Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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幸せの前後に出来る葉

ずっと枝分かれが出来なかった、ある男女の愛歌

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プルルルルルル

 携帯の着信音とバイブ音が部屋に響く。
 ベッドに寝ていた私はゆっくりと起き上がって、着信元を確認すると元彼だった。

 別に未練なんてないから、溜息をつきながら電話に出てしまう。


《ごめん、寝てた?》
「別に起きてたよ?」
 少し嘘をついた。元彼の懐かしい声と外にいるのか風の吹く音がした。

《そっか、俺今お前の家近くにいるんだけど、今日泊まりたい。》
「そう。なら、準備してる。」
 馬鹿だな。と、自分に言いながら、(これは友達としてだから。)(未練があって、そういう事をしたい訳じゃないから。)と、言い訳を心の中で言い続ける。

「はぁ……。馬鹿だな…」
 そう言いながら、お風呂の用意をして服を着替える。綺麗な服を着ながら、あの頃着たTシャツのワンピースを着た。
 そういう気はしてない。つもりでいて、私はまだ復縁を心のどこかで感じてるのを分かってた。
 あれだけ傷付けて、あれだけ縛り付けた元彼は、あっさり三股して私を捨てたやつだ。
 私はそれでもまだ、好きなのかもしれない。そう思いながら、冷蔵庫に何が入ってるか確認した。
 おつまみ系もお酒も、普通の料理も出来そうなものが入ってるのを確認して、部屋を少し片付けた。
 散らかってはあまりないからいいけど、馬鹿な私は何か期待をしてしまってる気がした。


《来た。》
 それを見て、無言でドアを開ける。

「来た。酒、飲むだろ」
「いいよ、あたし今日は飲みたい気分じゃないし。」
「ふーん」
「今日どうしたの?」
「…はぁ。別に、疲れたから」
「彼女は?待ってるんじゃない?」
「はぁ…別にいいだろ」
 そう言いながらネクタイを少し下げて、部屋に入っていく。
 すると、私の狭い部屋の中で1番落ち着くベッドに座って、私を隣に座るようこっちを見てくる。

「……何してるの?」
「え、別にいいだろ」
「いや、良くないから。」
「ほら。こういうの好きだったろ?」
 そう言いながら私の背中に回って後ろから抱きしめてくる。

「やめてよ。」
「ん~?こういうの嫌いだった?」
 優しく言いながら、私を強く抱きしめつつもっと密着する。
 これで流された事は何度もあった。また流されるのは嫌なのに…

「だ、だから、泊まるんでしょ?
 ベッド使っていいから、あたし下で寝るから。」
「どうしたんだよ
 一緒に寝たらいいだろ?」
 少し笑いながら、誘ってくる。

「ほら、あの頃みたいに愛し合お?」
「い、いゃ…」
「ん~?いいじゃん」
 そう言う彼は、本当に嫌い。




「あの頃に戻らないか?」
 そう言って、家から出ていく彼を見て、(あぁ、そういう所。本当にやだ)そう思いながら否定出来ない言葉しか出てこなかった。

「…ごめん、考えとくね。」
「ん、好きだよ。」
「うん、好き」
 彼と、私の言ってしまった言葉は、私の思考を止めてしまうのを彼は知ってるかのように、彼は軽々しく「好き」なんて言うんだろうな。


 もう、あの頃のような2人になれない。そんな事を分かってて、あの頃のようにキラキラした感情も湧かないのを知ってて、それでも一時の2人の居心地が良いだけのこの関係は、本当に辞めたいのに辞められなくて…、どう動けばいいのかも分かってるのに動き出せない馬鹿な私は、早く消えてしまいたい。



《もう、家に来ないで》
 苦悩の末にやっと出た文字。通話なんてしたら、丸め込まれるから。

《なんで?》
 その言葉が私の胸へ突き刺さる。

《いや、もうこんな関係嫌だから。》
《だから、あの頃に戻るんだろ?》
 分かってるよ。そんな事。

《あの頃に戻りたいって言ってもさ、結局変わりなんてないんでしょ?》
《は?何言ってるか分からない。》
 ふと、私の語力のない文面で、怒らせた事を思い浮かべる。それなら、笑って馬鹿にしてくれれば良かったのに。まぁ、馬鹿にしてはいたんだろうな。

《だから、結局今と変わる様なことは無いんでしょ?》
《当たり前じゃん。》
 狼狽える様子のないその文字は、私をこの話をするのを諦めさせようとしてるように感じた。

《なら、もういい。
 もう来ないで。》
《は?意味分からない。》
《あの頃のような、あの日のような私達になんかなれないんだよ。》
《は?なれるって。》
 イライラしてるのを感じて、私は怖くなった。

《もう無理だよ。》
《無理じゃない》
 《傷つけられてる私を》と、打って一気に文字を消した。

《いっくんと居ても、幸せを感じる事なんて出来ないの。
 きっと、これからも》
《そんなの分かるわけないだろ!
 先の事なんて、お前だって分からないだろ!》
《分かるよ。
 付き合ってた時だって感じてた。
 もう、私の家にも私の近くにも来ないで。》
 そう伝えて、彼の連絡先も全部消した。


 何故か涙が溢れて、(あぁ、こんなのでも好きだったんだ。)そう思って、枕を握りしめてベッドに叩きつけた。
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