できた。
「OK、時計は問題なさそう。次はカーテンをお願い」
「らじゃ」
 すぐにカーテンが大きく揺れた。こちらも正常に動いてくれた。
「カーテンもOK。じゃあ、最後に壁を叩いてくれる?」
「はーい」
 すぐに隣室から壁を叩く音が響いてくる。すべて問題なさそうだ。
「完璧だね。今から戻るよ」
 退散する前に、恭弥は白い棚の上のクマのぬいぐるみをわずかに動かした。



ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

処理中です...