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第五章 破滅へのカウントダウン
依頼
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調査会社の調査により、佐藤が指名するキャバ嬢の詳細がわかった。西崎結亜、都内在住の二十四歳だ。
今回も一週間ほどの調査で五十万ほどの費用がかかった。手痛い出費だ。無駄な支出を抑えるため自力での調査も考えたが、やはり素人の手に負えるものではなく、結局、何度か利用している調査会社に再び依頼した。
リョウ、佐藤、そして今回の西崎結亜と、調査費が立て続けにかさんでいる。金銭的な問題はますます切実なものになってきた。
結婚後、劇団員たちとの食事会ではすべて自腹を切っていたが、今さら割り勘にするわけにもいかず、最近では何かと理由をつけて食事会を断ることも増えていた。そのため、こちらの経済力を頼りにしている仲間たちには申しわけない気持ちでいっぱいだった。それだけに、今回の調査費を無駄にしたくないという思いは強かった。
西崎結亜は、「lounge_ruri_official」というアカウント名でインスタグラムを開設していた。普通に顔出しもしており、客から提供されたシャンパンを並べた写真を連日のように投稿している。フォロワー数は三千人を超え、かなり人気があるようだ。
SNSを顔出しで利用しているくらいだから、水商売を親にばらすと脅しても効果はないだろう。仮に脅しに使えるネタがあったとしても、中途半端な脅迫で警察に駆け込まれたら面倒だ。やはりここは、沢尻の力を借りるべきか——。
* * *
「沢尻さん、ちょっといいですか?」
拓海は廊下にいた沢尻を自分の部屋に招き入れた。
自分の部屋に彼を入れたのは初めてだったが、沢尻はとくに驚いた様子も見せず、いつも通りの落ち着き払った態度を崩さなかった。
「沢尻さん、実はお願いがあって……」
「何でしょう?」
「心配をかけたくないから、麗子には黙っててほしいんだけど……」
「ご安心ください。私は口が堅いほうですから」
どこまで信用していいものか——。拓海にはまだ判断がつかなかった。
「実は、昔ぼくのファンだった女性から、SNSで脅迫めいたことを言われてて……」
これは本当の話だった。ただ、正直なところ、最近はSNSもろくに見ていなかったし、他に悩むべき心配事が山積みだったから、書き込み自体はあまり気にしていなかった。今回の依頼は沢尻の実力を計るためのもので、たとえ麗子に伝わっても問題のないものを選んだのだ。
「なるほど、脅迫ですか」
「そうなんだ」
「わかりました。その手のことに強い人間を知ってますので、連絡を取ってみます」
「ありがとう。あ、それと……」
「何でしょう?」
「その、報酬のほうは……」
拓海がおそるおそる聞くと、沢尻は小さく肩をすくませた。
「その点はご心配なく。前のご主人様が残された裏資金がございますから」
「そうなんだ。それは助かるな」
拓海は金の心配がないと知ってほっとした。正直これ以上の出費は命取りになりかねない。
沢尻が自分のスマホを取り出すと言った。
「すぐに動きますので、SNSのアカウントを教えていただけますか?」
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
今回も一週間ほどの調査で五十万ほどの費用がかかった。手痛い出費だ。無駄な支出を抑えるため自力での調査も考えたが、やはり素人の手に負えるものではなく、結局、何度か利用している調査会社に再び依頼した。
リョウ、佐藤、そして今回の西崎結亜と、調査費が立て続けにかさんでいる。金銭的な問題はますます切実なものになってきた。
結婚後、劇団員たちとの食事会ではすべて自腹を切っていたが、今さら割り勘にするわけにもいかず、最近では何かと理由をつけて食事会を断ることも増えていた。そのため、こちらの経済力を頼りにしている仲間たちには申しわけない気持ちでいっぱいだった。それだけに、今回の調査費を無駄にしたくないという思いは強かった。
西崎結亜は、「lounge_ruri_official」というアカウント名でインスタグラムを開設していた。普通に顔出しもしており、客から提供されたシャンパンを並べた写真を連日のように投稿している。フォロワー数は三千人を超え、かなり人気があるようだ。
SNSを顔出しで利用しているくらいだから、水商売を親にばらすと脅しても効果はないだろう。仮に脅しに使えるネタがあったとしても、中途半端な脅迫で警察に駆け込まれたら面倒だ。やはりここは、沢尻の力を借りるべきか——。
* * *
「沢尻さん、ちょっといいですか?」
拓海は廊下にいた沢尻を自分の部屋に招き入れた。
自分の部屋に彼を入れたのは初めてだったが、沢尻はとくに驚いた様子も見せず、いつも通りの落ち着き払った態度を崩さなかった。
「沢尻さん、実はお願いがあって……」
「何でしょう?」
「心配をかけたくないから、麗子には黙っててほしいんだけど……」
「ご安心ください。私は口が堅いほうですから」
どこまで信用していいものか——。拓海にはまだ判断がつかなかった。
「実は、昔ぼくのファンだった女性から、SNSで脅迫めいたことを言われてて……」
これは本当の話だった。ただ、正直なところ、最近はSNSもろくに見ていなかったし、他に悩むべき心配事が山積みだったから、書き込み自体はあまり気にしていなかった。今回の依頼は沢尻の実力を計るためのもので、たとえ麗子に伝わっても問題のないものを選んだのだ。
「なるほど、脅迫ですか」
「そうなんだ」
「わかりました。その手のことに強い人間を知ってますので、連絡を取ってみます」
「ありがとう。あ、それと……」
「何でしょう?」
「その、報酬のほうは……」
拓海がおそるおそる聞くと、沢尻は小さく肩をすくませた。
「その点はご心配なく。前のご主人様が残された裏資金がございますから」
「そうなんだ。それは助かるな」
拓海は金の心配がないと知ってほっとした。正直これ以上の出費は命取りになりかねない。
沢尻が自分のスマホを取り出すと言った。
「すぐに動きますので、SNSのアカウントを教えていただけますか?」
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