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第十一話
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月詠の押しかけ友人とやらは口元に苦笑を浮べた
「彼は現在追放中の身なんだ。だから光界には連れていけないのさ」
「追放? 何だってまた」
「ねえ、あっちで話さない?」
続き間の方を指さした
冷は寝息を立てている月詠をチラリと振り返ってから続き間に移動した
居間の長椅子に腰を下ろす
友人とやらは、斜め前にある一人掛けの椅子にゆったりと座り脚を組んでいた
「私は立厦(リシャ) 光界に住んでいる」
「俺は冷(ラン) 月詠について来た」
すると立厦はくすりと笑った
「驚きだよね。一人癖が染み付いているのに、今回は連れがいるなんてさ」
「俺が勝手について来たんだが」
「何か思う所があったのかな。君も普通じゃないし」
声は笑っているのに目が鋭い
「あんたも高徳びとか」
すると立厦は目を見張った
「さすがだね、分かるんだ。君の事は何て呼べいい? 差し詰め、金炎王なんてどうかな」
そう言われて冷は渋面になった
「ただの冷でいい」
「そう? じゃあ、冷、何から話そうか」
立厦はくすくすと笑った
「何も生い立ちから聞こうなんて思っちゃいない。何で腐谷の浄化なんぞやっているんだ」
「それには胸糞悪い理由があるからさ」
そう言って顔を顰めた
「光界の事情なんだ。そもそも腐人や腐獣の浄化は光界のやるべき事なのは知っているだろう」
「ああ」
「のんべんだらりとやっていきたい老人が多くてね。穢れに触れたら大変だと大騒ぎする。だから浄化の術を彫り込んだ剣を人間に渡している。自分達の代わりをさせているんだ。でも、定期的に腐谷の浄化をしないと人間界は腐獣だらけになるというのにさ」
「まさか、貧乏くじを買って出たのか」
「その通り。だけど、量が半端ない。一体ずつ浄化していたらあっという間にこの街は消えてる」
「それでいっぺんに浄化する方法を考えたのか」
「そうなんだよ、無謀だよね。一人で文献を調べて術を組み立てて作り出したんだ」
「成程、姿が揺らぐまで術力を使うわけだが...待った、追放されているんだよな」
「そうだよ。若かった月詠は浄化する時に、まだ不慣れだった事もあって腐獣の影に触れてしまったんだ。悪気のない可愛い兎だったのに」
立厦は忌々しそうな表情だ
「老人達がギャーギャー騒いで誰も影を浄化しようとせずにね。追放千年なんて刑罰を下したんだ」
「千年かけても浄化されないだろう」
「そんな事は分かっているさ。月詠は、これは通名なんだけど、自分で浄化して処分も受け入れた」
「なんて奴だ」
「本当さ。次の光王候補なんだ。だから、目の上のたん瘤って訳。優秀過ぎると要らぬ所で嫉妬されちゃうんだ。わたしみたいに、上手く立ち回ればいいのに」
「俺もそう思うが、それが出来ないんだな」
「性格につけ込まれたね。それでも、術を使って文献庫は閲覧出来るし、移動する際は光界に浮かぶ浮雲を踏んでもいい事に譲歩したんだ。嫉妬反面光王怖さだな」
つ、と冷は眉を寄せた
「何で馬車や徒歩で行ったんだ?」
「それは君の為さ」
立厦は肩をすくめた
「美形の二人連れは目立つし、君は光界に入れば浄化されてしまうかもしれない。現に結界を張っただろう君を守るために」
冷は納得がいった
自分がついて来たせいで余計な心配をさせてしまった
口数が少ないので何を考えているのか察しにくいのだが
あの結界は月詠の優しさだった
「彼は現在追放中の身なんだ。だから光界には連れていけないのさ」
「追放? 何だってまた」
「ねえ、あっちで話さない?」
続き間の方を指さした
冷は寝息を立てている月詠をチラリと振り返ってから続き間に移動した
居間の長椅子に腰を下ろす
友人とやらは、斜め前にある一人掛けの椅子にゆったりと座り脚を組んでいた
「私は立厦(リシャ) 光界に住んでいる」
「俺は冷(ラン) 月詠について来た」
すると立厦はくすりと笑った
「驚きだよね。一人癖が染み付いているのに、今回は連れがいるなんてさ」
「俺が勝手について来たんだが」
「何か思う所があったのかな。君も普通じゃないし」
声は笑っているのに目が鋭い
「あんたも高徳びとか」
すると立厦は目を見張った
「さすがだね、分かるんだ。君の事は何て呼べいい? 差し詰め、金炎王なんてどうかな」
そう言われて冷は渋面になった
「ただの冷でいい」
「そう? じゃあ、冷、何から話そうか」
立厦はくすくすと笑った
「何も生い立ちから聞こうなんて思っちゃいない。何で腐谷の浄化なんぞやっているんだ」
「それには胸糞悪い理由があるからさ」
そう言って顔を顰めた
「光界の事情なんだ。そもそも腐人や腐獣の浄化は光界のやるべき事なのは知っているだろう」
「ああ」
「のんべんだらりとやっていきたい老人が多くてね。穢れに触れたら大変だと大騒ぎする。だから浄化の術を彫り込んだ剣を人間に渡している。自分達の代わりをさせているんだ。でも、定期的に腐谷の浄化をしないと人間界は腐獣だらけになるというのにさ」
「まさか、貧乏くじを買って出たのか」
「その通り。だけど、量が半端ない。一体ずつ浄化していたらあっという間にこの街は消えてる」
「それでいっぺんに浄化する方法を考えたのか」
「そうなんだよ、無謀だよね。一人で文献を調べて術を組み立てて作り出したんだ」
「成程、姿が揺らぐまで術力を使うわけだが...待った、追放されているんだよな」
「そうだよ。若かった月詠は浄化する時に、まだ不慣れだった事もあって腐獣の影に触れてしまったんだ。悪気のない可愛い兎だったのに」
立厦は忌々しそうな表情だ
「老人達がギャーギャー騒いで誰も影を浄化しようとせずにね。追放千年なんて刑罰を下したんだ」
「千年かけても浄化されないだろう」
「そんな事は分かっているさ。月詠は、これは通名なんだけど、自分で浄化して処分も受け入れた」
「なんて奴だ」
「本当さ。次の光王候補なんだ。だから、目の上のたん瘤って訳。優秀過ぎると要らぬ所で嫉妬されちゃうんだ。わたしみたいに、上手く立ち回ればいいのに」
「俺もそう思うが、それが出来ないんだな」
「性格につけ込まれたね。それでも、術を使って文献庫は閲覧出来るし、移動する際は光界に浮かぶ浮雲を踏んでもいい事に譲歩したんだ。嫉妬反面光王怖さだな」
つ、と冷は眉を寄せた
「何で馬車や徒歩で行ったんだ?」
「それは君の為さ」
立厦は肩をすくめた
「美形の二人連れは目立つし、君は光界に入れば浄化されてしまうかもしれない。現に結界を張っただろう君を守るために」
冷は納得がいった
自分がついて来たせいで余計な心配をさせてしまった
口数が少ないので何を考えているのか察しにくいのだが
あの結界は月詠の優しさだった
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