レインの店へようこそ!

泡沫 呉羽

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20話 悪魔の主は?

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 フェルトラの誕生日だと言うのに周りの惨状は大変なものだった。

「……こりゃあ誕生日会は中止だなぁ……来賓を着替えとお詫びを出して返しなさい」

 国王は下の者たちに命を出しつつ指揮をとるので忙しいようだ。

「くそ……こんな悪魔いらねぇよ…。ナーガ、チェンジだ!チェンジ!」
「………こいつ腹黒い!何も言わずに契約を終わらせてるぞ!!」
「おい!!!!俺は契約なんかしてねぇよ」
「わたくしめが結びつけておきましたよ?」
「「………うわぁ……」」

 ガチャリと音がなり悪魔の首にナーガと似たような首輪がついた。
 レインの切れたせいでむき出しとなった白い腕が悪魔の首に伸びている。

「レイン…もう大丈夫なんか?」
「あぁー……。そうだね………暫くはね……最悪な気分に変わりはないけど」
「そ、そうか」

 暗い目をしつつ笑顔で答えたレインに引き攣った顔を見せつつ、フェルトラは返事をした。

「さて…この悪魔どうしよっか。入らないなら処分するけど……契約なんて切り落としてあげる」
「それは酷いじゃないですか!わたくしは有能ですよ!?女になれと言うならなりますし、頭の出来も良い方なので何かと重宝できます!!だから…ね?」
 
 何故かレインではなくフェルトラの足に泣きついてきた悪魔を邪魔だと思いながらどうするかを考えた。

「ほぅ…。んじゃ、俺の王太子の仕事も出来るのかよ?」
「字を似せることなど動作もないですよ。変化も出来ますし…性格はどうにもしませんけどね。あー、大抵のことなら出来ます!顔もいいですし、身だしなみには気をつけてる方ですよ!?ねっ、ねっ?」

(性格さえ目をつぶれば…いいか…)

「チッ……分かった。使ってやるからありがたく思え」

 何となく状況が気に入らないフェルトラは上から目線でぶっきらぼうに言ったのだがこの悪魔を喜ばせてしまい心から嫌そうな顔を作った。

「やはり、わたくしの目に狂いはなかったのですね!ハァハァ。ありがたき幸せ。では荷物の準備して来ますね」

 そう言うと悪魔は張り切り後ろを向いて走りながら転移魔法で消えていった。

「俺の悪魔がナーガで良かったよ。流石にアレは俺の手に負えないからね」
「あ?……今度店に行くときあいつ連れて行ってやるから楽しみにしとけよ」
「おっと……そう来るかぁ…」

 レインはくすりと笑い、フェルトラの肩に寄りかかった。

「あー、どした?」
「いや、疲労だよ。久しぶりすぎてね、悪いんだけど休憩室かどこかに置いておいてくれないかな?」
「しゃーねぇな。今度いい武器仕入れろよ」
「いいよ、迷惑かけたしフェルトラが気に入りそうなのを何個か入れといてあげるよ」

 フェルトラは店までレインを送りナーガに世話を頼んで王宮に帰ったのだった。
 なお、あの悪魔はフェルトラが思ったより有能だったのが嬉しい誤算ではあった。
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