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第十六話
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会談の日が来た
月詠はぐっすり眠っていたところを叩き起こされた
「なんですかか、もう」
腕を引っ張られて渋面になる
引き起こされて女の使用人達は寝巻き姿のまま浴室に連れて行った
寝巻きを剥ぎ取られそうになって、月詠は完全に目が覚めた
「自分でやりますからっ」
女達は不満そうな顔で浴室から出て行った
それを確認して寝巻きを衝立に掛けて浴槽に入った
「うはぁ」
月詠は花を摘んだ
湯面に沢山の薔薇の花弁が浮いているのだ
それを掬って湯の中に落とした
「今は薔薇の季節じゃないのに」
僅かだが香油の香りもする
せっかくなのでゆったりさせてもらおうと目を瞑った
トントントン
扉を叩く音だ
目を開けて扉の方を見ると声がした
「朝食を召し上がって下さい」
「やれやれ」
月詠は浴槽から出て体に付いた花弁を湯の中に放った
浴布で体を拭いて湯上がり着を着る
浴室の扉を開けると、女達が待ち構えていた
腕を引っ張られて今度は食堂に連れて行かれる
椅子に座らされると温かい茶が出された
香りが清々しい茶に口つけると、髪を引っ張られた
「いたた」
「じっとして」
「そんなに引っ張られたら食事が出来ないよ」
「食べなくても大丈夫ですよ」
女達は月詠の髪の水分を手拭いで叩き取られて首がカクカクしてしまう
これでは茶が飲めない
髪が乾くのを待って、やっと食事が出来た
女達は髪に髪油を丁寧に塗りこんで櫛で何度も梳く
それは任せて少ない朝食を平らげた
「書室でお着替えを」
「はい」
席を立つと女達が着いてくる
書室に入ると扉が閉められた
衝立に用意された上下の下衣を着ると女達が突入して来た
「なっ?!」
訳もわからずに服に袖を通させられる
何枚着せられたのか
飾り帯を絞められて吐き気がした
「きつい」
「まだあります」
「ええっ」
一旦着せられた衣装を見てみると刺繍が散りばめられている
ずっしりと重いので金糸や銀糸だろう
「さあ、これを」
女三人で持ち上げたのは、絢爛豪華な飾り着だった
「ちょっ、重いよ」
飾り着を着せられてさらに肩掛けまで乗せられた
重い
衣装が重いなんて言えるのか
葛藤していると、仕上げとばかりに簪が髪に刺される
髪飾りをだけでいいのに...
「おお、美しいな」
様子を見に来た冷ははしゃぐように笑った
「着せ替え人形は楽しいですか」
あまりの重さに肩凝りがしてきた
不機嫌な月詠に冷は笑顔だった
「以前から用意しておいたんだ。刺繍やビーズの縫い取りには時間が掛かるからな。綺麗にしてもらって良かったな」
ふてくされた月詠が書室から出ようとすると
「歩幅は半分に。座る時はお手伝いします」
「はぁ」
月詠は手伝って貰って鏡台の椅子に座った
やっと休めると思いきや、今度は顔を撫でられる
この感覚、妓楼のお姐さん達と同じだ
肌をスベスベにする軟膏
次はキメを整えるとかいう軟膏を塗られ
白粉をはたいて頬紅粉も
唇は油を薄く塗った
あの紅を思い切り塗られたらどうしようかと思ったのだが、それは安心した
やっと終わったらしい
頭も重くて前屈みになりそうになると
「背筋を伸ばして」
月詠はピンと背を伸ばした
髪に刺された簪の飾りが揺れて華奢な音がした
女性に反抗してはならないという誰かが言っていた格言を思い出した
正しくその通りだ
出来栄えを見て冷は嬉しそうだ
満足していると言いたげな顔をジロリと睨む
「いついかなる時も微笑みを忘れずに」
しっかり注意された
仕上げに靴を履かせて貰った
冷に手を引かれて歩き出す
「このまま祝言を挙げるか」
「嫌です」
店に出ると丁度迎えの馬車が来た
店内の使用人達も偶然居合わせた町民も月詠の美しさに見惚れていた
燕茈に手を添えられて馬車に乗り込む
帝城の紋を見て誰もが興奮する
「帝王の新しい奥さんかな」
「皇子様かもしれんぞ」
と好き勝手な会話が聞こえてくる
見送りに出て来た冷を無視する
わざとだ
こんな目に合わせたので仕返しのつもりだった
馬車が出発すると、見物していた人々は散って行った
月詠はぐっすり眠っていたところを叩き起こされた
「なんですかか、もう」
腕を引っ張られて渋面になる
引き起こされて女の使用人達は寝巻き姿のまま浴室に連れて行った
寝巻きを剥ぎ取られそうになって、月詠は完全に目が覚めた
「自分でやりますからっ」
女達は不満そうな顔で浴室から出て行った
それを確認して寝巻きを衝立に掛けて浴槽に入った
「うはぁ」
月詠は花を摘んだ
湯面に沢山の薔薇の花弁が浮いているのだ
それを掬って湯の中に落とした
「今は薔薇の季節じゃないのに」
僅かだが香油の香りもする
せっかくなのでゆったりさせてもらおうと目を瞑った
トントントン
扉を叩く音だ
目を開けて扉の方を見ると声がした
「朝食を召し上がって下さい」
「やれやれ」
月詠は浴槽から出て体に付いた花弁を湯の中に放った
浴布で体を拭いて湯上がり着を着る
浴室の扉を開けると、女達が待ち構えていた
腕を引っ張られて今度は食堂に連れて行かれる
椅子に座らされると温かい茶が出された
香りが清々しい茶に口つけると、髪を引っ張られた
「いたた」
「じっとして」
「そんなに引っ張られたら食事が出来ないよ」
「食べなくても大丈夫ですよ」
女達は月詠の髪の水分を手拭いで叩き取られて首がカクカクしてしまう
これでは茶が飲めない
髪が乾くのを待って、やっと食事が出来た
女達は髪に髪油を丁寧に塗りこんで櫛で何度も梳く
それは任せて少ない朝食を平らげた
「書室でお着替えを」
「はい」
席を立つと女達が着いてくる
書室に入ると扉が閉められた
衝立に用意された上下の下衣を着ると女達が突入して来た
「なっ?!」
訳もわからずに服に袖を通させられる
何枚着せられたのか
飾り帯を絞められて吐き気がした
「きつい」
「まだあります」
「ええっ」
一旦着せられた衣装を見てみると刺繍が散りばめられている
ずっしりと重いので金糸や銀糸だろう
「さあ、これを」
女三人で持ち上げたのは、絢爛豪華な飾り着だった
「ちょっ、重いよ」
飾り着を着せられてさらに肩掛けまで乗せられた
重い
衣装が重いなんて言えるのか
葛藤していると、仕上げとばかりに簪が髪に刺される
髪飾りをだけでいいのに...
「おお、美しいな」
様子を見に来た冷ははしゃぐように笑った
「着せ替え人形は楽しいですか」
あまりの重さに肩凝りがしてきた
不機嫌な月詠に冷は笑顔だった
「以前から用意しておいたんだ。刺繍やビーズの縫い取りには時間が掛かるからな。綺麗にしてもらって良かったな」
ふてくされた月詠が書室から出ようとすると
「歩幅は半分に。座る時はお手伝いします」
「はぁ」
月詠は手伝って貰って鏡台の椅子に座った
やっと休めると思いきや、今度は顔を撫でられる
この感覚、妓楼のお姐さん達と同じだ
肌をスベスベにする軟膏
次はキメを整えるとかいう軟膏を塗られ
白粉をはたいて頬紅粉も
唇は油を薄く塗った
あの紅を思い切り塗られたらどうしようかと思ったのだが、それは安心した
やっと終わったらしい
頭も重くて前屈みになりそうになると
「背筋を伸ばして」
月詠はピンと背を伸ばした
髪に刺された簪の飾りが揺れて華奢な音がした
女性に反抗してはならないという誰かが言っていた格言を思い出した
正しくその通りだ
出来栄えを見て冷は嬉しそうだ
満足していると言いたげな顔をジロリと睨む
「いついかなる時も微笑みを忘れずに」
しっかり注意された
仕上げに靴を履かせて貰った
冷に手を引かれて歩き出す
「このまま祝言を挙げるか」
「嫌です」
店に出ると丁度迎えの馬車が来た
店内の使用人達も偶然居合わせた町民も月詠の美しさに見惚れていた
燕茈に手を添えられて馬車に乗り込む
帝城の紋を見て誰もが興奮する
「帝王の新しい奥さんかな」
「皇子様かもしれんぞ」
と好き勝手な会話が聞こえてくる
見送りに出て来た冷を無視する
わざとだ
こんな目に合わせたので仕返しのつもりだった
馬車が出発すると、見物していた人々は散って行った
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