Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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綺麗な実をつける葉

リグレット・ファントム

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 青梅雨あおつゆが綺麗で、私は空を見上て公園の岩へ寝転ぶ。眩しくて目が開けられないのを必死に手でかざしながら、太陽を見つめる。

 あんなにも、生き生きと太陽は張り切って照らすものだから、木々がぐったりとしてる。
 透ける手を不便だと感じる事なんて、考えもしなかったけど、日差しを遮るのにはなんだか役に立たない事に少しムッとする。


 公園の子供達はいつの間にか、家でゲームをするようになって、ここの公園は私一人だ。
 たまに犬の散歩で遊ばせてるご老人だったりを見つけるけど、犬に吠えられるのも少なくなった。
 もしや、私は慣れられてしまったのでは…?と、感じながら、いいのか悪いのか判断が出来ない。
 これも、この日差しのせいにしてしまおうと、考えるのをやめた。


 話す相手も居ない私には、独り言も増えてきた気がする。
 それと、段々と私の色が増えてきたように思える。


 昼寝も飽きて、違う場所へ行こうにも、思いつかない。
 汗ばんできた背中と首筋に嫌気がさして、風がよく吹く場所へと向かう。
 1番好きなこの風景は、今は寂しく感じた。


 屋上のコンクリートに座って、ただ空をボーッと眺める。
 ただ、ずっとこうしてないといけない訳じゃない、それでも、やけに綺麗な空模様がボヤけて見えた。


 ガチャッ。と、音がした方を見る。

「リグ、見ろよ。
 今日はやけに綺麗な空だよ。」
 猫を抱えた貧弱そうな少年が来た。咄嗟に隠れると、さび柄の猫。おそらく〖リグ〗という猫が私の方へ向かってくる。
 正直来ても少年は気づくことなんてないか。と、「リグ」に挨拶をする。

「あ!リグ?
 どうした?
 今日は空見ないの?」
 この少年は、この〖リグ〗の飼い主なのだろうか。と、考えながら〖リグ〗に耳打ちをする。

「ほら、行っといで。
 君の飼い主君、寂しがってる。」
 伝わるか分からないが、優しく言うと〖リグ〗はトテトテと、少年の方へ向って行った。
 「ふふふ♪」と、小さく笑って少年達を眺める。久しぶりに同い年くらいの男の子と会ったことに、少し変な感じがした。



 いつの間にか、夜になって星空を見ながら、あの公園へ向かう。
 別に拠点では無いけど、公園が1番落ち着くから。

「また明日もあの屋上へ行ったら、会えるかな。」
 そんな事をポツリと零す。
 少し笑って、「いや、やめとこう。」そう言って目を閉じて、空気と音、匂いを全身で感じた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 季節が変わって、今は立秋の後にも残る暑さ。髪の毛を結った部分が熱気が籠って、頭が沸騰しそうになるほどだ。
 久しぶりにあそこに行こう。そう決めて、屋上へ向かう。

 屋上へ着くと、歌声が聞こえた。
 あの貧弱そうな少年を思い出して、「しまった」と、思いながら隠れる。
 あの少年の事を忘れて呑気に来てしまったが、仕方ない事。
 気づかれないようにコソコソと涼しい場所を探す。

「ん?
 リグ、どうした?」
 ニャ~!と、甘えた声で私の方へ近づくのを嫌でも感じた。
 逃げよう。そう思って逃げようと足を動かした瞬間そこにあったバケツを倒してしまった。

「?!」
「えっ」
 音にびっくりしたのか、〖リグ〗は少年の腕にすっぽりと入っていて、しっぽはボワッと、逆立っている。

「え…っと、だ…れ?」
「え、あ、その…」
 少年は私を見てビックリしたが、私はその倍に驚きと動揺が隠せなかった。

「あの……勝手に入ってごめんなさい。」
「別にいいよ。
 で、君は?」
「え…?」
 初めて聞かれた。私の名前を聞くような人なんて、久しぶりだから。


春祝はるの しゅう
「ふ、フルネームまで?!
 あ、じゃあ、ぼ…俺は、山國やまくに 風弥ふうや
「なかなか聞かない名前ね。」
「普通、名前聞いた時は、褒めるのがいいと思うけど?」
「え、あ、つい独り言が…」
「はは、いいよ、率直な言葉だったんだって分かったから。」
「ごめん。」

 名前を打ち明けてから、急に距離が近くなった私達は、夕方になると風弥は「また明日来て」と言った。
 私は、「うん」とは言えなくて、困りながら「気が向いたら」と、伝えて風弥と別れた。


 いつか、言わないといけないことが、きっと来る。でも、風弥は私とは違うから。
 そう言い訳を何度も何度も心の中で言い合う。


 人に見られる事が久しぶり過ぎて、浮かれてしまっていた自分を恥ずかしく思った。
 世界は変わり続けているのに、私はずっと止まったままだから。

 止まった時間で生き続けてる私を見つけ出してくれた風弥を、もうこれ以上私と居てはいけないと、固く強く思う反面、ずっと一緒にいてリグと遊んでたい。そう感じた。


 きっと、これは、恋に似た感情でしかない。


 そう感じて、でも、止められなかった。
 移りゆくこの世界で、私だけが止まったままの世界を、風弥が受け入れてくれるまで待つことにしようと考えた。


┈┈┈┈┈┈┈┈

 あれから毎日遊びに行く仲で、風弥は相変わらず貧弱だ。
 風弥といれば、私は自分が生きてるように感じた。進む時間の世界にいるように感じて嬉しくて…あの感情が増えていく。

 それと同時に、風弥は体調を崩すようになった。リグも、隠してはいるけど、少し不注意になってきてる気がする。

「大丈夫だから。気にするな」
 そういう風弥は、無理に笑ってる顔がどうしても離れなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈



 止まっていた時間の私を、動いている生きた時間に居させてくれてる代償なのだと気づくのは、そう長くはなかった。
 大切な人達と一緒に居ないのが、1番その人にとっていいのなら、私は風弥とリグから消える事を決断した。


 心が壊れてしまいそうで、でも、何故か少し誇らしくて、辛くて、もう会えない苦しさを久しぶりに感じた。
 手紙を書くことにしたけど、そんなの書けないから、無言で立ち去ることにした。

 ただ、一言言えるのなら、なんて伝えよう?そう考えながら、風弥とリグとの最後の日を過ごす。


「じゃあ、また明日な!」
「うん。」
「どうした?」
「いや、本当はもっと居たいなぁ。って」
「えっ!!」
 本音を出してしまった事に気づいて、私達は黙り込む。


「……じゃあね」
「え、あ、そうだな。
 また明日!」

 最後に何か付け足したかったけど、そんなの、私を探して小さな思い出…いや、あったような無かったような思い出として認識して欲しかったから、いつものように別れを言った。





 あぁ、今出てきた。
 一言言う言葉。




【私も、生きてたら風弥とずっと居たかった。】





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