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第三章 アイテム争奪戦
戦いの幕開け
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魔王とレイラが美羽の居場所を突き止めた頃、美羽の兄と拓海と田中と小夜はダンジョンの二十二層にいた。
拓海と田中は各々謝罪を口にした。
「お兄さんすみません。全然戦力にならなくて」
「威勢よく魔王に啖呵切ったのに面目ないです……」
美羽の兄は気にした様子もなくヘラヘラした笑顔で言った。
「しょうがないよ。持ってる武器が違いすぎるんだから。これ対魔王用の武器だし」
二十二層の魔物は中級魔物ばかり。今の拓海と田中は手も足も出なかった。それでも二人はオーガの腕を切りつけたり、狼型の魔物に一撃を食らわしたり必死に魔物に食らいついた。
とどめこそさせないものの、その甲斐あってかレベルは着々と上がっていった。拓海はレベル二十四、田中はレベル十八まで上がり、攻撃力もアップしていた。
「それより、シャーロットちゃんいないね。六十五層の方だったりしてね」
「有り得ますけど、今の拓海君達に六十五層は死刑宣告と同じですよ。ここは安全な方にかけましょう」
そう、ダンジョンに来たのは良いもののアイテムは二十二層と六十五層の二つある。六十五層はきっと上級からS級魔物ばかりに違いない。そのラスボスなんて対魔王用の剣を所持していたとしても、戦闘経験が浅い三人はきっと死ぬ。確実に死ぬ未来しか見えない。
故に少しでも安全な二十二層にシャーロットがいること、ついでにアイテムが相手に渡っていないことを願って、四人はここにいる。
先に進んでいくと、小夜があるものを見つけた。
「あれじゃない? アイテム。如何にもって感じ」
小夜の指差した方には祭壇があった。祭壇には大きな宝箱が。そして、その前にはゴーレムが立っている。
「まだあれがあそこにいるってことは、シャーロットちゃんは来てないってことかな?」
美羽の兄の疑問に田中がRPGの知識を発揮する。
「ダンジョンのラスボスって一回倒しても暫くするとまた出てくる設定が多いんですよ。そうしないと一人の冒険者が倒したらそれで終わりになっちゃいますから」
「なるほど。確かにね。じゃああそこのアイテムが入ってそうな宝箱も中身は既に欲しているアイテムじゃないかもしれないってことか」
「そうなりますね。シャーロットじゃない冒険者が手に入れた可能性もありま……」
「それはないわね」
小夜は食い気味に田中の言葉を否定した。
「なんで言い切れるんだよ」
「こういうのはヒロインが取得するように出来てるのよ。じゃなきゃ乙女ゲームが成立しないわ。私のラノベの知識をフル回転させてもそうよ。ラノベのモブの主人公や主要人物が横取りはあってもね、見ず知らずのただのモブが横取りなんてないわ」
小夜が早口で話すと拓海が感心して言った。
「小夜ちゃんって、よく喋る子だったんだね」
「喋らない子なんていないわよ」
「でもさ、俺たちは見ず知らずのモブじゃないの?」
「そんな訳ないでしょ。私たちはこの世界では異物。そして魔王様に仲間に引き入れられたれっきとした主要人物よ。こちら側の主人公はきっと美羽ね。レイラちゃんがゲーム機から出てくるのを目の当たりにするなんて、主人公の何者でもないわ。だから魔王様の愉快な仲間達はあれをさっさと倒しちゃいなさい」
小夜がビシッとゴーレムを指さすと、ゴーレムの瞳の部分が光った。
「あっちも戦闘態勢に入ったみたいだね。拓海、田中君行くよ」
「「はい!」」
三人が意気込んでゴーレムに斬りかかろうとすれば、背後から可愛らしい女の子の声が聞こえた。
「それは、あたし達が倒すわ。あなた方はあちらに行ってて下さるかしら」
小夜は乙女ゲームをプレイして知っているが、プレイしていない男性陣も瞬時にそれが誰だか分かった。ラベンダーのような紫の髪に瞳、虫も殺せなさそうなその可憐な容姿は正にヒロインそのもの。
そして、その横には顔の良い三人の青年が立っていた。サラサラの銀髪に翠の瞳、黒髪黒眼にメガネ、燃えるように赤い髪に赤い瞳。こちらも皆が攻略対象なのだと理解した。
「カラフルだな」
「田中、俺たち地味だな。お前、髪茶色に戻せよ」
「嫌だよ。美羽は黒髪にメガネが好きなんだから」
「え、マジ? 初耳なんだけど。俺もメガネ買おうかな」
田中と拓海が二人でブツブツと話をしているとシャーロットが口を開いた。
「あなた達、まるで日本人のようね。この世界にはいないだろうけど。とにかく退いて下さる? あれはあたし達の物なのよ」
すると、美羽の兄が前に出て言った。
「こんな可愛い子ちゃんの頼みでもそれは聞けないかな。僕らが先に辿り着いたんだから、先に僕らが倒すよ。順番は守らなきゃ。君たちは僕らの後に倒せば良い」
「なっ、関係ないわ。サイラス、アレックス、ブラッド、何がなんでも先に倒すわよ!」
「シャーロットの我儘なところも可愛いよ。シャーロットの為ならなんだってするよ」
そう言って、銀髪のサイラスがゴーレムに向かって手をかざし詠唱を始めた。すると、サイラスの手から氷の刃が出現し、ゴーレムめがけて一直線に向かって行った。
その刃はゴーレムに直撃し、大きな衝撃音と共に土煙が舞い上がった。
「ガチ……? うわぁ、俺魔法初めて見たよ。あんなん勝てる気しねぇ」
田中が唖然としていると、拓海が冷や汗をかきながらもニヤリと笑って言った。
「じゃあ、田中は棄権ということで。美羽は俺のものだな」
「なっ、そんなこと言ってないだろ。とにかく、とどめを俺たちが刺せば良いんだろ。やってやるよ」
こうして、魔法が使える異世界人と魔法が使えない日本人によるアイテムを争う戦いの火蓋が切られた。
拓海と田中は各々謝罪を口にした。
「お兄さんすみません。全然戦力にならなくて」
「威勢よく魔王に啖呵切ったのに面目ないです……」
美羽の兄は気にした様子もなくヘラヘラした笑顔で言った。
「しょうがないよ。持ってる武器が違いすぎるんだから。これ対魔王用の武器だし」
二十二層の魔物は中級魔物ばかり。今の拓海と田中は手も足も出なかった。それでも二人はオーガの腕を切りつけたり、狼型の魔物に一撃を食らわしたり必死に魔物に食らいついた。
とどめこそさせないものの、その甲斐あってかレベルは着々と上がっていった。拓海はレベル二十四、田中はレベル十八まで上がり、攻撃力もアップしていた。
「それより、シャーロットちゃんいないね。六十五層の方だったりしてね」
「有り得ますけど、今の拓海君達に六十五層は死刑宣告と同じですよ。ここは安全な方にかけましょう」
そう、ダンジョンに来たのは良いもののアイテムは二十二層と六十五層の二つある。六十五層はきっと上級からS級魔物ばかりに違いない。そのラスボスなんて対魔王用の剣を所持していたとしても、戦闘経験が浅い三人はきっと死ぬ。確実に死ぬ未来しか見えない。
故に少しでも安全な二十二層にシャーロットがいること、ついでにアイテムが相手に渡っていないことを願って、四人はここにいる。
先に進んでいくと、小夜があるものを見つけた。
「あれじゃない? アイテム。如何にもって感じ」
小夜の指差した方には祭壇があった。祭壇には大きな宝箱が。そして、その前にはゴーレムが立っている。
「まだあれがあそこにいるってことは、シャーロットちゃんは来てないってことかな?」
美羽の兄の疑問に田中がRPGの知識を発揮する。
「ダンジョンのラスボスって一回倒しても暫くするとまた出てくる設定が多いんですよ。そうしないと一人の冒険者が倒したらそれで終わりになっちゃいますから」
「なるほど。確かにね。じゃああそこのアイテムが入ってそうな宝箱も中身は既に欲しているアイテムじゃないかもしれないってことか」
「そうなりますね。シャーロットじゃない冒険者が手に入れた可能性もありま……」
「それはないわね」
小夜は食い気味に田中の言葉を否定した。
「なんで言い切れるんだよ」
「こういうのはヒロインが取得するように出来てるのよ。じゃなきゃ乙女ゲームが成立しないわ。私のラノベの知識をフル回転させてもそうよ。ラノベのモブの主人公や主要人物が横取りはあってもね、見ず知らずのただのモブが横取りなんてないわ」
小夜が早口で話すと拓海が感心して言った。
「小夜ちゃんって、よく喋る子だったんだね」
「喋らない子なんていないわよ」
「でもさ、俺たちは見ず知らずのモブじゃないの?」
「そんな訳ないでしょ。私たちはこの世界では異物。そして魔王様に仲間に引き入れられたれっきとした主要人物よ。こちら側の主人公はきっと美羽ね。レイラちゃんがゲーム機から出てくるのを目の当たりにするなんて、主人公の何者でもないわ。だから魔王様の愉快な仲間達はあれをさっさと倒しちゃいなさい」
小夜がビシッとゴーレムを指さすと、ゴーレムの瞳の部分が光った。
「あっちも戦闘態勢に入ったみたいだね。拓海、田中君行くよ」
「「はい!」」
三人が意気込んでゴーレムに斬りかかろうとすれば、背後から可愛らしい女の子の声が聞こえた。
「それは、あたし達が倒すわ。あなた方はあちらに行ってて下さるかしら」
小夜は乙女ゲームをプレイして知っているが、プレイしていない男性陣も瞬時にそれが誰だか分かった。ラベンダーのような紫の髪に瞳、虫も殺せなさそうなその可憐な容姿は正にヒロインそのもの。
そして、その横には顔の良い三人の青年が立っていた。サラサラの銀髪に翠の瞳、黒髪黒眼にメガネ、燃えるように赤い髪に赤い瞳。こちらも皆が攻略対象なのだと理解した。
「カラフルだな」
「田中、俺たち地味だな。お前、髪茶色に戻せよ」
「嫌だよ。美羽は黒髪にメガネが好きなんだから」
「え、マジ? 初耳なんだけど。俺もメガネ買おうかな」
田中と拓海が二人でブツブツと話をしているとシャーロットが口を開いた。
「あなた達、まるで日本人のようね。この世界にはいないだろうけど。とにかく退いて下さる? あれはあたし達の物なのよ」
すると、美羽の兄が前に出て言った。
「こんな可愛い子ちゃんの頼みでもそれは聞けないかな。僕らが先に辿り着いたんだから、先に僕らが倒すよ。順番は守らなきゃ。君たちは僕らの後に倒せば良い」
「なっ、関係ないわ。サイラス、アレックス、ブラッド、何がなんでも先に倒すわよ!」
「シャーロットの我儘なところも可愛いよ。シャーロットの為ならなんだってするよ」
そう言って、銀髪のサイラスがゴーレムに向かって手をかざし詠唱を始めた。すると、サイラスの手から氷の刃が出現し、ゴーレムめがけて一直線に向かって行った。
その刃はゴーレムに直撃し、大きな衝撃音と共に土煙が舞い上がった。
「ガチ……? うわぁ、俺魔法初めて見たよ。あんなん勝てる気しねぇ」
田中が唖然としていると、拓海が冷や汗をかきながらもニヤリと笑って言った。
「じゃあ、田中は棄権ということで。美羽は俺のものだな」
「なっ、そんなこと言ってないだろ。とにかく、とどめを俺たちが刺せば良いんだろ。やってやるよ」
こうして、魔法が使える異世界人と魔法が使えない日本人によるアイテムを争う戦いの火蓋が切られた。
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