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第六話
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第六話
何事もなかったようだ
街は賑やかで活気がある
半刻前にあった出来事を人々は無かったことにしているようだ
魔獣を成敗した者に誰も礼を言わない
助けてもらった少年は咳き込む老人を背負って行ってしまった
一瞬だけだった
老人は振り返って小さく会釈をしたのだ
それだけだった
「これが普通なんだ」
旅館に立ち寄って食事と酒を摂っている
納得がいかない、と顔に出ていたのだろう
冷は盃を飲んで続けた
「ここは谷に近い。腐獣が出ることなんか日常茶飯事なんだ。戦士が斬るのは当たり前。成敗すればまた元通りに振る舞う。何も起きなかったようにな」
「それでも」
「あんたは不思議だな」
「え?」
「腐獣に慣れているのに、いや違うか同情かな」
月詠は唇を噛んでいた
同情、そうかもしれない
「俺だって腐獣の一人だ」
はっとして月詠は顔を上げて正面に座っている男を見つめた
「腐獣にも階級があるのを知っているだろう」
「...はい」
「浄土に近い白級、強欲で暴走する黒級、腐った塊で意志の残っている堕級、土に還る骸。あんたは占いに白級を利用しているだろう」
「はい。私達は守護御霊と呼びます」
「そうだな」
冷は頷いて冷製肉を一切れ口に入れた
数回咀嚼して酒で流し込む
「次からは勝手に動かない。あんたの意思を尊重すると誓約する」
真剣な表情、金環の黒い瞳に吸い込まれそうな錯覚
胸の鼓動が速くなったのを感じた
「陽が落ちる前に出よう」
「...ええ」
二人は席を立つと籠を背負った
街の門が閉まるのが早い
腐獣が入り込むのを恐れて夜は閉門するのだ
当番の戦士達が街を巡回して回る
月詠が精算をして旅館を出ると、人混みに紛れて街の門を出た
これからは北へと進む
二人は街道沿いにゆっくりと歩き出した
辺りは夕暮れに染まり、そして薄暮と変わる
月が昇った
幸いにも満月が近い
月光が道を照らす
月詠は慣れているようだ
しっかりとした足取りだ
その後を半歩遅れて冷が歩いていた
二人は会話も無く、歩く足音が微かにしていた
何事もなかったようだ
街は賑やかで活気がある
半刻前にあった出来事を人々は無かったことにしているようだ
魔獣を成敗した者に誰も礼を言わない
助けてもらった少年は咳き込む老人を背負って行ってしまった
一瞬だけだった
老人は振り返って小さく会釈をしたのだ
それだけだった
「これが普通なんだ」
旅館に立ち寄って食事と酒を摂っている
納得がいかない、と顔に出ていたのだろう
冷は盃を飲んで続けた
「ここは谷に近い。腐獣が出ることなんか日常茶飯事なんだ。戦士が斬るのは当たり前。成敗すればまた元通りに振る舞う。何も起きなかったようにな」
「それでも」
「あんたは不思議だな」
「え?」
「腐獣に慣れているのに、いや違うか同情かな」
月詠は唇を噛んでいた
同情、そうかもしれない
「俺だって腐獣の一人だ」
はっとして月詠は顔を上げて正面に座っている男を見つめた
「腐獣にも階級があるのを知っているだろう」
「...はい」
「浄土に近い白級、強欲で暴走する黒級、腐った塊で意志の残っている堕級、土に還る骸。あんたは占いに白級を利用しているだろう」
「はい。私達は守護御霊と呼びます」
「そうだな」
冷は頷いて冷製肉を一切れ口に入れた
数回咀嚼して酒で流し込む
「次からは勝手に動かない。あんたの意思を尊重すると誓約する」
真剣な表情、金環の黒い瞳に吸い込まれそうな錯覚
胸の鼓動が速くなったのを感じた
「陽が落ちる前に出よう」
「...ええ」
二人は席を立つと籠を背負った
街の門が閉まるのが早い
腐獣が入り込むのを恐れて夜は閉門するのだ
当番の戦士達が街を巡回して回る
月詠が精算をして旅館を出ると、人混みに紛れて街の門を出た
これからは北へと進む
二人は街道沿いにゆっくりと歩き出した
辺りは夕暮れに染まり、そして薄暮と変わる
月が昇った
幸いにも満月が近い
月光が道を照らす
月詠は慣れているようだ
しっかりとした足取りだ
その後を半歩遅れて冷が歩いていた
二人は会話も無く、歩く足音が微かにしていた
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