Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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狂ったモノに生まれる葉

これはバクなのか、世界の終わりを意味するのか

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 1.800.090年、19号線世界。
 色んな奇跡の病気が進行し、私達、記録兵レコーディングドールは、この汚染された世界を記録している。私達の仕事は後世に残す為、各地の物や出来事を記録していく。

 そこに、人という感情を持つことも持たない事も自由とされている。
 1つのルールを第一に考える事を課され、私達は生きていく。


『人間に歯向かうことは許されない。
 人間を導くことも許される事はないとみよ。』


 それが、私達のあるべき姿。


「3.29(さんてんニークン)!
 記録した~?」
 長い1本の三つ編みをしたチャイナ系の服を着た、一見人間に見える物は、私の先輩だ。
 つまり、記録兵レコーディングドールだ。

「はい。
 2.99号先輩」
 望遠鏡を持って、崩れかけた城から下へ眺める先輩の代わりに、紙に書き記す。記録兵レコーディングドールにしか読めない文字で書き終わると、紙が薄い水色の光を放ちながら消える。
 私は空を眺める。これは癖というものだ。

「では、行きますか?」
 ペンを胸ポケットに入れて、小さい箱型のリュックを背負い直す。

「ほいほ~い♪
 あと、いつも言ってるじゃん♪
 2.99(にーてんキューキュ)先輩って!」
 その呼び名…言うのすごく恥ずかしいからやなんだけれどなぁ… そんな事を言うのはご法度なんだけれど…すごく言って欲しい顔をしている。

「はぁ…2.99(にーてんキューキュ)先輩。
 これでいいですか?」
「はい!宜しい♪
 お?次は、破損して壊れた先輩の引き継ぎらしいよん♪」
「また…ですか。」
「そのおかげで、私達の後輩が出来るんでしょ~?」
「それでも…」
「ちーがーうっ!
 それでも じゃなくて!そういう事にしなさい。」
「は、はい…」
 そう。私達は高性能の兵器である為、生産はそんなに出来ない。
 何百年何万年も保たせる機能もあるようで、そういったものでも量産が出来ず、一定数の数しか用意出来ず、減れば足すというシステムだ。
 それなのに、人間は私たちを破損させる遊びをする事が1部だけど居る。そんな輩のせいで、私達はよく破損する。


「ほら!さんてんニークン!
 行っくよ~♪」
 城の城壁を器用に降りる先輩は、本当に綺麗な人形だ。
 私は和国の学生服で、黒髪で目つきが悪い。先輩はホンワカした顔立ちで私とは正反対だ。

「あ…私も」
 少し感傷的になっていたせいで遅れた。先輩の後を追ってついて行く。



『引き継ぎ、完了しました。』
 そう言って、私達は記録装置の箱に手を添える。目の中に情報が入る。いつやっても、この引き継ぎは変な気分になる。怖いくらいの情報が手から伝わって、私の箱型のリュックに入っていく。
 この箱は、私達の命にも変えられないほどの大きな存在だ。先輩も、平気な顔をしているけれど、辛そうな空気がする。

「──っ?!」
 膨大な情報と共に何かが入った。ウイルス…では無いはず。でも、これは…、先輩を見る。

「ん?どうした~?
 あ!まだ慣れないんでしょ~?」
 いつもの先輩だ。この症状があれば先輩ならすぐ分かるはず。でも、先輩は何も変わらない。なら、これは、気のせい…?

「あ、いえ。
 別に…っ?!
 せ、先輩?!」
 先輩に文字が見える。1、8、3?という文字と文字盤が見える。

「何かあったの?!」
「せ、先輩?1、8、3ってどういう……」
「へ?!1、8、3……?
 …上に報告する。それでいいよね?
 まず、メンテナンスから。記録は私の方でする。後から来て?いい?」
「はい。すみません…」
「大丈夫。すぐ分かると思うし、ウイルスならすぐ取れると思うからね」
 頭を撫でる先輩は、いつもよりも頼もしく感じる。先輩が報告した後、私は近くの拠点に向かった。




 結局、分からなかった。ただ、ある病気と類似してる事が分かった。「リミットタイムアイ」という奇跡の病気で、瞳に時を刻む針と文字盤が浮かび上がり、その瞳に映るそれは、瞳に映し出すものたちのタイムリミットだ。
 しかし、それを見続けてしまうと自分の生きる時間をも忘れ、死ぬ時期すらも忘れてしまい消えていく病だ。

 これは、人間にしか通用しない病のはず。だけど、記録兵レコーディングドールという私にも類似した病状がある。それを意味することは、私には記録されるべき物とされる事。

「先輩に報告しないと…」
 先輩の位置情報を掴んで向かう。何故か涙が溢れた。何も生み出さないこんな機械人形が、許されるのかも分からないくせに。と、何度も何度も自問自答しながら走る。


「お?おかえり~♪
 遅かったね~♪
 どうだった?」
 そう。先輩にはまだ分からない。分かるはずがない。でも、確実に終わりが来ていることを示している。183というのは、そう。先輩が消えてしまうリミット。私のリミットは書かれていなかった。着々と秒針が進むのに、数字が書かれていない。


「先輩…。
 私、記録兵レコーディングドールなのに、私は記録される側になりました。」
 先輩を直視出来なくて、服を握りしめる。

「そっか♪
 それなら、私が記録してあげるよ♪
 あとは?もうない?」
「え…?」
「ん?まだあった?」
 何ともなかったように話す先輩に、私は拍子抜けする。 いや、そうせざるを得ないほど軽いから…。

「いや、無いですけど…軽く…ないですか?」
「え、もっと重大的に言った方が良かった?
 余計に悲しんだり、抱きしめたり、泣いた方がいい?」
「それは…」
 それは嬉しい。嬉しいけど違う。私にそんな情けはいらないから。私と先輩は記録される側とする側だから。私は記録し、記録される側。それなら、私はいつも通りにすればいい事。
 いつか、先輩には恩返しをしなければいけないな。



───────
???年後


 豪邸の中、私は走っていた。
 奴隷として、忌み子や大罪をおかした者の家族などを地下の檻に閉じ込める大臣の豪邸を記録していた時だった。
 先輩が捕まった。
 理由は、許可なく記録をしたから。本当は、性的暴行を与えたくて捕らえただけの、不純な理由だ。

 私は、記録兵レコーディングドールとしての、『歯向かうことをしない』というルールを破り、檻に閉じ込められた人間達を解放した。
 人が全員外に出て先輩と逃げ出す時、ほんの一瞬の事だった。先輩が私を庇った事だけ覚えている。何も分からず、私が周りを見ると天井が崩れていた。
 先輩の下半身は潰れて、先輩の記録装置の箱のショルダーバッグだけが守られていて、私も無傷だった。


 私は、あの男を許さないと感じた。それは、人間で言う憎しみそのもので、気持ち悪い笑みを見せるその男に向かって、私は殴り殺した。
 どうせ、私は普通の記録兵レコーディングドールではないから、大目に見られる。
 壊されたっていいから。
 だから、先輩のトドメを刺したっていいでしょ?



 私は先輩に駆け寄る。
「先輩?」
「な~に?」
 震える手で先輩の手を握る。

「先輩。なんで、そんな顔をするんですか?」
「先輩だからだよ♪」
 先輩が笑う。

「先輩」
「どうした~?」
「先輩がそんな顔したら、私は笑えないです。」
「あはは、笑いなさい~」
 横たわる先輩は、ずっと笑っている。上半身しかない先輩。でも、ちゃんと記録装置の箱は無傷だ。先輩が私と共に守ったから。

「私が何もしなければ…っ」
「ふふふ♪そんな後悔しないで?
 君があの行動をしなければ、皆殺しだった。量産される私達兵器1人いなくなったとしても、それだけの犠牲で大勢が助かるなら、それでいいの。
 ほら、さんてんニークン?君が見た、私のリミットは、増えてたんでしょ?
 それは、君のおかげ。すごい事なんだよ?
 人と換算したら、運命を変えたんだよ。その小さな体で、色んな人の運命を見てきて、変えてきた。
 本当に…とっても、とっ、ても。すご、イ。事。」
 あと少しで先輩の針は0になる。私の大粒の涙が溢れて先輩の顔に何度も零れ落ちていく。

「ふふふ♪もうすぐ、なんで、ショ?
 いつも、ありがとうね。
 本当…に、ありがトネ。さんてん、ニークン♪」
「へ?!
 せ、先輩っ!!
 ──っ!うああぁぁぁぁぁあっ!!」



私は、初めて時間というものが何もかも感じなくなった。



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