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その1(ウラ)
しおりを挟む彼女が死んだ。
それは、僕にとっては耐え難い地獄の始まりだった。
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幼少期。伯爵家に生まれた僕の生活環境は劣悪だった。
膨大な魔力持ちであることに加え、母親は平民だったため、決して後継者としては育てられずその膨大な魔力を伯爵家の利益にだけ使うように囚われ、搾取されていた。
そんな環境が変わったのはある女の子が僕を救ってくれたからだった。
「あなた、大丈夫かしら」
ある冬の日。
その日は魔物討伐戦に駆り出されていた。
事前調査ではB級だと言われていた魔物が実はS級の魔物であり、兵は壊滅状態、僕の魔力も底をつきかけなんとか魔物を倒すもこれはもう自分の寿命も長くないなと悟った。
ふわりふわりと雪が舞う中、なんとか街に戻ったはいいものの、路地裏で力尽きていた時だった。
真っ白な空に真っ赤な何かが混じる。
赤いポンチョに赤い帽子
女の子の長く柔らかいブロンドの髪に雪がふわりと着く。
心配そうにこちらを伺う少女。
それは天使に見えた。
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その後、公爵家に保護された僕は伯爵家に劣悪な環境で育てられていることが知られ、そのまま少女と公爵家の領地で過ごすことになった。
彼女と過ごせたのは冬が過ぎ春が過ぎ夏が終わるまでだった。
それでも貴族として、公爵家の令嬢として恥じないよう芯の通った彼女に、初めて温もりをくれた彼女に、恋をするには十分な時間だった。
夏が過ぎ、魔塔に引き取られた僕はいつか彼女の役に立てるようになろうと心に決めた。
時が過ぎ、彼女と別れて7回目の冬が終わった頃。
春から王立の学園に通うことになった。
大抵の貴族は通うことになっている。
彼女もいるだろうか。
胸に秘めた想いを燻らせながら、入学式に向かう。
久しぶりに見た彼女は綺麗で、相変わらず凛としていた。
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彼女は王太子の婚約者だった。
自分が近づいてはいけない存在。
今の地位を努力で積み重ねて勝ち取ったのだろう、立ち居振る舞いは堂々としていて何者にも劣らない彼女はより一層輝いていて、より一層自分とは遠い距離にいた。
そんな時だった。
ピンクブロンドのあの女が近づいてきたのは。
「私、サリーって言います!あの、貴方の魔法を見て、凄いなって思って...それで!」
純粋そうで無垢そうで、それでいて全てが計算され尽くした男に媚びを売る生き物。
その生き物が、僕の手を取る。
不意に視界の端に動くものを捉えて、ふと顔を上げると
そこには傷ついたような、戸惑っているような顔をした彼女が遠くに立っていた。
その顔に
彼女のほのかな嫉妬心に
胸がひどく高揚した。
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「何度言えばわかりますの?貴女、貴族としての自覚はおありになって?そこで反省しなさいな」
ピンクブロンドの生き物と仲良くすればするほど、彼女、リズのピンクブロンドへの叱責が苛烈になっていった。
ピンクブロンドが王太子に近づいた時でさえ、ここまでではなかった。
王太子への優越感。
高貴な彼女が、自分のために醜く卑劣になる高揚感。
決して結ばれることはないだろうけど
今だけはこの気持ちに浸っていたかった。
そんな醜い自分への罰だろうか
「エリザベス・フォン・ホリス!お前を死刑とする!」
彼女が断罪された。
ピンクブロンドを殺そうとした罪で。
刑を言い渡された時、少しだけ笑ったピンクブロンドを見逃さなかった。
絶対に殺させない
絶対にーーーーーー
刑執行の間際
確かに目が合った。
彼女と。
振り下ろされた鉄の斧と
彼女の首と
体を見た瞬間
自分の中の魔力が爆発した。
気がつけばあたり一面焼け野原になっていた。
刑を執行した者も
刑を見ていた群衆も
刑を言い渡した王太子も
醜いピンクブロンドもいない
彼女も、いない。
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