月雨記 〜月詠と黒獅子〜

天王晴風

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第十七話

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帝王は壮年で偉丈夫だ
謁見室で月詠を出迎えると目を見張った
「おお、お美しい」
「ご無沙汰しております」
月詠は軽く膝を曲げて礼の形をとった
何せ重くて自由が利かない
やっと歩ける程だ

「今年は着飾ってこられましたな。よくお似合いだ」
「知人に乗せられました。もう重くって」
鼻に皺を寄せると、
帝王は小さく咳払いをした
「せっかくの美人が台無しですぞ」
言われて月詠は微笑んだ
「その方がよろしい」
「はぁ」
微笑みながら溜息をつくという技に帝王は声を上げて笑った

「そろそろですかな」
この部屋は密室だった
帝王が政務を行う謁見の間とは別の部屋だった
内から鍵をかけると外から扉は開かない

部屋の奥が明るくなった
光は収縮して人形になる
白い飾り着を着て頭には高い帽子を被っている
年齢は見た目では冷くらいだろうか

「いらせられませ、光王よ」
「ご健勝のご様子で何より、帝王殿」
二人が挨拶を交わすと月詠は膝を着いて礼の形をとった
「ご報告致します」
凛とした声で月詠は続けた
「腐谷の浄化を行いました。ですが、量が年々増えております。増援を求めたいのですが...無理を申しました」

「いや、腐谷の腐獣が増えている事は承知しているし問題だ。そなたの言う通り増援を送りたいが適任者がおらぬのでな」
「承知しております。回数を増やす方向で考えております」
「力になれなくて済まぬ。浄化隊の志願者は引き続き募ろう」
「ありがたきお言葉です」

「それではお二人でお話し下さい」
帝王は光王に会釈して謁見室から出て行った

「月詠よ、苦労をかける。立廈から報告を貰った。力を使いすぎたと」
「大丈夫です。知人のお陰で養生させてもらいましたから」
「そうか」
光王が深い溜息をついた
「その知人は腐界びとだろう」
流石だ
月詠に残る腐界びとの気配を感じ取ったのだ

「彼等は私達と変わりません」
きっぱりと言うと光王は渋面になる
腐界びとと交流を持つことを思わしくないのだろう

「彼等は必死です。存在を守ろうと厳しい道を歩んできたのです。だから、言わないでください」
腐界びとというだけで蔑視されるのは嫌だ
こんなに綺麗に着飾らせてくれたのだ
世話をして貰って何が悪いと言うのだ
月詠は腐界びとというだけで、まるでイジメのように対する光界人が嫌いだった

月詠の心の声が聞こえたのかもしれない
光王は渋面のままだ
「今年で千年になる。戻ってくるな?」
「はいとは言えません」
「月詠よ」
「また何かの理由を付けて追放されるでしょう」
「そう、ならないように望みたい。次は光界の謁見の間で会おう」
「はい」
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