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5章 日月
第三者
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「洞窟内に残されていた食料のゴミに、強い違和感があった。……大人二人が数日間潜伏していたにしては、あまりにも少なすぎるんだ。二人が最初から数日分しか生きることを考えていなかったのか。それとも、第三者からの援助を期待して、自分たちではそれしか用意していなかったのか。……どっちだと思いますか?」
食料が尽きたから絶望して死んだのか。それとも、誰かが食料を断つことで、彼らを死へと追い込んだのか。それとも…。
警察官は、この事件の背後に「第三者」がいる可能性を捨てきれずにいるらしい。
僕は警察官の問に答えられなかった。
警察官は、再度昨日の夜のことを聞かれた。昨日の夜は、学校で陽葵と一緒にいた。けれど、不法侵入していたなんて言えるはずもなく、僕は「家にいました」と嘘をついた。
すると、警官は鋭い目で僕を射抜いた。
「……近所の方の証言では、昨夜、この家に灯りはついておらず、人がいる気配もなかったそうだが」
心臓が跳ねた。僕は慌てて言葉を継ぎ足す。
「……疲れていたから、帰ってすぐに、電気もつけずに寝たんです」
警官は不信感を隠そうともせず、しばらく僕を無言で見つめていたが、それ以上は何も言わずに家を出て行った。
パタン、とドアが閉まる音がやけに大きく響く。
昨日の夜、洞窟に誰かがいた?
嫌な予感が背筋を駆け抜ける。もし第三者がいたのだとしたら、それは一体誰なんだ。
「……警察に、完全に疑われているわね」
栞は深刻な顔で頭を抱えた。隣にいる陽葵も、申し訳なさそうに眉を下げている。
『私のせいでごめんね、悠真くん。警察の人で怖い思いをさせて……』
「いや、陽葵のせいじゃないよ。タイミングが悪かっただけだし。いざとなったら、あの夜は学校に閉じ込められてたことにするからさ」
僕は努めて明るく笑いながら、栞に向き直った。
「栞にだけは迷惑かけないようにするよ。正直に説明しちゃうと、栞のいたずらで図書室に閉じ込められたってことになっちゃうし、それは避けたいしね」
「……別に、私はそれでも構わないけれど?」
栞は淡々と言ったが、僕は断固として首を振った。
「ダメだよ。そもそも俺は犯人じゃないんだから、堂々としてれば問題ない。それより……あの事件、俺以外に陽葵の家に行けた人間、心当たりはないかな。警察が俺を疑うってことは、消去法でそうなりつつあるってことだろうけど、絶対に第三者がいるはずなんだ」
僕がそう問いかけると、隣にいた陽葵の表情が目に見えて強張った。彼女は僕の腕に触れようとして、その手がすり抜けるのを悲しそうに見つめた後、必死な声で叫んだ。
『悠真くん、もういいよ。犯人のことなんて探さないで……!』
陽葵の声は震えていた。
『これ以上、事件の深いところに踏み込んだら、悠真くんまで本当に危ない目に遭っちゃう。私はもう死んじゃったけど、悠真くんには生きててほしいの。お願いだから、これ以上はもう関わらないで……』
必死に訴える陽葵の瞳には、僕を失うことへの恐怖が色濃く滲んでいた。彼女は真実を暴くことよりも、僕の安全を何よりも優先したがっているようだった。
食料が尽きたから絶望して死んだのか。それとも、誰かが食料を断つことで、彼らを死へと追い込んだのか。それとも…。
警察官は、この事件の背後に「第三者」がいる可能性を捨てきれずにいるらしい。
僕は警察官の問に答えられなかった。
警察官は、再度昨日の夜のことを聞かれた。昨日の夜は、学校で陽葵と一緒にいた。けれど、不法侵入していたなんて言えるはずもなく、僕は「家にいました」と嘘をついた。
すると、警官は鋭い目で僕を射抜いた。
「……近所の方の証言では、昨夜、この家に灯りはついておらず、人がいる気配もなかったそうだが」
心臓が跳ねた。僕は慌てて言葉を継ぎ足す。
「……疲れていたから、帰ってすぐに、電気もつけずに寝たんです」
警官は不信感を隠そうともせず、しばらく僕を無言で見つめていたが、それ以上は何も言わずに家を出て行った。
パタン、とドアが閉まる音がやけに大きく響く。
昨日の夜、洞窟に誰かがいた?
嫌な予感が背筋を駆け抜ける。もし第三者がいたのだとしたら、それは一体誰なんだ。
「……警察に、完全に疑われているわね」
栞は深刻な顔で頭を抱えた。隣にいる陽葵も、申し訳なさそうに眉を下げている。
『私のせいでごめんね、悠真くん。警察の人で怖い思いをさせて……』
「いや、陽葵のせいじゃないよ。タイミングが悪かっただけだし。いざとなったら、あの夜は学校に閉じ込められてたことにするからさ」
僕は努めて明るく笑いながら、栞に向き直った。
「栞にだけは迷惑かけないようにするよ。正直に説明しちゃうと、栞のいたずらで図書室に閉じ込められたってことになっちゃうし、それは避けたいしね」
「……別に、私はそれでも構わないけれど?」
栞は淡々と言ったが、僕は断固として首を振った。
「ダメだよ。そもそも俺は犯人じゃないんだから、堂々としてれば問題ない。それより……あの事件、俺以外に陽葵の家に行けた人間、心当たりはないかな。警察が俺を疑うってことは、消去法でそうなりつつあるってことだろうけど、絶対に第三者がいるはずなんだ」
僕がそう問いかけると、隣にいた陽葵の表情が目に見えて強張った。彼女は僕の腕に触れようとして、その手がすり抜けるのを悲しそうに見つめた後、必死な声で叫んだ。
『悠真くん、もういいよ。犯人のことなんて探さないで……!』
陽葵の声は震えていた。
『これ以上、事件の深いところに踏み込んだら、悠真くんまで本当に危ない目に遭っちゃう。私はもう死んじゃったけど、悠真くんには生きててほしいの。お願いだから、これ以上はもう関わらないで……』
必死に訴える陽葵の瞳には、僕を失うことへの恐怖が色濃く滲んでいた。彼女は真実を暴くことよりも、僕の安全を何よりも優先したがっているようだった。
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